イラストレーターの仕事内容や流れは？単価相場や必要なスキルなども解説

イラストレーターの仕事内容

イラストレーターとは、クライアントからの依頼をもとに本や雑誌、ゲームなどで使用するイラストを描く職種です。自分のセンスを生かして芸術性を追求するより、クライアントの要望を汲み取り、イラストに忠実に反映することが求められます。

ソーシャルゲームのイラスト制作

近年増加しているイラストレーターの仕事は、ソーシャルゲームの作品制作です。ゲームプロジェクトの多くは客層やテーマを定めていることが多く、その意向に沿う姿勢が求められます。

主な仕事内容はキャラクターや背景のイラスト、ゲーム内アイテムのデザインです。イラストレーターは美少女ゲームやシミュレーションRPG、パズルゲームなどさまざまなジャンルに合わせてイラストを描き分けます。既存のゲームイラストを再現する技術力やゲームの世界観に沿いつつ、トレンドを取り込む柔軟性が必要です。

挿絵や表紙のイラスト制作

小説やライトノベルなどの文学作品に関連する案件では、出版物の表紙や挿絵などのイラストを制作します。原作のイメージの忠実な再現が求められるため、作品内容をしっかりと読み解く力が必要です。

表紙や挿絵の影響で売上を伸ばす作品もあるため、イラストレターは重要な役割を担います。作品がアニメやドラマなどで映像化されると、表紙や挿絵を担当したイラストレーターも注目を浴びることもあるでしょう。

ポスターやパッケージのイラスト制作

イラストレーターは、街中で見かけるポスターや商品パッケージのイラスト制作に携わります。商品の素材や特徴などさまざまな情報を伝えるスキルが求められます。イラストレーターは消費者の目線に立ち、商品の情報を分かりやすくイラストで伝えるのが大切です。

商品の顔としてイラストが使われるため、イラストのクオリティが売上を左右する場合もあります。街中で使われているイラストに意識を向け、観察してみましょう。

3Dモデル制作

3Dモデルとは、3次元で作られるイラストデータです。平面的な2Dのイラストとは違い、パソコン上で作られる立体的なイラストを指します。用途はゲームのアニメーションやVTuberのアバター、映画制作などさまざまです。

商品を作る前のサンプルデータとして作られることもあり、生活用品や工業用品を製作する企業でも取り入れられています。3Dモデルを制作するイラストレーターには、全体図を細かく把握して表現するスキルが必要です。

「Blenderは仕事につながるのか？磨いたスキルを活かすために必要なこと」では3Dモデル制作で使うツール「Blender」について解説しているので、あわせてご覧ください。

スタンプのデザイン

日本国内で高い利用者数を誇るアプリケーションのLINEでは、イラストレーターが制作したスタンプが使われています。クリエイターズスタンプと呼ばれ、副業やフリーランスなどの個人、スタンプ制作部門を設けている企業が参入するコンテンツです。

スタンプの人気が出ると、大手企業とタイアップしたコラボスタンプを発表できる可能性があります。LINEクリエイターズマーケットに登録すれば、職業や年齢を問わず誰でもクリエイターとしてスタンプの発表が可能です。

専門分野でのイラスト制作

イラストレーターの仕事には、専門性の高い「テクニカルイラストレーター」や「メディカルイラストレーター」という職種があります。

テクニカルイラストレーターは、工業製品や機械の設計図、取り扱い説明書などに使われるイラストを描く職種です。製品の使用方法を視覚的に分かりやすく表すために、実際の写真や3Dデータをもとに白黒の線画で詳細な図を作成します。

メディカルイラストレーターは、医療や医学に特化したイラストを制作する職種です。論文や学会発表などに用いられる精巧な医療イラスト、一般向けのデフォルメされた医療イラストなどを幅広く手がけます。

イラストレーターの仕事の魅力

イラストレーターの仕事には、他の仕事とは違った独自の魅力があります。ここでは、5つの魅力的な点を見ていきましょう。

好きなことが仕事になる

イラストレーターの魅力の一つは、好きなことを仕事にできる点です。絵を描くことが好きな人はイラストレーターとして働くこと自体が楽しく、仕事のやりがいを感じやすくなります。好きなことを仕事にする充実感は、仕事のモチベーション維持にもつながるでしょう。

ファンがつく可能性がある

ファンができるのもイラストレーターの仕事の嬉しい点です。イラストレーターとして活動すると、自分の作品が人に見られる機会が増えます。自分の絵柄や作風などが人々に認知されると、ファンが徐々に増えていく場合があります。

SNSで作品を発表した際に感想や反響が得られるとやりがいを感じられ、モチベーションも高まるでしょう。

作品が世に出ることで満足感が得られる

自分の作品を形にして世に出せるのもイラストレーターの仕事の魅力です。自分のイラストが商品パッケージや本の表紙、ゲームのキャラクターなどとして世に残れば、大きな喜びや達成感を得られます。作品が広く知られ、後世の人にまで影響を与え続ける可能性もあるでしょう。

仕事場所を選ばず在宅でも働ける

イラストレーターは仕事場所を選ばず、在宅でも働きやすい職種です。パソコンやタブレット端末、イラスト作成ツールなどの必要機材が揃っていれば、どこでも作業できます。
郊外や海外でも仕事を続けられるため、ライフスタイルに合わせて柔軟な働き方を選べるでしょう。

「リモートワークの実態とは？今こそ確認したい働き方のポイントと導入成功の秘訣」も読み、どのような働き方ができるかチェックしてみてください。

イラストレーターの仕事の進め方

ここではイラストレーターの仕事の進め方の一例として、受注前から報酬を受け取るまでの流れを解説します。

依頼を受ける

新規で仕事を探す場合、クラウドソーシングやスキル販売サイトで受注可能です。Webサイトの掲載作品を見て問い合わせをしてくるクライアントもいます。過去に担当した案件のクライアントから再度依頼されることもあるため、受注した案件は一つひとつ真摯に取り組みましょう。

受注後のトラブルを避けるために、費用もしっかりと提示するのが大切です。相場を知りたい方は、「イラストレーターの単価、迷わず決めるコツは？相場や基準を解説」を参考にしてください。

クライアントと打ち合わせする

イラストレーターはクライアントの要望をイラストに反映するので、打ち合わせも大事な仕事です。相手の満足度を高めるために、要望を細かく引き出します。過去の作品やラフ画なども使い、クライアントのイメージを具現化しましょう。

クライアントとの打ち合わせがリモートで行われる機会も増えました。いつでもリモートで打ち合わせできるよう、ビデオ通話ツールを使えるよう準備しておくのがおすすめです。

ラフ画を提出する

イラストのイメージができたら、クライアントにラフ画を確認してもらうようにします。本制作に入る前にイメージを共有して方向性を確認しておけば、修正にかかる時間を短縮できるからです。クライアントが提出を求めていなくても、率先してラフ画を提出しましょう。

本制作に入る

ラフ画で完成イメージをクライアントと共有したら、本制作に入ります。自分の好きなものを描くのではなく、クライアントの要望を最大限に反映させるのが大切です。

納品する

イラストが完成したら、クライアントに納品します。フリーランスのイラストレーターの場合、納品時に修正を求められることが少なくありません。次の仕事につなげるためにも、面倒がらずに丁寧に対応しましょう。

報酬を受け取る

クライアントの満足できる作品ができたら納品完了となり、報酬を受け取ります。フリーランスの場合は、請求書も自分で発行しなければいけません。契約を交わした内容をもとに請求書を作成・発行し、報酬を受け取りましょう。

イラストレーターの働き方

一口にイラストレーターといっても、皆が同じ働き方をしているわけではありません。ここでは、イラストレーターの代表的な3つの働き方を見ていきましょう。

会社員

イラストレーターとして働きたい場合、企業に会社員として勤める方法があります。社内のデザイン担当になったり、ゲーム会社などの社内イラストレーターになったりするなどです。

グラフィックデザインやWebデザインなど、イラスト以外の業務を兼務する人もいるでしょう。商品のデザインやキャラクターデザインなどの開発や広報に関われる可能性があるのが魅力です。

フリーランス

イラストレーターは場所や時間の制約を受けにくいので、フリーランスとして働きやすいのが特徴です。ただし、フリーランスで成功するにはイラストを描くスキルだけでなく、営業力やクライアントとのコミュニケーション力も重要になります。

案件を獲得するために自分を売り込む営業力、複数の案件を並行して管理するマネジメント力も必要です。フリーランスのイラストレーターの仕事内容については、
「フリーランスイラストレーターの業務は？必要なスキルやなるための準備も」を参考にしてください。

副業

イラストレーターは副業でも働けます。クラウドソーシングやストックフォトサービスを利用すると、空いた時間を活用して手軽に仕事を受けられるでしょう。

ただし、副業として働くには副業に関する社内規定を確認し、遵守する必要があります。本業とのバランスを保ち、身体に負担がかからない範囲で副業に取り組むのが成功のコツです。

副業でできる作業内容については、「イラストレーターにおすすめの副業案件を紹介！仕事の探し方や相場も解説」を参考にしてください。

イラストレーターが仕事を獲得する方法

イラストレーターとして仕事を得るには、いくつかのコツがあります。以下で7つのコツを見ていきましょう。

SNSのアカウントを作る

イラストレーターとして仕事を獲得するには、SNSの活用が有効です。SNSは自分のイラストを多くの人に見てもらえる場であり、最初の作品発表の場に適しています。SNSを通じて他者との交流を深めれば、自分の名前や作品が認知されやすくなるでしょう。

積極的に自分の作品や募集に関する投稿をすると、個人や企業からの依頼を受けるチャンスも高まります。

ポートフォリオを作成する

ポートフォリオとは、自分の作品やスキルをアピールする作品集であり、クライアントはそれを見てイラストレーターを評価します。スキルや個性のアピールにつながるイラストをポートフォリオに掲載しましょう。

ポートフォリオをSNSやブログなどで公開すれば、より多くの人に自分の作品を見てもらえます。ポートフォリオに必要な要素については、「ポートフォリオとは？作る意味やビジネスでの必要性、構成例などを解説」を参考にしてください。

クラウドソーシングを利用する

クラウドソーシングサイトを活用すれば、イラストレーターの仕事を効率良く探せます。クラウドソーシングサイトには、イラストの仕事を依頼する案件が数多く掲載されているからです。経験が浅くても受注できる案件もあります。経験を積み重ねたいときに適したサービスといえるでしょう。

資格を取得する

イラストレーターとして仕事する上で資格は不要ですが、あれば自分のスキルを証明できます。イラストレーターにおすすめの資格は以下のとおりです。

• Photoshopクリエイター能力認定試験
• Illustratorクリエイター能力認定試験
• Adobe Certified Professional

各資格の詳細については、「イラストレーターに資格は必要？おすすめ6選と勉強方法を解説」を参考にしてください。

ストックフォトサービスで販売する

イラストレーターとして収入を得る手段の一つとして、ストックフォトサービスの活用が挙げられます。ストックフォトサービスとは、画像素材を登録して販売するプラットフォームです。自分のイラストを素材として登録し、ユーザーが購入すると収入が発生します。

ただし、登録してすぐに作品が売れるとは限りません。ストックフォトサービスはサブの収入先としての運用がおすすめです。

コンペに応募する

企業が開催するコンペも仕事の獲得につながる場合があります。コンペとは、特定のテーマや条件に基づいた作品を募集するイベントです。

コンペの情報は、Webサイトやクラウドソーシングサイトで掲載されている場合があります。コンペに挑戦すると自分の力試しができ、好成績を収めればクライアントから仕事の依頼が来る可能性もあるでしょう。

ただし、コンペに出ても入賞しなければ報酬をもらえなかったり、採用されても継続的な仕事につながらなかったりするケースもあるので要注意です。

エージェントを活用する

フリーランス向けのエージェントサービスを利用するのも手です。フリーランスエージェントでは、自分のスキルや希望する条件に合う案件を紹介してもらえます。

自分の代わりに案件を探してくれるので、営業に苦手意識がある人におすすめです。イラストレーターをはじめとしたクリエイター系の職種に強いエージェントを利用すると良いでしょう。

イラストレーターに必要なスキル

イラストレーターとして活躍し続けるためには、高いスキルが求められます。以下に必要なスキルを見ていきましょう。

スケジュール管理力

より良い作品を描きたい気持ちがあっても、納期を超えて作品づくりに没頭するのは避けましょう。

イラストレーターは、納期をしっかり守った上でベストな作品をクライアントに提案するのが仕事です。万が一納期に間に合いそうにないときには、クライアントに早めに相談するようにしましょう。

クライアントの要望を引き出すスキル

イラストレーターには、クライアントの要望を引き出す高いコミュニケーション力が求められます。思い込みで仕事を進めたり、自分の好みを押し付けたりするのは避けた方が良いでしょう。クライアントとしっかりコミュニケーションをとり、良好な関係を築くのが大切です。

グラフィックソフトを使いこなすスキル

多くのプロジェクトや案件で使用されている「Illustrator」と「Photoshop」は最低限使いこなせるようになっておくのが望ましいです。スキルを証明して案件獲得を有利にするために、ツールの関連資格の取得を目指しても良いでしょう。

イラストレーターの収入

厚生労働省の職業情報提供サイトjobtagによると、イラストレーターの年収は521.2万円でした。フリーランスHubに掲載されている案件の場合、月単価50万～60万円のものが多い傾向です（いずれも2024年1月27日時点）。

「イラストレーターの平均年収は？収入アップの方法を解説」では高年収を得るコツについて触れているので、あわせて参考にしてください。

今後イラストレーターとして仕事を得ていくために

ここからは、イラストレーターの需要動向と今後求められることを解説します。

イラストレーターの需要動向

近年はソーシャルゲームが人気で、イラスト制作の需要は増加傾向にあるとされます。一方で、イラストレーターを目指す人は増えており、業界内は飽和状態に近い状況だという説もあるようです。今後はより高いクオリティのイラストが求められるでしょう。

また、近年は生成AIの技術が発展し、AIによるイラスト生成が盛んになりました。これにより、特定の種類のイラストや簡単なデザインについては、今後AIが担当する可能性が高まっています。イラストレーターとしてのあり方は、時代とともに大きく変わるでしょう。

今後のイラストレーターに求められること

イラストレーターとして今後も仕事を獲得するには、自分の個性を磨き、新しい技術やトレンドに常に対応しながら進化し続けるのが重要です。

また、AI生成をツールとして使いこなすスキルも求められます。クライアントとのコミュニケーションでイラストの使用用途やニーズを理解し、相手の期待を上回るイラストを提供する姿勢もさらに求められるでしょう。

イラストレーターのキャリアパス

イラストレーターには、同じ職種でキャリアを積むか別の職種に転向する道があります。

たとえば、イラストレーターとしてキャリアを築き、より大きな仕事をするための個人事務所を設立する道が考えられます。事務所を設立してチームで仕事をすれば、自分のブランドを拡大し、より大きなプロジェクトやクライアントに関われるようになるでしょう。

アニメーションのスキルを身につけ、アニメーターとして活躍するのも選択肢の一つです。イラストレーターのスキルを活かして、Webディレクターやグラフィックデザイナー、Webデザイナーとして活躍するキャリアもあります。イラストの知識をデザインやプロジェクト管理など広範囲に役立てられるでしょう。

まとめ

イラストレーターには、ソーシャルゲーム系の仕事を中心に多様な仕事があります。活躍し続けるためには基本的な画力はもちろん、グラフィックソフトを使いこなすスキルや自分を売り込む営業力なども必要です。

イラストレーターは会社員や副業などさまざまな働き方ができます。能力や実績ができたら、フリーランスになって会社勤めのときより高収入を得られる可能性もあるでしょう。