フリーランスが結ぶ契約とは?内容や注意点について解説

最終更新日:2024年10月30日


この記事のまとめ

  • フリーランスは業務委託契約に基づき、企業と対等な立場で業務を行う
  • 業務委託契約には請負契約、準委任契約、委任契約の3種類がある
  • 契約書の内容を十分に理解し、報酬や権利、トラブル発生時の対応などを明確にしておくことが重要である

特定の企業に雇用されるのではなく、業務や案件に応じて複数の企業と取引する“フリーランス”という働き方。フリーランスとして活動するにあたっては、「契約」の種類を知り、それを守ることが大切です。

本記事では、フリーランスとして働くために身に付けておくべき「契約」の知識や注意点などを紹介します。自身のスキルに見合った報酬をもらうため、また、トラブルを未然に防ぐために、ぜひ理解しておきましょう。

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フリーランスと業務委託契約の違いとは

ここ数年で認知度をグッと高めてきた“フリーランス”という働き方。「どこでも働ける」「好きな時間に働ける」「得意を仕事にできる」といったイメージがあり、そのような自由度の高い働き方を望む人は増えてきています。

しかし、フリーランスの働き方にはデメリットもあります。自由度が高いがゆえに、思わぬトラブルに巻き込まれたり、思うように収入を上げられない可能性があります。

事前にしっかりと働き方の実態を知り、理解を深めておかなければ、フリーランスを続けるのは難しいでしょう。まず知っておくべきは、フリーランスが仕事を受注する際に避けては通れない契約のこと。業務委託で結ぶ契約と雇用契約の違いについて正しく理解しましょう。

業務委託契約と雇用契約の違い

フリーランスとして働く場合、業務委託契約を結んで作業を受注するのが一般的です。業務委託とはその名の通り、企業の“業務”を他社もしくは個人に“委託”し、代わりに行ってもらうことをいいます。

その際、お互いが納得する条件(業務内容や報酬など)を擦り合わせ、契約を結びます。“業務委託”という言葉自体は契約の名称ではなく、業務を他者に依頼する方法を指します。しかし、実際には複数の詳細な契約の種類も含め、業務委託契約といわれることが多くあります。

ここでは契約形態の詳細に触れる前に、業務委託と雇用契約の違いを説明します。

業務委託は基本的に案件ベースで契約を結ぶため、あらかじめ決めておいた一定の成果を上げる、もしくは定められた業務を行えば、その案件は完了となります。

ただし、その後も継続して案件依頼があるかどうかは分からない場合が多いようです。フリーランスは業務委託で働くのが一般的なため、収入が安定しにくいといわれます。

一方、企業に雇われるサラリーマンなどの働き方を雇用契約といいます。雇用契約とは企業のルールに従い、労働力や時間を提供することで給与を得る契約です。

雇用契約で働く場合、働く場所や時間、業務内容などを自分で自由に決められないため、自由度は高くないといえます。しかし、毎月給料として安定した収入が望めるほか、社会保険や有給など労働において定められている法律の保護も受けられます。

雇用契約では、正当な理由なく急に解雇されることもほぼないため、生活の基盤を固めやすいでしょう。

雇用契約で働く場合は、雇用される会社のなかで発生する業務をこなすことで収入を得ます。したがって、自身で取引先を探す、契約を結んで業務を遂行する、報酬を請求するといった“仕事を受けてお金に換えるための動き”をすべて担う必要はありません。

フリーランスが業務委託の契約を結ぶ場合、この一連の作業をすべて自身で行う必要があります。

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業務委託契約で結ばれる契約とは

“業務委託契約”とは3種類の契約形態をまとめた呼び方です(民法の規定上、「業務委託契約」という名称の契約自体はありません)。ここでは、それぞれの契約形態を紹介します。

請負契約

請負(うけおい)契約は、受託したものを完成させ、成果物として納品することで報酬が発生する契約形態です。

請負契約では、成果物の完成・納品までにかかった労力や時間は関係なく、成果物のクオリティで報酬支払いの判断がなされます。

委託者側にとっては、成果物を完成させるための人的コストを抑えられるほか、案件ごとに即戦力またはスペシャリストに依頼できるのがメリットです。

その反面、受託者の選択基準をきちんと設けなければ、いざ成果物が納品されたときにクオリティが低い、イメージ通りではなかったといった結果になる場合もあるでしょう。

受託者側にとっては、成果物の納品が条件となるため、原則は作業をする場所や時間に縛られず自由に活動できるのがメリットです。(※情報の取り扱いには細心の注意を要するため、作業場所をある程度選ぶ必要はあります)

ただし、未経験の業務を一から教えてもらえるわけではないため、すでに何らかのスキルや知識を持っていることが請負契約を結ぶ際の前提となりがちです。

職種によっては請負契約でも企業や特定の場所に出向き、委託者の取り決めたルールに沿って働く場合もあるため、事前に詳細まで確認しておくことが大切です。

請負契約には契約不適合責任(2020年4月より瑕疵(かし)担保責任から変更)が適用されるため、受託者は成果物を納品した後も、そのクオリティに責任を負う必要があります。受託者側のミスや不手際があれば、修正やサポートが求められることもあるでしょう。

職種の例としては、建物などを造る建築・建設業、アプリケーションやシステムを開発するIT系の職業などが挙げられます。

準委任契約

準委任契約とは、請負契約のように完成した成果物の納品が報酬支払いの条件となるのではなく、業務の遂行自体を報酬支払いの対象とする形態です。

準委任契約は、業務内容が法律行為にならないものを指します。例えば、コンサルタントやIT系のシステム運用・保守、塾講師などです。

この場合、「コンサルタントとして入った企業が、特定の条件を達成する」「塾講師として教えた生徒が希望の学校へ入学する」といった成果が求められるわけではないと考えられるでしょう。

しかし、達成すべき目標に向けて最適な業務を遂行することが求められるため、ある程度の結果が伴わなければ新たな依頼の受注や収入アップにはつながりにくいでしょう。

委任契約

委任契約は準委任契約と内容の差はあまりなく、業務の遂行に対して報酬が発生します。ただ、準委任契約との大きな違いは、委任契約が法律業務に適用されるということです。

例を挙げると、法律を扱う弁護士の業務がこれにあたります。

準委任契約や委任契約が請負契約と違うのは、成果物の納品を報酬の対象としないこと、業務をおこなう場所や時間帯が決まっていることが多い点などが挙げられます。

こう見ると、準委任契約・委任契約は雇用契約とあまり違いがないと感じる人もいるでしょう。しかし、雇用契約が雇用者となる企業の指示に従うため裁量を持ちづらいのに対し、準委任契約・委任契約は受託者が委託者と対等な立場となり、大きな裁量を持って業務を遂行できるという特徴があります。

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契約締結の流れ

フリーランスが業務委託契約を結ぶ際に重要なのは、双方しっかりと納得できる契約内容を話し合い、締結することです。

フリーランスになったばかりの人は、契約内容よりも「受注できた」ことに意識がいってしまう傾向にあります。この場合、内容をしっかり確認しておらず後悔する、といったことが起こりがちです。

契約を締結する際の流れは以下のようになります。

契約内容を擦り合わせる

まずは委託側から受託側へ声がかかる、または受託側から委託側へアプローチ(応募)するなどして相手とコミュニケーションをとります。

そこでどのような業務か、委託形態は何か、期間や報酬はどのくらいか、責任の所在はどこにあるのかなど詳細を擦り合わせます。

この際、自分側に有利に進めるための交渉ができる可能性もあります。ただし、あまりにも折り合いを付けにくい条件の場合は、交渉が決裂する場合もあるので注意しましょう。

契約内容を書面にする

業務や報酬、条件などの擦り合わせた内容を、第三者にも分かる契約書としてまとめましょう。

後からトラブルになってしまうと、時間も労力も必要になります、今後の収入への影響も考えられるため、早い段階で契約書を作成しておくのが得策です。

業務委託契約書は委託者、受託者のどちらが作成してもかまいませんが、委託者が作成するのが一般的です。書面には業務内容や契約期間、振込手数料の負担など、擦り合わせた内容を細かく記載しましょう。

相手側が作成した文書であれば隅々まで確認し、納得できない、または事前の取り決めと違う部分などがあればすぐに修正します。

書面が完成したら、双方が署名と捺印をします。近年は電子契約サービス等を利用して契約書をPDFでやりとりする場合もありますが、郵送に比べてスピーディーに進むため活用すると良いでしょう。

ここまで終われば、契約締結完了です。後は取り決めの通り、業務を開始しましょう。

請負委託の場合は金額に応じて収入印紙が必要

契約書面を作成した際、請負契約であれば金額に応じて収入印紙が必要となります。ただし、請負契約の場合でも、契約金額が1万円未満であれば収入印紙は不要です。また、準委任契約の場合でも、一定の条件を満たした場合は収入印紙が必要となる場合があります。

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主な契約条項とは

フリーランスが業務委託契約を結ぶ際、確認しておくべきポイントは以下のとおりです。これらを基本に、さらに必要な条項があれば付け足すと良いでしょう。

業務委託の内容

どのような業務をどこまでやるのか、契約期間はいつまでかといった内容を明確にしておきましょう。ここをきちんと決めておかなければ、受注当初では要請されていなかった部分まで追加報酬無しでやらざるを得なくなっていた、という状況になる恐れもあります。

特に、システムの運用・保守を担うITエンジニアなどの場合、どこからどこまでが対応範囲になるのかが大事なポイントとなります。書面で残しておけばいざというときにしっかりと主張できるため、記載しておくことが大切です。

報酬金額と支払日、支払い方法

報酬金額は現在の金額を入れ、変更になる場合は新たに作り直しましょう。締め日や支払日、支払い方法も明確に記載しましょう。

権利の帰属

一定の業務を行ったときや、成果物を作成した際には、著作権などの権利が発生します。契約書ではトラブルを防ぐため、その権利を委託者・受託者のどちらが持つかを明記しておくのが一般的です。

秘密保持契約(NDA)

業務委託契約を結ぶ委託側と受託側は、お互いが知り得る内容を漏らすことのないよう、秘密保持契約(NDA)を交わします。

通常はまずNDAの締結が先で業務委託契約の締結が後になりますが、NDAも盛り込んだ業務委託契約書で一度に済ませる場合もあります。

反社会勢力に関する記載

この項目では、反社会勢力に属していないかを確認します。

禁止事項や契約解除となる場合、損害賠償について

業務上禁止となるルールや契約解除にあたる行為、損害賠償について記載をしておきます。

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契約の際の注意点、トラブル事例

請負契約を結ぶ際、注意しておくべきは“偽装請負”になっていないかどうかです。請負契約はほかの契約と違い、業務遂行中は自由度が高いものであるといえます。

しかし、まれに業務の内容を細かく指示される、時間を指定されるなど“派遣契約”と似たような扱いを受けることがあります。この場合、契約は請負であるにも関わらず内容は派遣的なものになってしまうことから、偽装請負と呼ばれ法令違反となります。

フリーランスとして契約を取る場合、「すべてひとりでやっていて忙しいから」「知識がないから」と契約をよく確認しないでいると、気付かず法令違反を犯してしまう可能性もあります。委託側となる企業と対等に交渉できるフリーランスとして、契約に関する内容は一通り理解しておくことが大切です。

トラブルの際は弁護士などを頼ろう

気を付けていたけれどトラブルになってしまった、うっかり契約を見逃していた、など困りごとが発生した際は、法律の専門家である弁護士に相談するのも手です。

業務委託契約で発生しやすい事例は、修正指示が多くなった際の追加料金に関すること、納品や検収の日時誤認、遅延により発生する支払いトラブルなどです。

トラブルは事前確認で防げるケースも多く、何度もトラブルを起こしてしまうとフリーランスとしての信用を失いかねません。

信用がなければ案件を受注することすら難しくなります。契約内容をしっかりと理解して結ぶのもフリーランスの義務のひとつだと考え、分からないことはそのままにしないことが大切です。

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フリーランスは契約が大切

自分ひとりで契約から業務、報酬の請求や確定申告まで行うフリーランスは、とても大変で責任の大きい働き方であるといえます。もしどこかにミスがあればそれはすべて自身の責任であり、損害もすべて自身が被る可能性があります。

逆にいえば、自身が気を付けさえすれば、たいていのミスは防げるものだと考えることもできるでしょう。自分の行動次第で働き方や収入、業務の内容などすべてをコントロールすることが可能です。

そのためには取引先から信用・信頼を得ることが必要であり、その手段としてまず契約を正しく間違いなく結ぶ、ということが求められます。

フリーランスをこれから始める、または始めたばかりの人は、契約内容についてすべて理解することは難しいでしょう。しかし、一つひとつ調べたり学んだりしながら身に付けていくことで、その知識は確実にあなたを守るものとなります。

契約の大切さをしっかりと理解し、活躍していけるフリーランスを目指しましょう。

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