個人事業主が経費にできるもの一覧を紹介!どこまで・いくらまで落とせるか

最終更新日:2025年11月14日

個人事業主がどの費用を経費計上できるのか迷う方もいるでしょう。経費への理解は節税だけでなく、事業資金の有効活用にも欠かせません。事業に無関係の費用は経費にできないので、注意しましょう。 本記事では、個人事業主が知っておきたい経費の基礎知識を紹介します。経費にできるもの・できないもののほか、計上時のポイントも解説するので、ぜひ参考にしてください。

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個人事業主の経費とは

個人事業主の経費は、事業をするうえで必要になる費用です。経費になるかどうかは、「事業運営に必要か」「売上を得るためにかかったか」という基準で判断します。

個人事業主の経費の範囲・上限

法人と比べ、個人事業主は経費にできる費用の範囲が限られます。個人事業主が経費で落とせるのは、事業に直接関係する支出です。生活費や事業以外で使った分は計上できません。

経費にできる金額の上限は基本的にありません。必要性や妥当性が薄い支出は否認される可能性があるため、領収書などの明細を残すのが大切です。

個人事業主と法人の違いについては、「個人事業主と法人の違いとは?それぞれのメリット・デメリットも比較」を参考にしてください。

個人事業主が経費計上するメリット・デメリット

経費の計上は、個人事業主の事業を健全に運営するのに欠かせません。経費を正しく把握して申告すれば、税負担を抑えながら資金の管理体制を整えられます。個人事業主が経費計上するメリットとデメリットを表にまとめました。

メリット デメリット
・節税できる
・資金管理を効率化できる
・経理作業を効率化できる
・事業活動の透明化につながる
・手元の資金が減る
・帳簿作成や領収書管理の手間が増える
・融資審査に不利になることがある

個人事業主と節税対策については「個人事業主の節税対策とは? おすすめの方法や活用できる制度を紹介」でも解説しているので、参考にしてください。

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個人事業主が経費にできるもの

ここでは、個人事業主が経費にできるものの例を紹介します。

販売目的の商品の購入代金

個人事業主が販売目的で商品を購入した場合、代金は「仕入れ」として扱われます。商品の仕入れにかかる送料も経費と認められるのが一般的です。

ただし、購入代金をそのまま経費にできるわけではありません。購入費用としてではなく、売れた商品の原価として計上するからです。在庫分の購入代金は経費で落とせず、実際に売れたタイミングで処理する必要があります。

パソコンや周辺機器の購入代金

個人事業主が業務でパソコンを使う場合は、購入代金を経費計上できます。パソコンや周辺機器は器具備品として扱われ、購入金額によって経費の項目が異なるので注意が必要です。

原則として、10万円未満の器具備品は「消耗品費」として一括計上します。対して10万円以上の器具備品は、「減価償却費」として耐用年数に応じた分割計上が必要です。

家賃

個人事業主が事業用オフィスを借りている場合、家賃は全額経費として計上できます。

自宅兼事務所を利用している場合は、事業で使用している面積・時間の割合に応じて家賃を家事按分し、その分だけ計上可能です。自宅兼事務所を引っ越す際は、事業利用分に限って転居費用も経費になります。

ガス・電気・水道の料金

自宅兼事務所で働く個人事業主は、事業で使用したガス・電気・水道などの光熱費を家事按分して経費計上できます。判断に迷うときは、仕事で使っている面積や利用時間を基準に算出しましょう。家事按分の基準を明確にすれば、税務調査の際に説明しやすくなります。

インターネット料金

インターネットを利用して業務を行う個人事業主は、その料金を経費として計上できます。プライベート用のスマホの通信費は経費として認められません。事業用とプライベート用が混在する場合は、仕事で使用した割合を家事按分して計上する必要があります。

業務に必要な物品の費用

個人事業主が業務で使用する文房具やコピー用品などの購入代金は、消耗品として経費計上できます。

個人事業主の経費で消耗品として認められるのは、原則として10万円未満の物品です。ただし、ソフトウェアのように10万円以上の高額な物品でも、使用期間が1年未満なら消耗品として購入代金を全額経費として計上できます。

業務に関連する書籍・教材の費用

個人事業主が業務に必要な知識・スキルを習得するために購入した書籍や教材費は、経費として計上できます。経費の対象になるのは、専門書や業界誌、ビジネス書、オンライン教材などです。

事業内容によっては、書籍や教材を通じた学びを仕事に活かす人もいるでしょう。書籍や教材の内容が業務に関連していれば、経費としての妥当性を説明しやすくなります。

業務に関連する会食費用

クライアントとの会食やゴルフなど、業務に関連する接待費用は経費として計上できます。接待交際費に私的な支出が含まれていないかどうかは、税務調査で重点的に確認されるポイントの一つです。

接待交際費として会食費を経費計上する場合は、領収書とあわせて日時や人数、内容などを記録しましょう。詳細を説明できるようにしておけば、適切な経費処理として認められやすくなります。

営業や出張などの移動にかかる費用

打ち合わせや営業活動、出張など、事業に関する移動費は経費として計上できます。

個人事業主の経費の対象になるのは、新幹線や電車、飛行機、バスのような公共交通機関の料金、タクシー代などです。ただし、私的な移動にかかる支出は経費にできません。公私混同しないよう、明確に区別するのが大切です。

事業で使う車にかかる費用

個人事業主が事業のために車を使用する場合、以下のような費用が経費として計上できます。

  • 車両購入費
  • メンテナンス費
  • ガソリン代
  • 車検代
  • 高速道路料金
  • ETC料金

プライベートでも事業用の車を使う場合は、家事按分する必要があります。

一部の税金

個人事業主は、以下のような税金を経費計上できます。

  • 個人事業税
  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 固定資産税
  • 不動産取得税

自宅兼事務所や事業兼用自家用車にかかる税金は、事業で使用する割合に応じて家事按分が必要です。

事業に関連する保険料

個人事業主は、事業に関わる自動車保険料や火災・地震保険料を経費計上できます。また、従業員の社会保険料や生命保険料、傷害保険料なども経費として認められます。

個人事業主がリスクに備えて加入を検討すべき保険については、「個人事業主の保険|加入を検討した方がいいおすすめの制度を紹介」を参考にしてください。

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個人事業主が経費にできないもの

個人事業主は幅広い支出を経費にできますが、すべてが認められるわけではありません。私的な出費や借入金の返済などは経費にできず、誤って計上するとペナルティの対象になるため注意が必要です。

ここでは、個人事業主が経費にできない代表的な支出を紹介します。

事業に関連しない費用

事業に直接関係のない趣味や娯楽、私的な交際費などは経費として認められません。また、会食代や旅費なども、事業と無関係であれば個人の生活費とみなされます。

個人事業主がこうした私的な支出を誤って経費計上すると、税務調査で指摘されたり修正を求められたりするリスクが高まるため注意が必要です。

事業主本人のための費用

個人事業主が自分自身に支払う報酬は経費にできません。個人事業主には会社員のような給与の概念がなく、収入から経費を差し引いた残額がそのまま事業所得として扱われるからです。

ほかにも、福利厚生費や健康診断費、国民健康保険料など、事業主本人にかかる費用は事業に直接関係しないため、経費として認められません。

健康診断の費用については、「フリーランスは健康診断を受ける?受診費用や医療費控除される方法を解説」もチェックしてみてください。

資産として扱われる物品の費用

資産として扱われる物品の費用は経費として計上できません。

たとえば、事業用に購入した10万円以上の機械設備やパソコン、車両などは固定資産として扱われ、法定耐用年数に応じて「減価償却費」として計上する必要があります。耐用年数に応じて費用を分割するため、原則として購入時に全額を経費計上できない点を理解しておきましょう。

所得税や住民税などの税金

個人事業主自身が負担する所得税や住民税など、本人に関わる税金は経費として認められません。個人事業主の経費として認められるのは、事業用資産にかかる固定資産税や印紙税など、事業運営に直接関わる税金や公的負担金に限られます。

税金には経費として計上できる・できないものがあるため、種類ごとに区別して正しく処理する必要があります。

個人事業主が支払う税金については、「個人事業主が払う税金の種類は?計算方法・控除や節税対策を解説」も参考にしてください。

借入金の返済にあてる費用

借入金の元金返済は、たとえ事業に関連していても経費にはできません。元金の返済はあくまで資金の返還にあたり、支出には該当しないからです。

ただし、借入金の返済に伴って発生する利息については「利子割引料」として経費計上できます。事業用の借入がある場合は、元金と利息を正しく区別して帳簿付けしましょう。

個人事業主と生計を一にする家族への給与

個人事業主と生計を一にする家族に支払う給与は、原則として経費にできません。例外として、青色申告を行う個人事業主が所定の手続きを済ませている場合は「専従者給与」として認められ、経費計上が可能です。

必要な届出を提出していない場合や条件を満たしていない場合は、経費として認められず、税務調査で否認されるリスクがあるため注意が必要です。

出典:国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」

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主な経費の勘定科目の一覧表

個人事業主が経費として計上できる支出には、さまざまな勘定科目があります。主な経費の勘定科目は、下表のとおりです。

勘定科目 内容
租税公課 国や地方公共団体に納める税金、公的な手数料
荷造運賃 商品の梱包費用や発送時の運賃
水道光熱費 事業用のガス・電気・水道の利用料金
旅費交通費 事業用の移動にかかる費用や出張時の宿泊費
通信費 電話・インターネット・郵便の利用にかかる費用
広告宣伝費 広告・宣伝活動にかかる費用
接待交際費 取引先との会食費や手土産代
保険料 事業用の保険料や従業員のための保険料
修繕費 設備や建物の修理や管理にかかる費用
消耗品費 文房具や事務用品などの消耗品の購入代金
減価償却費 高額資産の耐用年数に応じた費用
給料賃金 従業員への給与・賃金・賞与
法定福利費 社会保険料や雇用保険料など、事業主が負担する費用
外注工賃 業務委託先への支払い費用
地代家賃 事務所・店舗・駐車場などの賃料
貸倒金 回収不能になった売掛金損失
新聞図書費 業務関連の新聞・書籍・教材の購入代金
専従者給与 青色申告で認められる生計を一にする配偶者や親族への給与
修繕積立金 将来の修繕に備えた積立金
車両費 事業用車両の維持費・ガソリン代・保険料など
支払手数料 銀行手数料や取引に伴う手数料
雑費 ほかの科目に分類できない少額費用

これらの勘定科目を理解し、日々の支出を適切に仕分けて記録することで、確定申告時の経費計上もれを防げます。高額資産や専従者給与など、扱いが複雑になりやすい支出を中心に注意して管理しましょう。

経費の勘定科目について詳しく知りたい方は、「経費の勘定科目一覧|個人事業主の按分方法や節税対策なども解説」もご覧ください。

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申告方法に応じた個人事業主の経費の扱い

個人事業主の経費は、青色申告と白色申告で扱いが異なる部分があります。以下で異なる点を見ていきましょう。

減価償却

個人事業主の場合、減価償却資産の経費の計上方法が青色申告と白色申告で異なります。

青色申告 白色申告
・30万円未満のものは一括で経費計上できる
・30万円以上のものは減価償却の対象になる
・10万円未満のものは一括で経費計上できる
・10万円以上のものは減価償却の対象になる

個人事業主がものを購入する際は、いくらまで一括で経費計上できるのかを把握しておきましょう。

出典:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」

専業従事者

個人事業主の経費において、生活費を共有する配偶者・親族に事業の手伝いとして支払う給与は「専従者給与」となります。ただし、専従者給与で経費計上できるのは青色申告する人だけです。

青色申告 白色申告
専従者給与を経費として計上できる ・専従者給与は適用されない
・「事業専従者控除」として一定額を所得控除できる

白色申告の場合、専従者給与は経費計上できないものの、「事業専従者控除」として一定額を控除できます。

なお、青色申告で専従者給与を経費計上するには、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出する必要があります。

出典:国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」

家事按分

家事按分とは、事業用とプライベート用の両方にかかる費用について事業に関連する割合の分だけを経費計上する方法です。

青色申告 白色申告
・事業に関わる部分はすべて経費として計上できる
・経費として認められる割合に制限はない
・原則として事業に関わる割合が50%超あれば計上できる
・合理的な根拠があれば割合が50%以下でも経費として認められる

正しく家事按分すれば事業関連の支出だけを経費計上でき、税務上のトラブルを防げます。青色申告と白色申告の違いを知りたい方は、「青色申告と白色申告の違いは?メリット・デメリットをわかりやすく解説」を参考にしてください。

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個人事業主が経費計上する際のポイント

個人事業主が経費を正しく計上するためには、家事按分を利用したり領収書を保管したりするなどのポイントを押さえておくことが大切です。処理を誤ると税務上の指摘やペナルティにつながるため注意しましょう。

少額の費用も経費として計上する

個人事業主として活動するのであれば、少額の費用も経費として計上することがおすすめです。文房具や事務用品、電車やタクシー代などの少額の支出も積み重なれば節税効果につながるからです。

日頃から領収書やレシート、クレジットカードの利用明細などを整理・保管しておくと、確定申告時にスムーズに経費として計上できます。日々の資金管理を習慣化することで、経費の計上漏れを防ぎ、正しい申告と節税につなげられます。

妥当な範囲内で計上する

個人事業主が経費計上する際は、妥当な範囲内に留めることが重要です。経費計上する割合が高すぎると、税務署から不適切とみなされて修正を求められる可能性があるためです。

妥当な経費割合については、簡易課税制度で用いられる「みなし仕入れ率」を目安に考えるとよいでしょう。みなし仕入れ率は業種ごとの標準的な原価率を示しており、卸売業であれば90%、サービス業なら50%と定められています。

あくまで参考値ですが、みなし仕入れ率と経費割合が大きく乖離する場合は注意が必要です。個人事業主として税務上のリスクを回避するためにも、妥当な範囲内で経費処理しましょう。

出典:国税庁「No.6509 簡易課税制度の事業区分」

家事按分を利用する

経費計上による節税効果を高めるためには、家事按分を利用するのがポイントです。

個人事業主は状況に応じて家賃や光熱費などの支出を一定の割合で按分できます。家事按分する際は、事業用とプライベート用のそれぞれの使用面積や利用時間、使用頻度といった合理的な基準で按分割合を算出しましょう。

たとえば、自宅に占めるオフィススペースが全体の20%であれば、家賃や光熱費の20%を経費計上できます。インターネット料金やサーバー代、電話代なども、事業用の支出であることを証明できれば、家事按分で節税効果を高められるでしょう。

領収書やレシートは必ず保管する

個人事業主が経費計上する際は、支出の妥当性を証明する領収書やレシートが必要です。領収書やレシートに決まった形式はないものの、基本的に以下の情報が記載されている必要があります。

  • 支払った人の名前や会社名
  • 支払った金額
  • 但し書き
  • 支払いを受けた人の名前・会社名・所在地
  • 支払った日付

なお、2021年の電子帳簿保存法改正により、2024年1月以降、すべての個人事業主には領収書を含む電子取引の書類を電子データで保存する義務があります。

領収書の電子保存について詳しく知りたい方は、「領収書の電子化が義務に?紙の書類をデータ化する方法やメリットを解説」を参考にしてください。

ペナルティを科されないように注意する

個人事業主が支出を不正に経費計上すると、税務上のペナルティを科せられる可能性があります。具体的には、過少申告加算税や重加算税が課され、納税額が増えるため注意が必要です。

税の種類 説明
過少申告加算税 納める税金が不足していた場合に課される
重加算税 故意に過少申告したり無申告のままにしたりした場合に課される

なお、自ら誤りに気づいて早めに修正申告を行うと、ペナルティを科されずに済む場合があります。申告内容に不備を見つけたら、速やかな対応を心がけましょう。

出典:
国税庁「No.2026 確定申告を間違えたとき」
国税庁・国税局・税務署「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし」

判断に迷う場合は専門家に相談する

個人事業主として経費計上の判断に迷った場合は、早めに専門家に相談することが大切です。

具体的には、税務署の窓口を訪れたり相談会に参加したりするのがおすすめです。ただし、税務署は毎年確定申告の時期(2月中旬〜3月中旬)になると混雑するため、早めの相談を心がけましょう。

確定申告の相談は税務署だけではなく、商工会議所や青色申告会などでも受け付けています。また、フリーランス協会の有料会員になると税務相談ができるメリットがあります。

フリーランス協会については、「フリーランス協会とは?プランや支援内容、メリット・デメリットを解説」で紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

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まとめ

個人事業主が正しく経費計上するためには、経費にできるものとできないものをあらかじめ把握しておくことが重要です。さらに、青色申告と白色申告では減価償却や専従者給与の扱いが異なるため、自身の申告方法に応じた対応が求められます。

日頃から領収書やレシートを整理・保管したり、迷う場合は早めに専門家に相談したりするのもスムーズに確定申告するコツです。

個人事業主にとって、経費を正しく計上することは事業を健全に運営するうえで欠かせません。支出を適切に把握・申告し、税負担の軽減や資金管理体制の強化に努めましょう。

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