PHPは比較的難易度が低いと言われており、これからエンジニアを目指す人にとっては取り組みやすい言語です。どんな種類の仕事があるのか、未経験からでもPHPエンジニアになれるのか気になっている人は多いでしょう。
本記事ではPHP言語を活用した仕事の内容や案件、年収などを紹介します。必要なスキルや仕事の選び方なども解説するので、ぜひチェックしてみてください。
PHPエンジニアとは
PHPエンジニアとは、PHPを活用してプログラムを作成する技術者です。WebサイトやWebアプリケーションのサーバーサイド開発に関わります。サーバーサイドとは、Webページなどでユーザーとやり取りするフロントエンド部分からの指示を受けて、データの転送などの処理を行う部分です。
PHPは汎用性が高く、幅広い分野で活用されています。初心者でも比較的分かりやすい言語であることから、世界中に普及し日本でも人気がある言語の1つです。そのため、PHPを扱えるエンジニアの求人が多いのも特徴です。
PHPエンジニアの需要
ここでは、PHPエンジニアの需要について解説します。以下で詳しくみていきましょう。
Web開発における需要
PHPエンジニアはWeb開発において需要があります。それは、PHPがHTML文書に直接記述ができる仕様だからです。
汎用性が高く、とりわけWebサイトの静的な部分に動的な部分を加えたいときに便利な言語です。そのため、Webサイトの新規開発だけでなく改善や修正、また機能を追加する際にもよく用いられます。
WordPressの需要
Webサイトの大半は、WordPressというソフトウェアを使って作成されています。WordPressはPHPによって開発されました。
インターネットの登場以来、Webサイトは今なお増加し続けています。今後も需要がなくなるとは考えにくいでしょう。WordPressに変わる新しいソフトウェアが現れない限りは、PHPが廃れる可能性は低いと考えられます。
保守・追加開発案件の需要
現在運営されているWebサイトを保守するために、PHPエンジニアが不可欠です。また、現行のWebサイトに追加開発する際にも、PHPが使われるでしょう。わざわざ他の言語に置き換える必要性がないためです。PHPを扱う技術は安定して需要があるといえます。
PHPエンジニアの仕事内容
PHPを使ってどのようなことができるのか、具体的な仕事内容を説明していきます。
Webアプリケーション開発
PHPエンジニアの仕事の一つに、Webアプリケーション開発があります。PHPエンジニアのメインワークといえるでしょう。企業のWebサイトやメディア、ポータルサイト、SNS、ECサイトなど扱う媒体は多岐にわたります。
ECサイト開発では、受注や在庫管理、決済機能、閲覧・購入した商品との関連を表示するマーケティング関連機能などを実装します。ECサイトに限っても旅行・宿泊施設の予約、チケットの申し込みに用いられるものなどを含め豊富な種類があります。これらの便利なサービスが実装されているサイトの多くは、PHPで開発されたものです。
業務システム開発
PHPエンジニアは、企業の中で使用する業務システムも開発します。たとえば、請求書や見積書などの定型書類、在庫管理や経理などの業務効率化を図るシステムを構築します。
製造業や情報通信業、金融業などさまざまな分野の財務・経理関連、経営に関するシステムに関わるのが特徴です。クライアント企業の要望に応じて、設計から保守・運用まですべて担うケースが多いとされます。
ゲーム開発
PHPは個人向け、企業向けゲームの開発にも使用されています。PHPエンジニアはオンラインゲームやパソコンゲーム、ソーシャルゲームなどのサーバーサイドの処理に携わるでしょう。
PHPの実装だけでなく、デザインや3D技術、音声などに関わるため多様なスキルを習得できるのがポイントです。近年、ゲーム開発においてエンジニアの需要が高まっているため、PHPを習得して就職するのも良いでしょう。
PHPを仕事で使うメリット
続いて、PHPを仕事で使うメリットを紹介します。
記述の自由度が高い
文法の自由度が高いのがPHPのメリットです。シンプルな構文でコマンドが実行でき、同じ処理でもいろいろな書き方ができます。厳格な規制がないことから、初心者が学びやすいと言われています。
環境構築をせずにすぐ実行できる
プログラミングをする際は、通常は環境のセットアップから始めます。しかし、PHPはサーバーにファイルをアップロードするだけで、特別なツールがなくてもすぐにプログラムを書けるのがメリットです。
データベースとの連携が容易
PHPは、多様なデータベースと相性が良いです。HTMLの中にコードを埋め込んでWebサイトに動きや変化をつけ、Webサイトを簡単に作ることができます。Webサイトだけでなく、ECサイトやSNSなど、さまざまなサービスに用いられるのが特徴です。
PHPエンジニアに必要なスキル
PHPエンジニア案件を獲得するためには、スキルや知識が必要です。ここでは、身につけておきたい専門的なスキルを紹介します。少しずつ習得していけば、キャリアアップや報酬アップにつながるでしょう。
PHPのプログラミングスキル
当然のことですが、まずはPHPのプログラミングスキルを習得しましょう。見やすいコードが書けて、要件を伝えられた時点でそのままコーディングができるレベルに達するのが望ましいでしょう。疑問点を自分で調べて解決できるリサーチ能力も必要です。
OSやサーバー、データベースの知識
PHPで書いたプログラムは、サーバーサイドで実行されます。プログラミング以外にOSやデータベース、「LAMP」などの知識が必要です。
「LAMP」とは、OSのLinux、サイト公開に必要なWebサーバーであるApache HTTP Server、情報を蓄積しておくデータベースのMySQL、そしてスクリプト言語であるPHP、Perl、Pythonの頭文字を取った造語です。
これらすべてがサーバー環境の構築に必要です。一つひとつがどのような役割をしているのか、どのような処理を行うのか、概念も含めて理解しておきましょう。
Webサービスやアプリケーションの開発経験・スキル
PHPエンジニアは開発の現場で実際に経験を重ねていくことで、キャリアアップになります。そのため、WebサイトやWebサービスの開発経験はもちろん、多彩なジャンルにチャレンジしていく前向きな姿勢も大切です。
サイト構築だけでなく、ECサイトやゲーム、業務システムのいずれかでもスキルがあれば、より高単価の案件に携わることができる可能性があります。スキルを磨きながら、自分自身の市場価値を上げていく努力をしていきましょう。
コミュニケーションスキル
エンジニアは、パソコンの前でプログラミングだけをするわけではありません。クライアントとの打ち合わせ、開発チームとの話し合いなどに参加することもあります。できるだけ専門用語を使わずに、分かりやすく伝えられるコミュニケーション力が必要です。
業務で使用するツールの取り扱いスキル
業務上で使うITツールを使いこなすスキルも必要です。たとえば、以下のようなツールが挙げられます。
- Slack｜プロジェクトチームのコミュニケーションツール
- GitHub｜バージョン管理システム
- JIRA｜課題やプロジェクト管理システム
- Confluence｜社内情報の共有システム
費用や納期など、案件ごとに管理が必要な項目は異なります。それらに応じて新しいツールが追加される可能性もあるでしょう。
オブジェクト指向でプログラムを書くスキル
オブジェクト指向のプログラムを書くスキルも必要になります。オブジェクト指向とは、システム構築のためにデータと処理手順をオブジェクトとして設計していく考え方です。オブジェクト指向でプログラムを記述すれば、コードが分かりやすくシンプルになります。
上達のためには記述を繰り返し、ときにはチームのメンバーにコードのレビューを頼むと良いでしょう。
PHPを扱う仕事先の選び方
PHPを正しく扱えるようになったら、今度は仕事を探します。PHPエンジニアとしての仕事先は、主に「自社開発企業」「他社常駐企業」の2つです。
「自社開発企業」は、企画・立案、設計、構築、運用まですべてを自社で手がける会社です。エンジニアは役割を分担しながら1つの工程を担当するケースが多くなります。
「他社常駐企業」では派遣社員が多く、自社開発企業と比較すると待遇は低くなりがち。未経験でも採用される可能性がありますが、環境や案件は常駐先企業ごとに異なります。自分のスキルや得意分野とマッチする職場ばかりではない場合もあるでしょう。
PHPエンジニアの平均年収
PHPエンジニアの年収がどれくらいか見ていきましょう。
Freelance hubに掲載されているPHP求人・案件から算出した平均月額単価は、2023年5月1日時点で69万円、最高単価は200万円、最低単価は28万円でした。
平均単価を単純計算で12か月分としてみると、年収は828万円ということになります。最高単価での年収は2,400万円、最低単価での年収は336万円となります。
ただし、これはあくまでもFreelance hubに掲載されている案件から算出しているため、全国のPHPエンジニアが受け取る単価・年収の平均とは異なります。
経験年数やスキル、案件の内容などでも年収は変わるでしょう。たとえば、PHP以外にも扱える言語がある、開発の上流工程に携わった経験があるなどの場合は、単価が高くなる可能性があります。
PHPエンジニアとして年収をアップさせる方法
ここでは、PHPエンジニアとしてより高い報酬を得るための方法を解説します。経験年数や豊富な知識が収入アップにつながるのは、どの職種でも同じです。以下では3つのポイントを挙げます。
開発経験を積む
開発経験を積むことは、収入アップに役立ちます。それは、経験を重ねるほど複雑かつ長いコードの記述が可能になるためです。
要件定義や設計などより上流の工程を経験すると、プロジェクト全体を把握できるようになります。難易度の高い案件や規模の大きい案件を手がけられるので、報酬も高くなるのがポイントです。
顧客のニーズに対して細やかに応じられるスキルを身につけるには、経験を積み重ねる他ありません。初心者であれば特に、ジャンルを問わずより多くの開発プロジェクトに参加することが重要です。
複数のフレームワークに対応する
複数のフレームワークに対応できることも、年収アップにつながります。特に、大規模なプロジェクトに参加を望むのであれば重要なスキルになるでしょう。主なPHPフレームワークは以下のとおりです。
幅広く対応できるようにしておけば、受けられる案件の選択肢が広がるでしょう。転職を希望する際にも、自身の価値を高めるポイントとしてアピールできます。
他の業界の知識を増やす
他の業界の知識を増やすことも、年収をアップさせる方法の一つです。クライアントとして接する相手は他業界の企業であり、業界ごとに異なる多くの専門用語があります。円滑なコミュニケーションのためには、相手業界への理解を深める必要があるでしょう。
特に、仕様書や設計書を作成する際は知識がなければ対応が難しいです。幅広い業界に対応できるだけの知識があれば、その分重宝されることになります。
未経験からPHPエンジニアになるには
PHPは汎用性が高く、多様な現場で需要があります。難易度が低く比較的覚えやすい言語なので、未経験からエンジニアを目指すことも可能でしょう。
未経験からエンジニアになるためには、経験が不足する分、知識とスキルを身につけることが最優先です。具体的に何をすれば良いか説明していきます。
学習方法を決める
まずはどのようにPHPを習得するか考えます。本や動画、無料の学習オンライン、有料のスクール、またはオンラインスクールなどさまざまな方法がありますので、自分に合った学習方法を選びましょう。
独学は費用がかかりませんが、理解に時間がかかる、1人で学ばなければならないため挫折するといった可能性があります。スクールは費用がかかりますが、講師や学習仲間とのコミュニケーション、相談サポート、就職サポートなどを受けられるのがメリットです。
実際に簡単なアプリケーションを作成する
ある程度言語を学習し、理解できるようになったら、実際に簡単なアプリケーションを作ってみましょう。データベースやHTML、HTTPリクエストを処理する設計の基本とやり方、概念など、試行錯誤しながら実践することで理解が深まっていきます。
ポートフォリオを作成する
仕事では即戦力が求められる傾向にあるので、スキルを証明するためのポートフォリオ（制作物をまとめた資料）を作成しましょう。
ポートフォリオに載せるアプリケーションは、ノウハウに沿って作るのではなく、1から自分で組み立てて作成します。そうすれば企業やクライアントと商談を行うとき、プログラミングの技術力や開発力をアピールできるでしょう。
未経験可の案件に応募してみる
ポートフォリオを作成したら、未経験可の案件に応募してみましょう。エンジニア求人の多くは経験者向けですが、PHP案件は規模・内容とも幅広く、未経験者を受け入れる可能性があります。
近年はIT人材不足を理由に、人材育成に力を入れている企業も多いようです。応募できるのであれば、ポートフォリオを持参し、継続して学んでいるという積極的な姿勢と熱意をアピールしてください。
他の言語も学習する
関連する他の言語も学んでおくと重宝される可能性があります。PHPは他言語を組み合わせることで多種多様な機能を実現するため、単体での習得はあまり実践的ではありません。JavaScript、SQLなどのほか、フレームワークなどを使えると有利になります。
資格を取得する
言語を学習してプログラミングをある程度理解したら、それを証明する資格を取得すると実力が評価され仕事を得られる可能性が高くなります。もちろん、現在エンジニアの人もキャリアアップとして資格を取ることは有効です。
役立つ資格
PHPエンジニア向けの資格試験としては、PHP技術者認定機構のPHP技術者認定試験が挙げられるでしょう。ここでは、4つのレベルを紹介します。
PHP7技術者認定初級試験 ITSS レベル1
PHP技術の初心者向けの内容となっており、実務経験がない人でも受験可能です。PHPの特徴や操作、関数、データベースなど基本的な知識を評価します。
PHP5技術者認定初級試験 ITSS レベル1
こちらもPHP7と同様のレベルで基礎知識を評価しますが、PHP5.3を主な対象バージョンとしています。PHP5系は公式サポートを終了しているため新規開発はありませんが、既存システムの改修などでは知識を必要とするケースもあるでしょう。
PHP5技術者認定上級・準上級試験 ITSS レベル2/3
PHP上級者が対象になり、言語の仕様、実用的なプログラミングテクニックの知識が問われるのが特徴です。上級・準上級は試験内容は同じですが、それぞれ合格ラインが設けられています。上級は正解率7割以上、準上級は5割以上7割未満です。
PHP5技術者認定ウィザード
PHP5技術者認定上級試験で90％以上を取得した人が対象となっています。500文字以上の文書を提出し、承認された場合に認定されます。
PHPエンジニアのキャリアパス
PHPエンジニアとしてのキャリアを歩み始めると、もっと活躍したい、報酬を得たいと考えるようになる人もいるでしょう。向上心もエンジニアが持っておきたい要素です。ここでは、PHPエンジニアのキャリアパスを紹介します。
SE（システムエンジニア）
考えられるキャリアパスの一つはシステムエンジニアです。システムエンジニアは、プログラムの設計・構築・運用など一連の流れの中で、「要件の定義」「基本設計」「仕様書の作成」「進捗管理」など上流工程を担当します。
まずはテストや保守業務などからスタートして、日々学びながらスキルを磨いていきましょう。徐々に仕事で信頼を積んでいき、上流工程の業務を増やしていくことでSEに近づけます。
PM（プロジェクトマネージャー）／PL（プロジェクトリーダー）
プロジェクトマネージャー、またはプロジェクトリーダーなどの選択肢もあります。
プロジェクトマネージャーは、プロジェクト全体を管理する責任者です。プログラム作成に必要な人員の確保、品質や予算、納期などを考慮しながら最終的なチェックなどを行います。
マネジメントスキルはもちろん、エンジニア、顧客、ユーザーなどと話しながらプロジェクトを進めるため、コミュニケーションスキルも求められます。責任は重大ですが、やりがいは大きいでしょう。
他のエンジニア職を目指す
PHPエンジニアの技術や知識を活かして、他言語を扱うエンジニアを目指すこともできます。経験が浅いうちは、SEなどの上の指示に従い、コーディングやテスト、修正などの作業をコツコツこなして成果を出しましょう。
そうした積み重ねの中で他言語を学び、上流工程などへの知見を広げていくことで新たなキャリアが開ける可能性があります。スキルを磨けば、自分の興味関心、業種、働き方などの選択の幅を広げることもできそうです。
まとめ
PHPは初心者でも習得しやすいので、これからプログラミングを始める人にもおすすめの言語です。ただし、IT業界は変化が早いので、PHP以外の言語やツールも積極的に身につけましょう。キャリアアップ、報酬アップなど大きな可能性につながっていきます。
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※ 4月19日(Fri)更新
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