最終更新日:2024年10月02日
フリーランスや個人事業主は、仕事の大部分を業務委託で受けます。しかし、業務委託では問題が起きる場合もあります。業務委託契約のトラブル事例とリスクを事前に知れば、回避しやすくなるでしょう。
本記事では、業務委託のトラブル事例や防止する方法、万が一のときの対処法などを解説します。契約書で重点的に確認すべき箇所にも言及するので、ぜひ参考にしてください。
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取る業務委託契約は契約内容の裁量が幅広く、雇用契約と異なる点もあるため、トラブルが起こることも。業務委託契約のよくあるトラブル事例を8つ紹介します。
報酬のトラブルは金銭的な要素が絡むためよく生じます。報酬や支払方法、期間、成果物の合格基準などの認識の違いが原因です。
契約内容に記載された業務を遂行したにもかかわらず報酬が支払われない、成果物が完成しても契約先の検収で不合格となり報酬が支払われないなどのケースがあります。
たとえば、委託者が受託者に建物のデザイン設計を依頼した事例では、図面が完成したあと別の建築業者へ依頼をして受託者に報酬を支払わなかったため裁判となりました。
裁判所は「図面ができた時点である程度の仕事は完成している」と認定し、委託者は請求額の一部の支払いを命じられました。
契約解除や途中解約もよくあるトラブルの一つです。
請負契約は経営破綻や倒産などで委託者が稼働できない場合を除き、途中解除はできません。委任契約では受託者からの途中解約が可能ですが、委託者が契約解除を申し出ると状況によっては損害賠償を請求される恐れがあります。
過去には服飾デザインの業務委託で、受託側が委託側に「契約を途中解除したことは無効だ」と裁判を起こした事例があります。
結果として、「受託側に虚偽の説明や債務不履行などの契約違反が認められるため、契約解除は有効」という判決が出ました。契約書に記載されている内容に加え、委託者や受託者の過去の行動を照らし合わせて判断されているのが分かります。
業務委託契約を結ぶ際は、契約書に中途解除について明記するのが大切です。
偽装請負もよく起こります。
偽装請負とは、業務委託契約を結ぶ受託者を雇用契約の正社員と同じように、指揮命令下で業務をさせることです。出退勤や勤務時間や勤務場所の指示が該当します。
偽装請負は、実態は正社員と同じなのに手当や福利厚生が受けられない不利な働き方です。正社員を解雇して請負契約に切り替え、正社員の頃と同じ労働条件を課すのも偽装請負にあたります。
過去には、語学教室の講師が業務委託契約にも関わらず会社の指揮命令下で働いたことに関する裁判がありました。このケースでは会社が有給休暇や健康保険加入の義務を怠ったと判断され、講師に損害賠償が支払われました。
何かを制作する業務委託案件で発生しやすいのが、成果物の修正に関するトラブルです。
デザイナーや編集者などのクリエイティブ系の仕事では、成果物の修正に多大な時間がかかります。契約書で修正の有無や追加料金、対応回数、修正発生時の納期などが明記されていないと、トラブルに発展する恐れがあります。
不当なやり直しは下請法でも禁止されている行為です。過去には依頼者が十分に説明しないまま業務をさせたうえ、やり直しを要求したことに対する裁判がありました。
二重派遣とは、派遣労働者をさらに別の会社へ派遣することです。
企業と業務委託契約を結んだ後で別の会社に派遣したり、労使関係の認識がずれたりして二重派遣になる事例が起きています。そもそも雇用契約を結んでいない受託者に対する指揮命令権はないので、派遣は命じられません。
ある会社は派遣として引き受けた労働者を別の会社に派遣する行為を1年間続け、書類送検されました。労使関係の理解不足や人材不足などの理由で二重派遣となるケースもあるため、委託者・受託者ともによく確認しましょう。
業務の再委託とは、受託者が請負った業務を第三者に依頼することです。再委託は請負契約では可能ですが、委任・準委任契約は原則禁止されています。また、再委託できるケースでも、責任範囲に関してトラブルになることもあるようです。
再委託に関するトラブルは、業務品質の低下や納期管理の不備などです。再委託で委託者が損害を被った場合、再委託した側に対して損害賠償が請求される可能性があります。
顧客の個人情報を扱う業務を委託したところ、受託者が第三者に再委託をして漏洩が起きた例があります。最終的には裁判で受託者側の過失が認められ、委託料以上の損害賠償が請求されました。これは、後述する情報漏洩にも関連する事例です。
業務委託契約では、機密情報漏洩や著作権違反による知的財産権トラブルもよく起こります。情報漏洩は、委託者が提供した社内の機密情報を受託者が不適切に扱って起きるトラブルです。顧客情報や重要なデータ、技術情報などが外部に漏れることを指します。
著作権違反は、委託者が提供した著作権で保護されている素材を不正使用したときに生じる問題です。テキストや音楽、画像、ソフトウェアなどが著作権の対象となり、制作者の許可がない使用・改変は法的に禁止されています。
過去には、日刊のスポーツ紙に掲載した写真がその後も繰り返し使用されたとして、撮影者が著作権侵害をもとに損害賠償を請求したケースがあります。裁判所は「契約では通常、同一の写真を複数回使うことを予定していない」として、撮影者の訴えを認めました。
契約不履行や成果物の不備・欠陥、大幅な納期遅れなどで損害賠償を請求されるケースがあります。
賠償については、委託者が一方的に有利です。たとえば、受託者が機器の操作方法の説明を怠ったことが原因で生じた火災で、受託者に損害賠償が発生した事例があります。
業務委託契約書には、契約違反時の賠償金額の範囲を記載しましょう。そのうえで、賠償請求に関する条項を互いに確認する必要があります。
また、業務に取り組む際は、不注意で問題を発生させない配慮が必要です。
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取る契約内容の裁量が幅広い業務委託契約では、雇用契約ではあまりないトラブルが発生する可能性があります。業務委託契約のトラブルを防ぐポイントを4つ紹介します。
契約は口頭でも成立します。しかし、業務契約を口頭で結ぶのはトラブルにつながります。後から認識違いが生じる恐れがあるためです。また、口頭契約は受託側が裁判で不利になりやすいといえます。
トラブルを防ぐには、書面で契約を交わしましょう。具体的な内容をまとめた契約書を作成し、互いに納得した後の契約がおすすめです。
業務委託契約書を交わした際は、紛失しないよう保管が必要です。
業務委託契約は契約書に沿って進め、不明点は契約書で確認します。成果物の不具合やトラブルが生じたときは、契約書で定められた基準が根拠です。
保管期間は契約書の種類ごとに異なるので要注意。一般的な契約書は、会社法により契約期間終了後の10年間保管が求められます。
業務委託契約書で交わした内容は、双方が合意すれば変更可能です。その場合、変更箇所を確認して変更契約書を作成しましょう。
契約書の記載量が膨大なとき書類を作り直すのではなく、変更箇所を記載した覚書や念書を作成します。変更内容を書類にまとめると、契約に関する余計なトラブルを防げるでしょう。
企業と直接業務委託契約を交わす場合、受託者が慣れていないと思わぬトラブルや問題が発生する恐れがあります。
安全に契約をするために、エージェントによる仲介をおすすめします。フリーランス向けの案件を豊富に扱っているエージェントなら、トラブルや万が一の訴訟にも対応可能です。
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取る業務委託契約でよくあるトラブルを知ると、防止や回避に役立ちます。しかし、気を付けていても思わぬ事態に巻き込まれる場合もあるでしょう。トラブルが起きたときの対処法を2つ紹介します。
トラブルが発生した際は、早期の対応が重要です。最初は問題の拡大を防ぐため、トラブルの範囲と具体的な影響を把握しましょう。発生した問題の原因を特定し、関係者と情報を共有すると、解決のための戦略を立てられます。
関係者とのコミュニケーションが重要です。丁寧にやり取りをすれば、誤解や不信感を減らしつつ、早期解決につなげられます。
また、事態の冷静な分析も欠かせません。トラブルを迅速に把握して関係者とコミュニケーションをとり、適切な対策を講じると、問題の影響を最小限に抑えられるでしょう。
業務委託契約のトラブルで専門的視点や法的アドバイスが必要な場合、専門のコンサルタントやエージェント、弁護士らへの相談がおすすめです。
専門家は特定の業界・分野の知識を使ってトラブルの根本原因を特定し、解決策を提案します。たとえば、弁護士は法的な観点から、契約上の権利や義務に関する説明やアドバイスをします。専門家からのアドバイスは、将来起こりうるトラブル予防にも有効です。
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取る業務委託契約書を作成する際は、必要事項を忘れずに記載します。また、契約を結ぶ前に内容を理解するのも大切です。業務委託契約書で確認したほうが良い項目を4つ紹介します。
業務委託契約の契約書には、業務内容や成果物、成果物の目的などを具体的に記載してください。業務内容によっては契約の種類も変わる(請負・委任・準委任)ため、重要な項目だといえます。
締結前に範囲を明確にし、契約書に漏れなく記載しましょう。
業務委託契約書には、業務や成果物に対する報酬額と支払方法も詳しく記載します。金額・支払条件・支払時期・支払方法だけではなく、税抜金額・税込金額・単価・数量・源泉徴収税など細かい情報を書くのも大切です。
委託企業の規模や委託業務の内容によっては、下請代金支払遅延等防止法が適用されます。受託者は違反条件がないことを確認しなければなりません。業務委託は特に金銭のトラブルが発生しやすいため、具体的な記載でトラブルを予防します。
業務内容が成果物の納品を目的とする場合、成果物の権利を記載するのが大切です。成果物に著作権や商標権などの知的財産権が発生するとき、権利の帰属先を明記すればトラブルを防げます。
ただし、著作権には譲渡できない権利もあります。著作権や商標権なども絡んでくるため、権利帰属の判断は弁護士に相談しましょう。
業務委託契約で有効期限を定めている場合、原則として期間満了まで契約を終了することはできません。しかし、「契約内容と著しく異なるとき・違反があったときには契約解除できる」という条件の記載は可能です。
解除要件は社会通念上妥当と認められる内容であり、委託先と双方納得のできる条件にしましょう。
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取る業務委託契約は、委託者が業務を外部の人材や企業に任せる契約を指します。
雇用契約との違いは、指揮命令権が存在せず、対等な立場で契約を締結する点です。委託者は受託者に契約内容以外の業務や残業などの指示ができません。受託者は仕事の進め方・時間・場所に関する制限を受けないのが特徴です。
また、契約範囲の業務が完了した時点で当該契約関係は終了となります。雇用契約の場合、従業員は社会保険・雇用保険などの保護がありますが、業務委託契約は福利厚生を受けられません。
業務委託契約の関連法は、民法第632条の請負契約と民法第643条の委任契約です。これらをまとめて業務委託契約と呼びます。契約の解除には、委任契約に関する民法651条が適用されます。
業務委託契約は、通常は労働基準法にともなう労働法規は適用されません。しかし、受託者との間に使用従属性が認められると、労働基準法9条や労働契約法2条1項に該当すると判断される場合もあります。
委託者が優越的地位を濫用して受託者へ不利益を与える取引をすると、下請代金支払遅延等防止法違反になります。
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取る業務委託契約の種類は、委任契約・準委任契約・請負契約の3つです。委任契約のうち、法律行為以外の業務を委託する形態を準委任契約と呼びます。それぞれの特徴を押さえましょう。
委任契約とは、業務の遂行に報酬を支払う契約です。成果物や納期ではなく、契約期間内の業務自体に対価が発生します。
法律行為をともなう業務委託が委任契約となります。弁護士や税理士が企業と結ぶ顧問契約も委任契約の一種です。
委任契約のメリットは、請負契約と比べて業務内容の変更や臨機応変に対応できることです。また、委任契約は業務遂行にあたって受託者側に注意義務が発生します。
準委任契約とは、法律行為以外の業務を扱う委託契約です。税務処理や事務作業、企画、設計、医療行為などが該当します。弁護士や税理士との契約でも、法律行為以外の業務は準委任契約です。
契約時点で具体的な成果物が決まっていない業務、明確な成果物がない業務の委託で使用されます。
請負契約とは、委託した業務を受託者が完成させ、その成果物に対して報酬が支払われる契約です。納品した成果物を委託者が検収し、問題がなければ報酬が支払われます。
請負契約の特徴は、成果のみが報酬の対象になる点です。業務遂行にどれだけ時間を要しても、納品されなければ報酬は発生しません。納品された成果物が契約内容と異なった場合、完成するまで修正します。
委託業務が途中で終了した、成果物の質が低い、委託内容と異なる要件であったなどの場合、報酬が発生しない可能性があります。
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取る業務委託契約は委託者・受託者ともにメリットがあります。業務委託契約で得られる受託者のメリットを3つ紹介します。
業務委託契約はタスクやプロジェクトに対する責任はあるものの、仕事のやり方の自由度は高い働き方です。
雇用関係とは異なり、自分でスケジュール管理をして場所や時間を選べる柔軟性があります。受託者は自分のライフスタイル・ニーズ・目標に合わせた働き方をカスタマイズでき、生産性の向上や業務の効率化に寄与します。
ただし、業務の遂行には自己管理能力・計画性・時間管理能力が不可欠です。
業務委託では、自分の能力や経験を活かしやすいです。高度な技術や専門知識を持つ人は、業務委託なら能力を存分に発揮できるでしょう。
業務委託は要件を満たせば、より大きな成果を得るのに有効な手段でもあります。自分のキャリアに多くの経験を上乗せし、専門性を深められるでしょう。
業務委託契約では、業務の質や量に応じて収入を増やせます。
固定給ではなく、作業や成果物に対して報酬が支払われるため、能力次第で効率的な収入アップが可能です。より多くのプロジェクトやタスクを手掛けたり、専門知識や特定の能力を活かして業務を遂行したりすると、収入が増やせるでしょう。
自身の能力や時間を効率的に管理でき、需要に応じて適切なサービスを提供できる人におすすめの働き方です。
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取る業務委託契約のデメリットは、業務量が流動的で収入が不安定になる点です。収入の変動は予測が難しいので、予算を管理したり長期の金融計画を立てたりしにくくなります。
また、労働基準法が適用されず、雇用関係で提供される有給休暇・年金・退職金・健康保険など、福利厚生や社会保険の恩恵を受けられないのもデメリットです。長期的な雇用保証がないので、常に新しい案件を探し続ける必要があります。
業務委託契約は自由度と柔軟性がある一方で、長期的安定に欠け、継続的な努力と管理能力を要する契約形態といえます。
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取る業務委託契約のトラブル事例について解説しました。トラブルが発生した際の対処法はもちろん、よくある事例を知ると防止につながります。
フリーランスは自由度の高い働き方ですが、責任や管理能力が必要です。業務委託契約で生じるメリット・デメリットを知り、今後に活かしてください。
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