契約社員と派遣社員の違いとは？メリットとデメリットもあわせて比較

働き方改革という言葉を頻繁に目にする昨今、正社員以外の雇用形態として派遣社員や契約社員が注目されています。正社員雇用が難しく、派遣社員や契約社員として働く道を模索している方もいるでしょう。

本記事では、雇用社員と契約社員の違いやメリット・デメリットを解説します。それぞれに向いている人の特徴や派遣社員の正社員雇用の可能性にも触れるので、ぜひ参考にしてください。

契約社員と派遣社員の違い

雇用形態には正社員のほか、契約社員や派遣社員などがあります。両者とも非正規雇用の一種なので、似たイメージを持つ人は多いでしょう。以下では、3つのポイントに分けて両者の違いを解説します。

雇用主

派遣社員の雇用主は派遣会社ですが、契約社員は就業先の会社が雇用主となります。そのため、それぞれの給料の受け取り先、福利厚生を受けられる先は異なります。

契約期間

契約期間にも明確な違いがあります。派遣社員が同じ事業所で働く契約期間は最短で31日、最長3年です。

これは、派遣事業の運営や派遣労働者の保護を目的として定められています。3年を超過する際は、過半数労働組合から聴取したうえで雇用を延長したり、新しい派遣先を紹介したりする措置がとられます。

契約期間が最長3年なのは契約社員も同様です。契約が終了するときには、適宜更新が必要です。ただし、契約社員では5年以上継続して勤務している人が希望するケースに限り、無期雇用契約社員に切り替えられます。

勤務内容

勤務時間や業務内容にも違いがあります。

派遣社員の場合、週3日以上・1日5時間といったフレキシブルな勤務時間にも対応する一方、フルタイムで働くのも可能です。派遣社員は、契約で決められた業務だけを担当します。

契約社員の場合は、勤務時間も業務内容も正社員に準じるのが一般的です。そのため、業務量を抑制したい人は派遣社員、責任ある立場にも挑戦したい人は契約社員を選択しましょう。

業務委託については､｢業務委託とは？仕事内容ややめたほうがいいといわれる理由も解説｣の記事でも詳しく解説しています｡

契約社員と派遣社員のメリット

契約社員と派遣社員のどちらかを選択するとき、それぞれのメリットを考えるのが重要です。将来性やライフスタイルなど、希望する働き方をイメージして検討しましょう。

契約社員のメリット

契約社員は、正社員雇用につながる可能性があるのが大きなメリットです。雇用先と就業先が同じなので、直接的に勤務態度を評価してもらえます。業務内容が正社員に準じ、即戦力になる点からも企業は前向きに採用を検討するでしょう。

働く側としては、幅広い業務に携われば豊富な社会経験やスキルを獲得できます。また、一般的に正社員と同様に交通費が別途支給されるのもメリットです。勤務地が遠方でも経済的な負担を考えずに済みます。

派遣社員のメリット

契約満了時に次の派遣先を紹介してもらえるのが派遣社員のメリットです。そのため、自身で転職活動をする必要がありません。派遣元のノウハウやコネクションから、次回も希望の職種につける可能性が高いと考えられます。

さらに、時給や待遇などの具体的な交渉は派遣会社が進めてくれます。第三者を挟めば、働く側としては要望を伝えやすくなるでしょう。

加えて、事務職から専門職まで多くの職種に挑戦できるのもメリットです。未経験からの採用も多いため、スキルアップを目指す人に向いています。

メリットの違い

契約社員と派遣社員のうち、充実したサポートが受けられる立場は派遣社員です。派遣先への交渉や転職活動に時間や労力を費やす必要がありません。

一方で、契約社員は正社員に準じた業務に携わればキャリアアップにつなげられます。勤務した会社や携わった業務は職歴にも記載できます。

ただし、サポートが受けられるので、契約期間や雇用の連続性は派遣社員の方がより有利だといえるでしょう。

契約社員と派遣社員のデメリット

契約社員と派遣社員それぞれのデメリットを解説します。メリットと照らし合わせて判断すれば、自分に向いている方がより明確になるでしょう。

契約社員のデメリット

契約社員のデメリットの1つに契約期間があげられます。契約社員は雇用期間が決められ、会社側から更新されない限り満了の時点で退社になります。

また、派遣会社を通した派遣社員とは違い、契約満了後は1から職を探す必要があるのもデメリットです。更新の有無はおよそ1ヶ月前に通知されるため、短期間に次の職場を探す必要があります。

加えて、正社員に準ずる勤務内容を担当する割に昇給や昇格のチャンスが少ない点も考慮しましょう。

派遣社員のデメリット

派遣社員のデメリットは、雇用が安定しないところです。基本的に同じ勤務先で3年以上は働けません。また、経営不振に伴う人員整理では、優先的に契約を切られる可能性があります。

業務内容は正社員に比べると限定的で、責任ある立場を任される機会は少ないでしょう。給与が低い傾向があり、スキルアップの機会は得にくいといえます。加えて、勤務先までの交通費が別途支給されず、始めから給料に含まれるケースが多いのもデメリットです。

デメリットの違い

派遣社員では給与や経費面でのデメリットが大きいといえます。交通費が支給されないのに加え、賞与もないケースが多いようです。時給換算だけで就業先を選ぶと、経済的なロスが大きくなる可能性もあります。

一方契約社員は、契約更新時に自身で動かなければならないのが大きなデメリットです。退社の際は、失業保険も活用しながら次の就職先を探すように、新たに収入を確保する工夫が必要です。

いずれにしても、正社員に比べると雇用が不安定なデメリットは共通しています。

契約社員と派遣社員に向いている人

ここでは、契約社員と派遣社員に向いている人の特徴を解説します。キャリアプランやライフスタイルなど個々の状況と照らし合わせれば、より納得のいく選択ができるでしょう。

契約社員に向いている人

契約社員に向いている人の特徴は以下のとおりです。

• キャリアプランが明確にある
• 実務経験やスキルアップを求めている
• 安定的に高い給料を得たい

契約社員は、派遣社員より業務内容の幅が広いといえます。また、派遣社員と比較して契約社員は契約期間が長く、給与水準が高いのがメリットです。そのため、安定的に高い給与を求める人にも向いています。

雇用条件の交渉を第三者に委ねたくない人は、契約社員を選択すると良いでしょう。

派遣社員に向いている人

派遣社員に向いている人の特徴は、以下のとおりです。

• 責任が軽い立場で働きたい
• 現段階でスキルやキャリアは少ないが今後積み上げていきたい
• 大手企業で働いてみたい

決まった業務を担当するケースが多いため、実績がない段階も働きやすいでしょう。大手での募集が多く、憧れの企業に就職できる可能性もあります。

また、勤務時間にある程度の融通が利くため、私生活との両立を図りたい人におすすめです。派遣先に交渉を一任したい人にも向いているでしょう。

契約社員と派遣社員のキャリアプランの考え方

契約社員と派遣社員の選択では、キャリアプランの考え方が重要なポイントです。

就職未経験者やスキルに自信がない人も、派遣社員なら効率的に多様な経験を積めます。一方、キャリアプランが定まっていてスキルアップを目指している人は、契約社員を選択すれば着実に業務実績を残せるでしょう。

両者ともに契約期間が定められているため、次回の就職まで含めて検討するのも重要です。雇用の安定を優先させたい場合は紹介制の派遣社員、独自の伝手や交渉スキルがある場合は、契約社員を選択すると良いでしょう。

正社員になれる可能性はある？

手始めに非正規雇用を検討しているものの、将来的には正社員として働きたいと考えている人も多いでしょう。ここでは、契約社員と派遣社員それぞれの正規採用への可能性について解説します。

契約社員の正社員登用

契約社員は就業先である企業と直接雇用の関係にあるため、正社員登用の可能性は比較的高いといえます。

また、契約期間は最長3年とされる一方で、契約が更新されて勤務期間が5年以上になると無期労働契約への転換も可能です。これは、有期労働者の待遇を改善する目的で施行された改正労働契約法によって保障されています。

ただし、この無期労働契約は正社員登用とは異なるケースがあります。事前に雇用元の契約条件をよく確認しましょう。

派遣社員の正社員登用

派遣社員では、派遣先に正社員として雇用する制度が設けられていない限り、優秀な人材でも正規雇用の機会は得られません。そのため、正社員登用を視野に入れている人は、正社員登用制度のある派遣先を選ぶと良いでしょう。

また、紹介予定派遣制度を利用する方法もあります。これは最長で6ヶ月間、派遣社員として勤務した人が就業先と直接雇用契約を結ぶ制度です。

ただし、この方法では正社員のほか、契約社員やアルバイトでの採用になる可能性もあります。直接雇用が正社員を意味するものでないと理解しておきましょう。

その他の雇用形態との違い

ここでは、契約社員と派遣社員が他の非正規雇用とどう違うのかを解説します。契約社員と派遣社員以外の非正規雇用形態は、アルバイトやパート、嘱託職員などです。

アルバイトやパートとの違い

アルバイトやパートとしての採用は、契約社員と同じく雇用主は勤務先の企業です。そのため、規則や勤務体制は勤務先のものが適用されます。

直接雇用であるため、勤務日数や時短制度の適用などシフトの調整がつきやすいのも特徴です。副業や育児など、ライフスタイルに合わせた働き方をしたい人に向いているでしょう。

なお、アルバイトとパートに法的な差はありません。

また、個人事業主でアルバイトを考えている方は､｢個人事業主がアルバイトする際の注意点｜雇用する人も必見のポイントを開設｣の記事も参考にしてみてください｡

嘱託職員との違い

嘱託職員は正式に定義されていませんが、「正規に任命されないまま臨時で業務を担当する職員」の意味合いで使われます。

法的な扱いとしては、契約社員と同様であるケースがほとんどです。そのため、正社員に準じた位置づけで雇用する企業もあります。企業によっては、契約社員を嘱託職員と呼ぶケースもあるでしょう。定年後の再雇用を嘱託職員にあてはめる企業も多くあります。

契約社員との違いは、勤務時間がより短い点です。週に数日の勤務や時短勤務にも対応しています。

まとめ

契約社員と派遣社員の違いには、雇用形態・契約期間・勤務内容の3つがあります。スキルアップしたい人は契約社員、気軽に働きたい人は派遣社員が向いているでしょう。