社会を支えるうえで、あらゆるシーンにITが溶け込む今、その開発や構築、管理を担うさまざまなジャンルのエンジニアが強く求められています。ITエンジニアの業界でも、実に多くの職種タイプがあり、それぞれに重要な役割を担って活躍しています。今回はその中でも「インフラエンジニア」と呼ばれる職種について、詳しくご紹介しましょう。
「求人情報などで目にしたことはあるけれど、どんな職業なのだろう?」、「関心はあるけれど、どうやったらなれる?」、「できるなら転職したいけれど自分に向いているかどうか分からない」――そうした方はぜひ、ここでの情報を参考にしてみてください。
エンジニアが技術者を指すことはご存知の方も多いと思われますが、その前についている「インフラ」が、まずこの職業の特徴を知るポイントです。では、インフラとは何か。もともとはインフラストラクチャー(infrastructure)という英単語で、その略語として浸透したのがインフラという言葉であり、インフラストラクチャーは基盤や土台、下部構造といった意味を持っています。
IT領域に限らず、一般的にインフラという時は、私たちの日常生活における基盤を支えるもの全般を指し、道路や鉄道、港湾、電気、ガス、上下水道など、不可欠といえる主に公共的・公益的な設備や施設、構造物をいいます。当たり前にあるもののようですが、これなしにはどんな行動も成立しません。
ITインフラも同様です。インターネット環境が普及し、私たちは時間や場所を問わず、簡単に情報をやりとりしたり、サービスを使って作業をしたり、買い物をする、娯楽を楽しむといったことができるようになりました。しかしその仕組みが成立しているのは、データを送受信する基盤や設備があるからこそです。
あまりに日常化して意識することがなくなっているかもしれませんが、それらが動作し、ネット上でデータをやりとりして初めて、サイトの閲覧ができたり、メールやSNS、各種アプリが利用できたりしているのです。この欠かせない基盤部分を、ITインフラといいます。
ITインフラは2種類に大別でき、1つはサーバーやネットワーク、PCなど各種通信デバイス類といったハードウェア、もう1つは、そのハードウェア上で動くOSやデータベースサーバーなどのミドルウェアが該当するソフトウェアです。いずれも道路や電気のように、ベースとなって上部の活動やサービスの実現を支えています。
これで推察されるように、インフラエンジニアはこうしたITインフラにかかるエンジニアであり、その基盤たる部分の設計構築、運用保守などを担っています。実際に利用されるサービスやシステムの規模、特徴などを把握し、それが円滑に機能するような基盤を適切に作り上げ、必要なメンテナンスも行うなど、いわば縁の下の力持ちとなって支えていくのがインフラエンジニアなのです。
IT、コンピュータ領域のエンジニアといえば、システムエンジニア(SE)という職業名が最もイメージしやすく、認知されているのではないでしょうか。実は、インフラエンジニアもシステムエンジニア(開発エンジニア)の一部に含まれる職種です。
システムエンジニアがコンピュータ関連の各種システムを、クライアントからの依頼に基づいて設計・開発したり、その運用を行ったりする人々の大きな総称であるのに対し、インフラエンジニアはその中でも、ITインフラにあたる基盤部分を自らの特化した対象領域とする人々、この分野の業務におけるプロフェッショナルなのです。
またエンジニアとよく似た概念で混同されやすい職業の例として、プログラマーがありますが、プログラマーはシステムエンジニアの設計に沿ってプログラミングを行うことを仕事にする人々です。クライアントから最終的に達成したい要望や要求を聞き出し、全体の設計・開発を担うのがエンジニア、そこで描かれた設計図となる指示書を基に、コードを書いて実際の製造を担当するのがプログラマーと理解しておけば良いでしょう。
インフラエンジニアは、クライアントの実現したいサービスやオフィス環境などを構築する上で、まず必要になるサーバー、ネットワークなど基盤となるITインフラの企画、設計、構築、運用保守までを担います。24時間365日、安定して稼働するサービスや環境の基礎を支え続ける重要な存在です。一般からはなかなか見えにくいところにあっても、彼らの働きがなければ、どんなITサービスもICTも、動作するものとして成立しません。
大きくはシステムエンジニアに含まれる職種であることを先に紹介しましたが、インフラエンジニアも、さらにいくつかのタイプに細分化して呼ばれることがあります。「サーバーエンジニア」、「ネットワークエンジニア」、「データベースエンジニア」の3種類です。
ただし、いずれもつながってひとつの重要な基盤となるものであるため、全体を把握できる総合的なスキルや知見・ノウハウを有した人をインフラエンジニアといい、仕事内容によりますが、この分類タイプは言葉として存在しているものの、必ずしも明確に分担されているわけではありません。そうした実情があることも、あらかじめ知っておきましょう。
その上で、それぞれのタイプについて簡単に説明します。サーバーエンジニアはその名称通り、導入するサーバーの仕様設計や配置、設定を行うインフラエンジニアです。メールを送受信するメールサーバー、情報ファイルを保管するファイルサーバー、データベースサーバー、サイト表示に必要なWebサーバーなど、役割に応じたさまざまなサーバーがあり、それら全般を対象として仕事を行います。
ネットワークエンジニアは、企業内のネットワーク設計と構築などを主な業務とします。プロフェッショナルとして最適なルーターやスイッチといったネットワーク機器の選定からネットワークの敷設、運用開始後のメンテナンスも担います。ルーターやファイアウォール、クライアントとサーバーの間に設けるロードバランサーなどを扱うのもネットワークエンジニアです。
データベースエンジニアは、やはりその名の通り、データベースの構築や運用、管理を行うインフラエンジニアになります。膨大なデータを上手く管理するための開発、設計から活用までをサポートします。
インフラエンジニアがどのような職種で、どういった種類の仕事を行っているのか、その概要をみてきましたが、ここではさらに詳しく実際の業務内容を順に解説します。
インフラエンジニアの業務は、大きく分けて設計、構築、運用の3段階とみることができますが、仕事を進めていく流れからより細分化すると、5つの業務内容に分類されるものとなります。
第1は「要件定義」です。クライアントが求めるITインフラを、ニーズ通りに構築していくため、必要な機能・性能は何か、どう作成・実装していくべきか、全体像を把握し、具体的プランとして要件に落とし込んでいく作業になります。
ここでのクライアントの意思疎通が不十分であったり、しっかりとした完成イメージが的確に共有できていなかったりすると、不適切な基盤を構築してしまい、その後の活動全般を台無しにしてしまう可能性が大いに高まるため、そうした失敗が引き起こされることのないよう、インフラエンジニアはクライアントとの意見交換を綿密に繰り返し、丁寧に作業を進めなければなりません。
要件定義ができたら、次は「設計」に取りかかります。求められるスペックと予算など、要件定義でのヒアリングから導かれる条件の中で、どのような機器を用いるのか、どういった構成、規模、設定値にするのが最適か、詳細を決定し、設計書を作成していきます。
稼働後に想定される通信量やユーザー数などを踏まえ、サーバーランクやネットワークの経路はどうするのか判断を下していくのはもちろん、現場がどういったルールで実際に運用していくのか、起こりうるトラブルとしてどういったものが考えられるか、実際にそうしたトラブルが発生した場合にはどう対処すれば良いか、対策・準備として何が必要かなど、あらゆるシーンを想定した計画を立てることが求められます。
後のスケジュールなども、この段階で具体的に決めておきます。完成形の設計書では、専門知識の有無にかかわらず、誰が見ても明確で分かりやすい状態を目指し、過不足なく必要情報を端的にまとめることが重要です。
続いて設計書を基に、「構築」作業を行います。必要機器の搬入、組み立て・設置はもちろん、配線や接続設定など、やるべきことは多くあります。サーバーではクラウドベースか物理的サーバーかで仕事が大きく変わりますが、物理的なものを用意する場合、組み立てからさまざまな必要機能のインストール、ネットワークにつなぐための配線接続をひとつずつ行っていかねばなりません。
こうしたハードウェアとミドルウェアの設定を実際に行うのが構築作業になります。私たちもPCやスマートフォンを新たに購入した際など、ケーブルをつないでネットワーク接続の設定を行ったり、ソフトウェアやアプリのインストールを行ったり、いわゆるコンピュータの初期設定作業を行いますね。この作業工程を、より専門的で大きな規模としたものが、このインフラ構築業務にあたるといえるでしょう。
基本的なプラットフォームとして構築ができたら、正常に要件通りの動作をするか「テスト」チェックを行う必要があります。テストする動作や負荷を変更しながら、想定される動きにきちんと対応するインフラが構築できているか、入念に確認し、必要があれば微調整・修正を施します。
負荷に強く、安定して整備のしやすいインフラとすることが重要で、長期使用に耐えられる柔軟性も備えていることが理想です。とくに膨大なデータを扱う場合のインフラ構築では、仮想化技術面が優れていると力を発揮しやすく、頼りになる強度の高いインフラとできるでしょう。
必要とされるインフラの構築が完了しても、これでインフラエンジニアの仕事が終わるわけではありません。それらが正常に機能する状態を、継続的に保っていく「運用・保守・管理」業務という重要な活動が残っています。
発電所が作られ、電線で各家庭に引き込む仕組みが完成しても、ある日突然停電した、電気が使えなくなったというのでは、たちまち困ってしまいます。かたちとしての仕組みはあるのだから、と原因の究明や復旧作業を進めてももらえず、放置されたのではたまったものではありません。
同様にITインフラでも、安定的に正常な状態で動作を続けているか、常に監視し、定期的に問題のチェックを行っていくことが必要であり、システムに何らかの不具合が生じた場合には、早急に原因を突き止めて対処する、障害対応が求められます。
ハードウェアの故障や人為的ミス、想定外のアクセス集中などで生じるトラブルへの対応のほか、設計時に予定されていた稼働容量と実際の使用容量に大きな差が生じた場合にその容量を適切な規模へ増減させるキャパシティ管理、インフラ以外の箇所が原因である障害について、該当部分を切り分けるトラブルシューティングなどを行うのもインフラエンジニアです。
定期的なメンテナンスで、変化する上部活動にも耐えられる環境、クライアントやユーザーがストレスなく快適に使える状態を長期間、高次に維持していくことのほか、トラブル発生時にはどれだけ短時間で復旧させられるか、問題発生による被害をいかに最小化できるかが、インフラエンジニアとして大いに手腕を問われるところとなります。
インフラエンジニアの業務内容をみてきたところで、実際にこの職種に就いた場合、どんなメリットがあり、またデメリットがあるのか、実情をご紹介しましょう。
インフラエンジニアの仕事は、およそ個人が接触する機会がないような、企業・組織における大規模な環境の構築や運用が対象になることが多く、比較的初期からスケールの大きな仕事に携わることができるというメリットがあります。サービスとしては身近ながら、裏側に迫れるチャンスなど一般にはほぼない、自治体や大企業のビッグプロジェクトに組み込まれることもあり、そうした環境で働けることは、他の職種に比べても稀な特徴で、魅力といえるポイントになります。
また、そうしたスケールの大きな世界で、縁の下の力持ちとなれることは、大きなやりがいを生むものとなりますし、社会貢献度としても非常に高い実感を得られるでしょう。ITインフラは世界中の社会、世界中の人々が必要不可欠としているものであり、それを生み出し、支えるインフラエンジニアは、強く求められている存在なのです。
常に強く求められるということは、仕事が途絶えることがないというメリット・魅力にもつながります。今やインターネットは使えて当たり前、ITインフラのない暮らしはどんなシーンであろうと想像すらしづらい時代となり、これからもその必要度は高まりこそすれ、なくなる可能性はゼロに近いでしょう。そうしたまさに不可欠のインフラを構築、整備する仕事ですから、ほぼ永久的にこの仕事がなくなることはありません。
豊富な専門知識と経験が求められ、絶対に必要な人材としてどこからも求められますから、たとえ所属する会社が破綻しても、すぐに転職先を見つけたり、フリーランスで活動したりと、即戦力で働け、仕事を続けやすいメリットがあります。
IT系の資格では、専門性の高さゆえ、必須の研修受講料だけで数十万円がかかるなど、取得にかかる費用が非常に高く、個人では手が届きにくいものも少なくありません。インフラエンジニアの領域にかかる資格もその傾向がありますが、業務に必要なものとして、そうした費用は会社側で負担してもらえるケースが一般的になっており、この権利を得られることがメリットになっている面もあります。
実際にそうした資格を取得できれば、他のITエンジニアとの差別化もしやすくなり、現場でしか得られないスキルやノウハウの蓄積と組み合わさった結果、代替の効かない自分だけの価値として評価してもらいやすくなります。評価の高さ、必要性の高さは、後述する報酬面の充実にもつながっています。業界内でも高収入を狙いやすい職種であることは、インフラエンジニアとして働くメリットのひとつです。
魅力の多いインフラエンジニアですが、デメリットがないわけではありません。まず第1に、時間を問わない障害対応が必要になることが挙げられます。担当するインフラシステムに問題が生じた場合、個人都合にかかわらず24時間対応を迫られるケースがしばしばです。いったんトラブルが発生すると、迅速な対処はもちろん、その原因究明や再発防止策の策定・実行など、やるべき業務が山積し、容易に中断もできない苦労があります。それだけ重要で、多くの人々が頼るインフラに直接関わっているからこそのことですが、その仕事の大変さ、責任の重さは、やりがいに比例して大きく、担う者にとって時にデメリットとなるでしょう。
障害対応以外に、設定の変更やメンテナンスを行うタイミングとしても、なるべくユーザーに迷惑がかからない時を選ぶものとなるため、深夜作業や休日出勤が多くなりがちであることも覚悟しておかねばなりません。
1つの現場に対する担当が長期化しやすい点も、人によってはデメリットになる可能性があります。インフラエンジニア以外のITエンジニアの場合、その多くがプロジェクトの開発が終わり、クライアントに納品できれば、基本的にそこで業務完了、担当契約が終了となります。
しかしインフラエンジニアの場合、構築から運用、その後の長期にわたるメンテナンスまで一貫して携わるものとなり、それが組織の土台にあたるところですから、丸ごと新規になり関係が終了するということがあまりなく、1つの現場を数年単位で担当するといったケースが珍しくありません。同様の環境で似た作業を繰り返すことが求められる場合も少なくなく、それを“安定”ととらえられる方なら問題ありませんが、関係が長期化しやすく単調作業になり得ることが、変化に乏しく、モチベーション低下につながってしまうという方には、デメリットとなるでしょう。
インフラエンジニアの仕事における、他とは異なった特徴が徐々に浮かび上がってきたところで、続いてどんな人がインフラエンジニアに向いているのか、考えてみましょう。
インフラエンジニアとして活躍する上で最も重要なのは、最新のコンピュータ関連知識を常に貪欲に、積極的に吸収していける意欲です。新たに現場で学習を重ねていくことで十分に成長が望める職種であるため、未経験でも採用する企業は多くありますが、そもそもITへの関心が低い、変化の激しい業界で能動的に学び続けるだけの興味がない人はとても続けられません。
現段階で際立った技術や知識がなくとも、コンピュータが好き、最新のICTに強い関心がある、そうした人は情熱をもって取り組むことで、優れたインフラエンジニアとしての成長が十分に期待できるでしょう。実際にさまざまな機器の配線や設置を行っていく職種でもありますから、機械いじりが好きな人もインフラエンジニアに向いています。
上部サービスを開発するエンジニアとして表立った活躍をするタイプとは異なり、縁の下の力持ちとして働くのがインフラエンジニアの特徴です。そのため、目立たない仕事でも社会貢献度の高い裏方仕事に強いやりがいを感じられる人、陰の実力者として力を発揮することに誇りを持てる人は、インフラエンジニア向きといえるでしょう。広く注目される存在ではありませんが、全てに影響する基盤を担うだけに、その影響力は非常に大きなものがあります。
クライアントとのやりとりにおいては、高いコミュニケーションスキルが求められますが、実際の作業は他のシステムエンジニア系職種に比べても、チームで動くことが少なく、個人で動くことが多いのがインフラエンジニアです。ですから独立性が高く、組織のスケジュールに縛られるより自分なりの働き方を構築したい人、1人で作業に集中するようなワークスタイルを好む人に向いています。
考え方の面では、論理的な思考が得意な人ほどインフラエンジニアに向いているでしょう。要望を聞き取り、そこから納期や予算といった条件を踏まえて必要な機器を揃え、効率良く構築作業を進める、運用テストを実行し、予見される事態に備えた策をとって最善の環境を作り出す、こうした全体を見据えた計画を立て、着実に実行していく上で、論理的思考力は欠かせません。
基盤を扱うゆえにトラブルが発生すると、それによって及ぶ影響が多大になりますから、常に注意深い人、さまざまなシーンを想定して備えができる、ある意味では心配性な人もインフラエンジニア向きです。多角的なテストの実行や、トラブル発生時に備えた二の手、三の手をきちんとあらかじめ準備しておけるインフラエンジニアは、とくに有能な人材となるでしょう。
向き不向きとも関わってくるところですが、インフラエンジニアとして実際に働く場合、具体的にはどんなスキルが求められるのでしょうか。
まず技術面に関し、ネットワークやサーバーの領域を中心とした、IT関連の幅広い知識とスキルが必要になります。クライアントの要望や条件のもと、想定されるサーバーへの負荷を見積もったり、それに対応する機器を準備したり、万全のセキュリティ対策を講じながら導入を進める、接続作業や設定を行うなど、深い機器理解に基づいたスキルが欠かせません。
サーバーOSでは汎用性の高いLinux系が多くみられ、ディストリビューションでは国内の場合CentOS、海外の場合ubuntuが多く使われています。Linuxへの慣れはこうした観点から重要でしょう。ネットワークの構築では、ネットワーク機器はもちろん、ファイアウォールやロードバランサーといった機器を扱いますから、これらに精通する知識が求められます。
セキュリティの脅威は年々高まっており、これらへの対策はネットワーク側、サーバー側のいずれにおいても必要です。攻撃のトレンド性、対策にかかる最新の知識と対応スキルで基盤を守らねばなりません。
実際にコーディングを行うのはプログラマーですが、プログラミング言語のスキルも必要です。JavaやC++、C#、PHP、Ruby、Pearl、Pythonなど、広く使用されている言語の基礎はしっかり身につけておく必要があるでしょう。このほか、Apacheなどのミドルウェア知識もしばしば求められます。
近年はクラウド利用が広がっているため、クラウドコンピューティングや仮想化技術の知識と周辺スキルも大いに必要とされます。ITインフラのクラウド移行ではAWSが多くなっていますから、AWSを中心とした知識が鍵になるでしょう。ネットワーク、ストレージ、サーバーなど、時代によって変化していくニーズにも対応しながら、知識を吸収し、スキルを身につけておくことが重要です。
こうした技術面の知識やスキルが、インフラエンジニアにとって不可欠のものであり、これらがなくては仕事にならないのはもちろんですが、現場でそれを発揮する、実際に行動する上では、ヒューマンスキルもきわめて重要になります。
要件定義を行うにあたり、相手がどんなニーズを持っているのか、適切に引き出し、間違いなくその内容を反映させることができなければ、認められる仕事をなすことはできません。多くの場合、クライアントに十分な専門知識があるわけではありませんから、その前提でも要求を的確に聞き取ることができるコミュニケーションスキルの高さが必要です。規模の大きなプロジェクトを担当する場合、とくに横のつながりも重要となり、その担当間でのコミュニケーションも円滑に行えなければなりません。
クライアントとのやりとりという面では、納期や予算など全体を見通し、相手の意向とすり合わせて最適なプランを提示する提案スキルも高度に求められます。分かりやすくプレゼンテーションが行えるスキルとともに、備わっていることが理想です。
インフラエンジニアとして成長するには、全体の進捗状況をきちんと管理できるスキル、マネジメントスキルも重要になります。設計や構築にかかる業務の実施時を中心に、計画性をもってまとめられる力、調整力や統率力が必要です。
ITインフラの運用において、情報セキュリティマネジメントや個人情報保護の重要性は年々高まっており、これらにかかる法令知識も不可欠となりました。また最新技術を常に吸収していく上で、英語の技術書に触れるシーンが多くなりますから、少なくともIT領域の英語が無理なく読解できるスキルも身につけておきましょう。
インフラエンジニアを目指す上で役立つ資格をいくつかご紹介します。
国家資格では、経済産業省のIPAが認定するネットワークスペシャリスト試があります。ネットワークにかかる固有の技術を活用し、最適な情報システム基盤の企画、要件定義、開発、運用、保守で中心的な役割を果たすとともに、専門家としてこれら分野への技術支援を行う人を対象とする試験として、コンピュータネットワークの技術的専門性を有することを認定するものです。
インフラエンジニア、中でもネットワークエンジニアが対象で、活動分野における幅広い知識とスキルが問われます。VPNやSDN、VoIP、IPv6、VXLAN、WAN高速化装置、IPsecなどの知識と実践能力も求められます。基本情報技術者試験や応用技術者試験といった、これよりは難易度の低い専門試験に合格済み、または合格できる実力のある人が受験するケースが多く、それでも例年の合格率が10%台にとどまっており、すでにネットワークエンジニアを本職として活躍している人でも、合格するのは至難の業ともいわれています。
複数回のチャレンジを経て、合格となる人が多い、ハードルレベルも高めの資格試験ですが、取得できればまさにネットワーク分野のスペシャリストとして、インフラエンジニアの仕事における評価と信頼度が大いに高まることは間違いありません。
もう1つの国家資格では、同じくIPA認定のものにシステムアーキテクト試験があります。情報システムや組み込みシステムの開発に必要な要件を定義し、それを実現するための全体を設計、システムにかかる開発を主導する人の能力とスキルを問います。主に上流工程における専門的な業務分析や知識・スキルなど、高度な能力を身につけることが必要ですね。小論文形式の論述試験も課されるという特色があります。こちらも、すでにインフラエンジニアなどの業務経験者がチャレンジして、なお10%代前半の合格率となっており、難易度は高めですが、非常に信頼性が高く、保有できれば大きなブランド力となる資格です。
システムアーキテクト試験の後に、プロジェクトマネージャ試験、ITストラテジスト試験などのさらに上位とされる論文試験に挑む人もあり、これらへチャレンジしていく過程のキャリアパスともなっています。
続いて民間のベンダー資格を紹介します。こちらでは、まずシスコシステムズ社が認定するCCNA・CCNPを挙げましょう。同社が認定するベンダー資格のシスコ技術者認定は、世界的に通用するもので、ネットワーク機器における圧倒的シェアを誇るシスコシステムズならではの認定資格です。
受験に向けた取り組みを通じ、ネットワークの知識や触れることの多いシスコ製品の操作方法を効率的かつ体系的に学ぶことができるため、学習方法に悩む人にお勧めです。レベル別に資格が設けられており、CCNA(Cisco Certified Network Associate)が補佐的役割の技術力を保証するエントリーレベル、CCNP(Cisco Certified Network Professional)が専門分野として確立されたスキルを有し、まさにプロとして独力で活躍できる技能を認めるミドルレベルとなります。
さらに上位にCCIE(Cisco Certified Internetwork Expert)があり、エキスパートレベルのルーティングおよびスイッチングトラック認定資格とされますが、まずはCCNPレベルの取得を目指すのがインフラエンジニアを業務として行っていく人の目安になるでしょう。
もう1つ、Linux技術者認定試験(LinuC)も代表的なベンダー資格です。LPI-Japanの認定するサーバーOSで高いシェアを持つLinuxに関する知識とスキルを証明するものですが、ネットワークの基礎知識も問われます。従来からのインフラスキルはもちろん、仮想化技術やクラウドセキュリティなど、まさに今のインフラエンジニアが現場で求められるスキルが問われる認定試験であり、取得しておくと良いでしょう。
レベル1~3までのグレードが設けられていますが、一定の指示のもと運用監視を担うエントリー段階ならレベル1、さらに上流工程の設計や構築まで携わるならレベル2以上の取得が目指すべき目安となります。
このほか、Microsoft Azure認定試験や、AWS認定といった資格なども取得していると有利です。
さて実際にインフラエンジニアとして働き始めるには、どうすれば良いのでしょうか。専門知識をすでに大学や専門学校などで一定以上身につけ、就職活動を行うというスタイルは非常にストレートで、もちろんこうしたまっすぐなロードマップのもと、インフラエンジニアになったという人も多く見受けられます。
しかし全く未経験だけれどIT業界に転職したい、文系から目指したいという人も、諦める必要はありません。インフラエンジニアは、未経験者であっても比較的積極的な採用が行われています。とくに30代前半くらいまでで、今後のキャリア形成、スキルやノウハウの習得が十分に見込める場合、ポテンシャルと本人の意欲、興味関心の強度次第で、正社員として採用し、インフラエンジニアとして育成しようという企業に出会うことは不可能ではありません。
独学やスクールで基礎を学び、可能ならばエントリーレベルの資格を取得するなどしておくと、やる気や真剣味をアピールしやすいことにもなりますから、より転職・就職を有利に運ぶことができるでしょう。
近年はFacebookやGoogleなど世界的IT企業が、積極的に文系を採用しエンジニアの育成を行っているように、これまでの経歴や学歴にとらわれない採用を進めるIT企業が増加してきています。ヒューマンスキルの高さをベースに、技術を貪欲に吸収する力、情熱を持って仕事に向き合う姿勢をみせることができれば、未経験でも魅力的な人材とみる企業は必ずあります。
社内研修を経てまず運用保守案件からスタートし、徐々に現場でスキルや知識を蓄積、設計構築など上流工程業務へと、段階を踏んでステップアップしていくのが一般的な流れとなるでしょう。
インフラエンジニアの需要は安定して高く、さまざまな場にニーズがあります。ITインフラは社会に深く根づいたものとなり、今後もその必要性は変わらず増していくと考えられます。通信やシステムの基盤は不可欠であり、それを作り支えるインフラエンジニアが不要な世界はもはや想像できません。よって今後も高いニーズが見込め、将来性が高いといえるでしょう。
企業や組織の規模、業種業態領域を問わず、ITインフラの安全性、安定性はさらに高次元で問われるようになってきています。それだけITインフラ整備の必要性、専門性も高まっているのです。今後、これまで以上に幅広い現場で、インフラエンジニアが求められると推察されます。
インフラエンジニアとしての業務をこなすには、システム基盤部分をベースに、IT関連の幅広い知識とスキルが求められます。その中で培われたOSやハードウェア、ミドルウェア、ネットワーク、データベース、クラウド・仮想化技術、その他の知識・ノウハウは、システムエンジニアの他職種にキャリアチェンジする際にも、大いに役立ちます。ここを入口として、IT業界でのキャリア形成を図るのも有効でしょう。
インフラエンジニアとしてキャリアを積み、さらにネットワーク分野やシステム管理分野、セキュリティ分野などの専門性を高め、ITスペシャリストになるという道もありますし、IT関連部門の責任者・管理職にあたるプロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーを目指すことも可能です。
ITスペシャリストから経営的視点もプラスし、設計士たるITアーキテクトになる人もあります。企業や組織の経営課題を解決することに特化し、ITコンサルタントの道を歩むケースもみられます。また特定の会社に所属せず、フリーランスで働くインフラエンジニアも増えてきました。
このように、インフラエンジニアそのものの将来性が高いのはもちろん、管理職やスペシャリストへのキャリアパス、知識や経験を活かしたキャリアチェンジも幅広く見込めます。フリーランスなど働き方の自由度も高く維持することができ、自分なりの将来設計を描きやすいといった魅力もあるのが、インフラエンジニアなのです。
職種としてのさまざまな魅力や特徴が実感されたところで、あと残り、やはり気になる点といえば収入面でしょう。インフラエンジニアの平均年収は、IT業界の中でも比較的高水準であることが知られています。
受ける業務の内容によっても差がありますが、必要な知識を積極的に吸収し、現場での学びを重ねてスキルを上げ、仕事をこなしていけば、大きな年収アップも目指せます。とくに資格を取得したり、上流工程に携わりマネジメント領域にまで踏み込んでいけるようになったりすれば、高収入が見込めるでしょう。
経済産業省が平成29年8月に公開したIT産業の給与等に関する実態調査結果によると、IT
運用・管理(顧客向け情報システムの運用)の平均年収は608.6万円、IT保守(顧客向け情報システムの保守・サポート)の平均年収は592.2万円でした。国税庁の平成30年度民間給与実態統計調査結果から得られる日本の平均年収に比べ、かなり高い傾向にあります。
未経験からインフラエンジニアとなった場合、年収は280万円~320万円程度です。そこから実務経験を積むことで、年収がアップしていきます。
システムの運用保守を担当するスキルを身につけると年収は300万円~400万円に、ネットワークやサーバーの構築・設計を行えるようになると年収は400万円~500万円程度となります。
年収500万円以上を目指すためには、豊富な実務経験に加えて、チームのマネジメント経験も求められます。また、システムアーキテクト試験やCCIEの資格認定を取得していれば、インフラエンジニアとしてもトップクラスの知識やスキルを持つ証明になるため、年収アップに効果的です。
レバテックフリーランスに登録されているインフラエンジニアの案件の平均月額単価は64万円ですが、最低単価は30万円、最高単価は135万円と単価に大きな差があります。十分なスキルを身につけ、自身の市場価値を上げてからフリーランスとして独立することで、高単価の案件を受注することが出来るでしょう。
なお需要が高い一方、全体的な人材不足が恒常的に存在するため、年収水準は上昇傾向にあり、今後の待遇はよりプラスに移行すると期待されます。
いかがでしたか。インフラエンジニアという職業について、その定義から具体的な業務内容、報酬目安、この職種で働くことの魅力ややりがい、目指す上での向き不向き、必要とされるスキル・知識、さらには将来性まで、知っておきたいポイントを解説してきました。
高度な技術やスキルも必要ですが、何より重要なのは「なりたい!」という気持ち、興味関心をもって知識や技能を能動的に身につけていく姿勢です。ITなき生活、ITなき社会など想定できない世界となった今、ITインフラの重要性ははかりしれません。インフラエンジニアはそれを作り、支え続けるプロフェッショナルとして、強く求められる非常に重要な人材です。
情熱をもって取り組めるなら、報酬面もやりがいも高く、魅力的な仕事となるでしょう。未経験からでも過度な心配は不要です。関心をもたれたなら、ぜひ目指す一歩を踏み出してみてください。
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