フリーランスCADオペレーターのメリットとは  マルチタスクの技術を磨けばアラカンになっても需要があるって本当?

最終更新日:2024年11月17日

在宅で、CADオペレーターの仕事をすることはできるのでしょうか。ここでは、フリーランスのCADオペレーターの仕事や働き方、メリット・デメリット、フリーランスになるために必要なスキルや準備について、きちんと理解していきましょう。

また近年、CADオペレーターという職業の将来に対する疑問の声を聞くこともあります。「将来性はあるの?」「何歳まで働けるの?」など、不安を抱いている人のために、CADの仕事を改めて振り返り、長く続けていけるためのヒントなどについて説明していきます。

フリーランスのCADオペレーターの仕事内容と働き方

CADオペレーターの仕事は、設計支援ツールのCADソフトを使い、製図や設計、トレースなどを行うことです。

CADオペレーターは、パソコンとインターネット環境があればどこでもできますが、フリーランスの場合は仕事を請け負い、在宅で作業をして納品するというケースがほとんどです。

基本的に、ノートパソコンは使わない人がほとんどです。スペックの問題もあるのですが、在宅で行う時に最も注意しなければならないのは、セキュリティの問題です。取り扱うデータは機密であることが多く、例えばノートパソコンに新開発商品のデータを入れて持ち歩き、万が一データを盗まれてしまった、パソコンを紛失してしまったとなると、賠償問題にもなりかねません。

フリーランスや、業務委託契約などの場合、契約時に機密保持義務、損害賠償義務の取り決めを行うことが多いのですが、トラブルを起こすと多額の損害賠償を請求される可能性があります。現在は働き方が多様化していますが、厳格なセキュリティの観点から、場所を選ばない「ノマドワーカー」のような働き方は向いていないので注意しましょう。

フリーランスのCADオペレーターになるまでのキャリアパス

では、在宅CADオペレーターになるためには、どのようなステップを踏んだらよいのでしょうか。一般的には、以下のようなステップが考えられます。

  1. 建設会社、製造会社などの社員オペレーターとして働き、その後に独立
  2. スクールなどに通い、就職・転職してCADオペレーターになり、その後に独立

CADオペレーターとして幾度か転職を行い、キャリアと実績を積みながらその後独立する人もいます。フリーランスのCADオペレーターになるために、王道や決まりごとはなく、中には初めからフリーランスとして活動している人もいます。

意欲や能力次第とも言えますが、ただ初めからフリーランスというのは、非常に厳しいでしょう。実力の問題だけでなく、社会的信用を得るところから始めなければならないからです。企業は、大切な製品・商品を実績のない人に託すようなリスクを冒すことはできません。

仕事を受注できなければ、フリーランスとして収入を得ることはできません。そのようなリスクを回避するためにも、慎重に準備を進めていきましょう。在宅で働くという環境を求めるのであれば、フリーランスになる前にいくつか方法があります。

在宅OKの会社で働く

リモートワークを認めている会社もあります。この場合、会社からパソコンを用意するケースがあります。自宅で働くことができ、収入も確保できます。しかも、社会保障や福利厚生などを受けることができるというメリットがあります。

毎日ではなく、週の間に何日か職場に出向く必要があるでしょう。また、社員として働くので、会社で働いている時間に合わせ、同僚や上司、取引先からの連絡にも随時対応できるようにしましょう。

副業で始めてみる

ある程度の実績や経験を積んでいても、すぐにフリーランスとして活躍できるとは限りません。会社を辞めて独立することに不安を感じる人は、まずは副業として在宅でCADオペレーターの仕事に取り組んでみる方法があります。仕事が終わった後、休日などを利用し、仕事の流れや事務的な作業などを学んでいきます。副業であれば、本業で収入を維持できるので、取り組みやすいでしょう。

この場合、本業、副業ともにおろそかにならないことが重要です。本業はもちろんですが、副業もプロとしての仕事であることに変わりはありません。一度受注したら、納期を守り、手抜きをせずに真摯に取り組みましょう。小さな案件でもコツコツとこなしていくことで、発注側から評価され、独立後も継続して仕事をもらえる可能性があります。

副業で始める場合は、働いている会社が許可していないケースもありますので、トラブルを回避するためにも事前に確認し、必要に応じて事情を説明しておきましょう。

フリーランスのCADオペレーターのメリット・デメリット

フリーランスでCADオペレーターを目指す前に、フリーランスで働くことのメリット・デメリットを理解しておきましょう。フリーランスとして働きたい理由、向き・不向き、また独立した時の心構えなどを考える目安になりますので、参考にしてみてください。

在宅で働くメリット

在宅でCADオペレーターとして働く一番大きなメリットは、「自由に時間を使える」ことではないでしょうか。会社では時間が決まっていますが、フリーランスなら納期を厳守できれば、自分の都合や体調に合わせて、柔軟に仕事をすることができます。

また、通勤時間がかからない分、仕事や趣味、または家事・諸用と、有効に時間を使うことができます。

もう1つのメリットは、「実力で評価される」点です。会社員の場合、成果を出せば褒めてもらえることはあるでしょう、しかしどれだけ素晴らしい製図を作っても、最終的には「会社」という単位で評価されます。

フリーランスは個人の名前で仕事をしますから、案件が高い評価を受ければ大きな達成感を得られるうえ、継続して案件を獲得する、または信頼関係の構築、人脈作りなどにも効果を発揮し、ほかの案件を獲得する可能性もあります。仕事の量や案件内容によっては、収入アップにつなげることもできます。

在宅で働くデメリット

デメリットは、自由な働き方ができるからこそ、「高い自己管理能力」が求められることです。自宅はくつろぐ場所でもあり、テレビやインターネットを見る、ゲームをする、食べたり飲んだりする、疲れたらすぐ休むことができるなど、仕事以外にできることがすぐ手の届くところにあり、仕事とプライベートの区別がつきにくくなります。

自宅で仕事をする場合は、仕事への責任と強い意志を持つことが必要です。納期に合わせて、週ごとに打ち合わせの日時や予定を決め、1日のスケジュールを調整していきます。平日は集中して仕事を行い、休日は仕事や仕事関連のメールチェックはしないなど、それぞれ充実した時間を過ごせるようにします。

また、病気やケガをすれば仕事ができなくなり、収入にそのまま影響します。健康管理にもとりわけ気をつける必要があります。

そして、評価されるために相応の実力をつけることです。CADオペレーターでも、設計のスキルを求められることがあります。ただ設計者の図面をトレースするだけでなく、設計の仕組みを理解することで、その後の変更や修正もスムーズに行えるようになり、設計者が余計に説明する手間を省くことができます。

トレースすればよいだけであれば、職場にいてもらったほうがコミュニケーションも取りやすく、意思の疎通も図りやすいのが現実です。会社にはいないけれど、「それでもこの人に頼みたい」と思わせる実力がなければ、仕事を獲得するのは難しいでしょう。

そして一番大切で、見落としがちなのが「CADオペレーターの仕事以外の雑務」に関することです。会社員であれば、仕事は営業が持ってきてくれて、給与や税金関連は経理がやってくれますが、フリーランスは、仕事以外にも営業活動から交渉、契約、経理など1人でこなす必要があります。

仕事をしなければ収入につながりませんが、仕事が増えれば、こうした雑務が増えます。自由な働き方ができるということは、自己責任において行われていると言うことを理解しておきましょう。

フリーランスのCADオペレーターの単価・年収

それでは、CADオペレーターがどのくらいの報酬を得ているのか、レバテッククリエイターより、求人内容と金額についてみていきましょう。

【例1】
業務内容:グローバルな電気設計市場/設計用CADパッケージ製品の開発、ハイエンド案件向けのプロップモデル制作、実装を担当、仕様とイメージボードに基づいた各種モデル制作(モデリング、スカルプト、UV、テクスチャ、ベイク、骨入れ、ウェイト調整、実機確認)、旧仕様モデルのアップコンバート作業、旧仕様モデルの本案件に向けたアップコンバート作業全般
報酬単価:~500,000円/月

【例2】
業務内容:建築パースデザイン制作、3ds Maxを用いて主に建築パース・インテリアCGパースの制作
報酬単価:~550,000円/月

【例3】
業務内容:遊技機向けのモーションデザイン作業・VRやAR技術を専門に、様々なサービスやコンテンツの制作
報酬単価:~550,000円/月

【例4】
業務内容:主に広告やWebページ用の自動車のモデリング作業
報酬単価:~550,000円/月

これらは、2021年5月時点で公開されていた案件のほんの一部です。~750,000円/月までありますが、社員・派遣などの働き方で、フリーランス・業務委託での案件は、およそ550,000円/月が多く掲載されています。

フリーランスは収入や仕事の期間が一定ではないため、年収にするとどれくらいになるのかを考える必要があります。フリーランス協会のフリーランス白書2020では、568名の様々な職種のフリーランスを対象に行った調査において、現在の年収を調べたものがあります。

そのうち「200万円未満」と回答したのは22.5%、「200~400万円未満」が22.9%、「400~600万円未満」が19.9%、「600~800万円未満」が11.6%となっています。職種やスキル、経験年数などによりますが、およそ200~400万円と考えられます。

また、企業で働いた経験のある人に、会社員時代より収入が「増えた」と回答した人は53.2%で、「変わらない」は13.3%、「減った」は33.5%でした。現在の収入を維持できるか、それとも増やすことができるか、準備の段階でしっかり見極めていきましょう。

どのような仕事があるのか?

CADは、建築や製造業、自動車などの複雑なものから、機械部品、玩具、家具、インテリア、アパレルなど、様々な業界で活用されています。

近年は、3D CADの需要が高くなっています。2D CADは、紙の上に書かれる製図のような平面ですが、3D CADは、立体図形をコンピューター上に作り出すことができます。完成形に近くイメージしやすいため、採用している企業が年々増えています。

現段階では、3D CADを駆使できるオペレーターが不足しているため、需要が高く案件によっては単価を上げてくれるケースもあります。

では2D CADは習得しなくてもよいのでは、と考えてしまいますが、2Dの図面から3Dへ、3Dの図面から2Dへ展開するなどの依頼もあるため、どちらも習得しておきましょう。

フリーランスになるために必要なスキル

それでは、フリーランスのCADオペレーターになるためには、どんなことをすればよいのでしょうか。

実務経験を積む

それには、実務経験を積むことが最も大切です。まずはCADオペレーターの補佐として学び、職種ごとのCADソフトに関わり、たくさんの現場を見て、たくさんの図面を描いていくことで、少しずつプロとしての実力がついていきます。

またCADオペレーターの仕事は、スピードと正確さも求められます。実務をたくさんこなせば、経験を活かしながらあらゆる状況に対応できる人材となり、またクライアントとの信頼関係も生まれます。

自分なりの強みを作る

現在のCADオペレーターは、ただトレースできればよいということではありません。仕事を獲得するためには、自分の得意とするものを持っていると強みになります。例えば、「私はオフィスビルの改装にたくさん関わって多くの実績を残しました」「このCADソフトを使いこなすなら誰にも負けません」など、アピールできる材料があると、得意分野での仕事を受ける可能性が高くなります。

経理の知識

フリーランスになると、自分自身で確定申告をする必要があります。始めから税理士を雇えるほど収入を得ている人は、それほど多くないでしょう。自分自身でお金を管理すると、お金の使い方を学ぶことができます。

フリーランスは、できるだけ無駄な経費は削減したいところです。ソフトを使いこなすだけでなく、費用対効果という観点から仕事に向き合うことで、プロとしてのスキルを磨くことにもつながります。

ビジネスは人とのつながり

実務経験の数が増えれば、それだけ自分に関わる人の数も増えていきます。一緒に働き、サポートしてくれた人たちとのつながりを大切にすることで、フリーランスになってからも仕事を発注してもらえたり、ほかの仕事を紹介してもらえたりする可能性があります。

相手からの信頼を得るためには、どのような状況でも自分の役割に責任を持ち、真摯に取り組むことです。言い訳をしたり、責任逃れをしたりしていたのでは、相手によい印象を与えることはできませんし、業界でよくない噂の対象にならないよう、何事にも敬意を持って、真面目に対応していきましょう。

フリーランスになる前に準備しておきたい環境

仕事をもらえたら、すぐに取りかかれる環境を整えておきましょう。

パソコン

CADで仕事をするためのパソコンを用意します。CADソフトには様々な種類があり、特に3D CADは、高度なグラフィックや素早い処理など、高いスペックが要求されます。

そのため、小型のノートパソコンでは対応できないことがあります。値段が高いものがよい、ということではありませんが、使用するソフトに適したパソコンを用意する必要があります。

CADソフト

CADソフトの種類はとても多く、業種や企業によって利用するソフトが異なります。建築であれば、AutoCADVectorWorksなどが使われています。自分の得意分野や職種に合わせたソフトを用意しておきましょう。
CADソフトには[SketchUp Studio]のように直感的に操作できるソフトもあります。正規販売代理店である株式会社アルファコックスでは、SketchUpシリーズのプラグインソフトを多数用意。用途に応じて使い分けられるため、作業の効率化につながるでしょう。興味がある方はぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

A3プリンター

A3プリンターがあると、パソコンの画面で見るのとは異なり、印刷することによってミスなどに気づくことができます。高いものを購入する必要はありませんが、確認用としても持っているとよいでしょう。

データ保存

自分が携わった仕事は、責任を持ってデータを保存しておきます。USBの外付けのHDD、クラウドストレージなど複数組み合わせてバックアップを作っておきましょう。ファイリングしておくことで、同じクライアントから同じ仕事を依頼された時、すぐに取り出して確認することができます。

フリーランスCADオペレーターの1日

それでは、フリーランスのCADオペレーターの1日とはどのようなものでしょうか。Sさんの例を紹介します。Sさん・大手建設会社でCADオペレーターとして6年働き、4年目あたりから副業でもCADオペレーターの仕事をこなしてきました。結婚で職場が遠くなったこともあり、退職。現在フリーランスとして2年目、夫と二人暮らしです。

7時 起床 掃除・洗濯・朝食 夫出勤
9時 仕事(メールチェック、発注者へ進捗状況を電話で報告)
12時 ランチタイム・休憩
14時 仕事
19時 夫帰宅・夕食・休憩
21時30分 普段はその日にやり残した仕事を行いますが、明日は午前中発注者と外で打ち合わせがあるため、製図の最終チェックと準備のみにして終わりにします。
23時 入浴・就寝

Sさんは1日10時間を仕事に当てていますが、1人の時のほうが集中できるため、仕事は日中に重点を置き、夜は忙しい時のみ仕事をしています。土・日は休日にしています。

CADオペレーターの将来性と需要

フリーランスを目指そうと思っても、CADオペレーターの仕事はこの先なくなってしまうのでは、という話を聞くことがあります。それはテクノロジーの発展により、CADオペレーターが以前のように、トレースができればよかったというわけには行かなくなっているからです。

パソコンが民間で使われ始めた90年代は、パソコンもソフトも高価で今のように誰でも使いこなせたわけではなく、CADオペレーターが製図をパソコン上にデータ化する専門家でした。それが、パソコンやインターネットの普及により、設計士もCADを使いこなすようになっていったため、オペレーターの需要がなくなっていったのです。

ただ、モノが作られていく限り、CADの需要は今後も必ず続いていきます。では、これからはどのようなCADオペレーターが求められるのでしょうか。それは、設計ができるようになることです。

CAD、その中で3D CADができるオペレーターは少数で、人手不足とされています。

設計という分野は、完成時に間違いがあってはならないため、設計の段階で何度も何度も修正や微調整が行われます。繁盛期になると設計者も忙しく、自分で手直しをしている暇がありません。

その時に、設計者の意図を読み取って、設計もCADも理解しているオペレーターが「設計アシスタント」として確実に・正確に、スピーディーに仕上げてくれると言うことで、重宝されています。現在のオペレーターの位置づけは、そのような認識になっています。

いくつになっても働ける?

CADオペレーターに将来性があるなら、フリーランスになったら、一体いくつまで働くことができる(求人がある)のでしょうか。そのような懸念を示す人もいます。

ですが、フリーランスに年齢制限はありませんし、最近ではCADオペレーターの求人情報に「エルダー歓迎」(先輩・年長者という意味)と書かれていることもあり、熟練した人材を積極的に採用する傾向にあります。実際に、50代、60代でも現役で活躍している人もいます。

フリーランスは、年齢ではなくスキルや実績が求められているので、実際のところ、あまり年齢を気にする必要はないでしょう。

また、WordExcelPowerPointなどを使えるようになると、レポート作成や事務作業ができますし、PhotoshopIllustratorなどを使って画像も扱えるようになれば、CADオペレーター/設計アシスタントとして様々な業界で重宝されるだけでなく、ほかの職種でも活躍できるでしょう。

それ以外にも、設計ができる、設計の資格を持っているなどの強みがあれば、上級CADオペレーターとして高単価案件をこなせるようになります。設計士、エンジニアなどキャリアチェンジすることも可能です。知識とスキルを磨くことによって、様々な可能性を広げることができるようになります。

まとめ

これからも、建物や機械、乗り物など、モノが作られていく限り、CADオペレーターの仕事は、なくなることはないでしょう。

まずは、今のうちにコツコツと実績を積み重ねること、3D CADやほかのソフト、ツールも学んでおくこと、そしてその時代の状況に合わせて、「手に職」を持ちながら、働き方を変えていけるマルチタスクな人材を目指していきましょう。

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