業務委託と請負の違いを分かりやすく解説!メリットとデメリットも紹介

最終更新日:2024年10月03日

IT業界では近年、業務委託や請負契約といった言葉がよく聞かれます。業務委託と請負は、ともに自社の業務を専門家に依頼するアウトソーシングです。契約形態の違いを認識すれば、委託側と受託側との齟齬やトラブルが防げるでしょう。

本記事では、業務委託と請負の違いのほか、似ている用語との違いやメリットとデメリットなども解説します。

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業務委託と請負の違いとは?

コロナ禍をきっかけに、業務委託で仕事をするフリーランスが増加しています。「請負契約」といった言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。ここでは、業務委託と請負の違いのほか、委任契約や派遣契約などとの違いも紹介します。

業務委託と請負の違い

業務委託(業務委託契約)とは、企業が自社の業務を雇用していない第三者に委託することです。第三者には、フリーランサーや外部の企業が含まれます。

請負(請負契約)は、企業が委託した業務の成果物に対して報酬を支払う契約形態です。業務委託の一種で、「業務請負」という言葉も請負契約と同じ意味で使われます。

業務委託とは

業務委託は、請負契約や委任契約などの総称です。請負契約・委任契約は自社で対応しきれない業務を外部企業や個人へ委託する契約で、総称して業務委託と呼ばれます。

ただし、業務委託は法律で定められた用語ではなく俗称です。法律上では、形態が異なる請負契約と委任契約が区別されます。どちらも企業が自社業務を委託する点では共通しているため、まとめて業務委託契約と呼ばれることが多いようです。

業務委託には3種類ある

業務委託で結ぶのは、請負契約・委任契約・準委任契約の3種類です。いずれも委託者から指揮命令を受けない点が共通しています。それぞれの特徴を見ていきましょう。

請負とは

請負(請負契約)は、依頼した成果物の完成を目的とした契約です。民法第632条では、受託側が成果物の完成を約束し、委託側が完成した成果物に対し報酬を支払うことで成立すると定められています。

請負は、当事者の合意のみで成立する諾成契約です。請負人・注文者の双方に意思の合致があれば成立します。

委任・準委任とは

委任・準委任契約は、成果物の完成がなくても業務を遂行すれば報酬が得られる契約です。

委任契約は法律行為を依頼するときに結びます。弁護士に代理人契約を依頼する、税理士に確定申告を代行してもらうなどが委任契約の代表例です。

準委任契約は、法律以外の行為を依頼する際に結ばれる契約です。商品の広告宣伝を依頼する、医師に診療を依頼するなどが該当します。

派遣契約との違い

業務委託契約と派遣契約の違いは、「指揮命令の有無」「契約期間」です。

人材派遣では、派遣先企業が労働者に対して直接指揮と命令をします。業務委託契約の場合、委託者は受託者への指揮命令権がありません。業務委託契約なのに委託者が受託者に指示を出すのは「偽装請負」であり、違法行為となります。

契約期間は派遣契約では最大3年までと法律で決められていますが、業務委託契約には上限がありません。

下請契約との違い

業務委託契約と下請契約の違いは、締結した相手との関係性です。注文者と直接契約を結ぶときは請負契約、委託を受けた事業者が別の事業者に業務の一部を委託するときは下請契約を適用します。

注文者(委託者)から委託を受けた事業者を「元請負人」と呼びます。下請契約は、元請負人が受託した業務の一部を別事業者(下請負人)に委託する際に結ぶ契約です。

また、建設業法第2条4項で分かるように、下請契約とは主に建設業で交わされる契約形態です。

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業務委託と請負のメリット・デメリット

業務委託や請負には、雇用契約や派遣契約と違い指揮命令権はありません。しかし、業務委託や請負には、自社で対応できない業務を他に任せられる魅力も。業務委託と請負それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。

委託側のメリット

業務委託・請負の委託側のメリットは、以下の3つです。

コストの削減

人材獲得に必要な採用コストや育成にかかる費用を削減できるのがメリットです。請負は成果物の納品で報酬が発生するので、労働時間に応じた賃金を支払う雇用契約よりコストを抑えられます。

業務の効率化

業務の効率化が図れるのもメリットです。事務作業などの定型業務を外部に委託すれば、自社は本来の業務に専念できます。全体として業務がスムーズに進むでしょう。

社外のノウハウの活用

自社にはない専門スキルやノウハウを活用できるのも魅力です。近年は多くの業務でDX化が進んでいます。DXを検討する際、導入したいシステムやセキュリティ対策の開発を外部に委託するとスムーズです。

委託側のデメリット

業務委託・請負の委託側のデメリットは、以下の3つです。

社内にノウハウが蓄積されない

社内にノウハウが蓄積できず、優秀な社員が育ちにくいのがデメリットです。外部に委託した業務がブラックボックス化し、業務に対応できる自社人材が育たない恐れもあります。

業務によってはコストがかかる

コストが肥大化する可能性があるのにも要注意です。委託する業務内容や業務量によっては、自社の採用・教育コストを大幅に上回ってしまう恐れがあります。

指揮命令できない

指揮命令権がないのもデメリットのひとつ。業務の進め方や時間配分などを具体的に指示できないため、成果物の品質を一定に保つのが難しくなります。

受託側のメリット

業務委託・請負の受託側のメリットは、主に次の3つがあげられます。

自分のペースで働ける

1つ目は自分のペースで業務に専念できる点です。業務委託では成果物の完成まで指示がなく、業務に集中できます。勤務時間にも縛られず、専門分野に特化した業務に専念できるのもメリットです。

時間当たりの報酬が高い

作業時間当たりの報酬が高まる可能性があります。業務委託では、報酬は契約時に決められます。取り組んだ時間が短くても、一定の成果さえ出せば時間当たりの金額は上がるでしょう。

契約で決められた業務だけすれば良い

雇用契約と異なり、委託された業務以外は「契約外」として拒否できます。好きな作業だけに集中できるのがメリットです。

受託側のデメリット

業務委託・請負の受託側のデメリットは、以下の3つです。

契約内容が不利になる恐れ

成果にフォーカスした契約が不利に働くリスクがあります。報酬を先に決める請負では、長い時間をかけて作業しても報酬が上乗せされません。

成果物納品まで報酬が出ない

成果物が完成するまで報酬が得られないのもデメリットです。請負では、成果物の完成後に報酬を請求できます。裏を返せば、その業務の完成までに得られる報酬はゼロとなります。

不備があると報酬がもらえない

成果物に不備があると報酬が支払われません。特に請負では、成果物に問題があったときに委託側だけが契約を解除できる権利を持ちます。委託側と受託側でトラブルに発展する恐れがあるでしょう。

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業務委託や請負の導入が進む背景

雇用コストの削減や生産変動への対応を背景に、業務委託や請負のニーズが高まりました。

たとえば、社内の業務効率化を目的に、ルーティンワークをメインとしたバックオフィス系の作業の委託が増えています。データ入力や資料作成などの請負契約、受注ノルマのないテレフォンアポインター業務やメール送付などの準委任契約が代表的です。

IT業界でも、ソフトウェアの運用・保守を担うSESや、ソフトウェア開発・運用などを担うSIerが増加しています。どちらも業務委託や請負がメインで、委託を検討する企業も増加傾向です。

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業務委託や請負を契約する際の注意点

業務委託は、活用次第で自社業務の効率を上げられるのが魅力です。しかし、雇用契約とは異なる注意点もあります。以下をご覧ください。

情報漏洩のリスクに注意する

業務委託や請負には、受託者の過失・盗用などによる情報漏洩の危険性が常に付きまといます。委託先が雇用関係にない第三者だからです。

社外秘データの漏洩を防ぐためにも、提供する情報の重要性は事前に確認しつつ、企業の中枢に関わる業務の委託は避けるのが無難です。

業務の指示が出せない

業務委託では、業務の進め方や勤務条件に指示は出せません。業務委託契約を結びつつ受託者に指示をすると、偽装請負になる恐れがあります。業務の指示を出すつもりなら、雇用契約や派遣契約を結びましょう。

ただし、例外として適法となる指示もあります。代表的なのは、業務を安全に遂行するための指示、納品物の品質維持を目的とした指示などです。こうした指示は、指揮命令とは異なります。

契約相手や内容を精査する

業務委託契約には、請負・委任・準委任の3つの契約形態があります。

契約形態を決める際のポイントは、成果物の完成を目的とするか、業務の遂行だけを目的とするかです。成果物や法律行為の有無に応じて契約形態は変わるため、目的に合ったものを選びましょう。

また、厚生労働省の告示では、「業務委託は単に肉体的な労働力を提供するものでない」と定められています。業務内容が単純な肉体労働に該当する場合、業務委託契約ではなく労働者派遣契約が求められるでしょう。

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偽装請負とは

業務委託をするとき、委託者は偽装請負に気をつけなければなりません。ここでは、偽装請負について解説します。

偽装請負の疑いがあるケース

発注者が受託者へ直接指揮命令するには、労働契約法や労働者派遣法に従う必要があります。請負・委任などの業務委託契約なのに派遣のような働き方になっている状態は、偽装請負と呼ばれる違法行為です。

偽装請負の例を以下に示します。

  • 業務委託契約を結ぶ相手に細かく指示を出し、出退勤を管理する
  • 責任者が受託者に対して発注者の指示を伝える。
  • 注文者A社の委託を受けたB社が業務を別のC社に流し、C社の労働者がA社やB社の指示を受けて仕事をする

偽装請負には、労働者の雇用が不安定になったり、労働災害時の責任が不明確になったりする問題があります。

偽装請負とみなされたの罰則

偽装請負が発覚した場合、以下の罰則が課せられます。

  • 許可を受けない労働者派遣事業に該当する場合:受託した事業主に1年以下の懲役、100万円以下の罰金
  • 労働者供給事業に該当する場合:委託者と受託者に1年以下の懲役、100万円以下の罰金
  • 偽装請負が中間搾取に該当する場合:受託した事業主に1年以下の懲役、50万円以下の罰金
  • 委託側が中間搾取をほう助したとみなされる場合:上記と同様の罰則が課せられる可能性がある

委託者(注文者)が違法だと知りながら偽装請負で労働力を得ると、行政指導や勧告を受けます。勧告に従わなければ会社名が公表され、ペナルティが課せられます。

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業務委託契約書と請負契約書の作成

委託者と受託者の間でトラブルを起こさないためには、業務委託契約書・請負契約書のポイントを知っておくのが大切です。最後に、契約書を作成する際のポイントを見ていきましょう。

明確に記載するべき項目

業務委託契約書(請負契約書)に盛り込むのは、以下のような項目です。

  • 業務内容
  • 報酬
  • 支払い時期と方法
  • 業務遂行の費用負担方法
  • 契約期間および更新、解除に関する事項
  • 再委託の制限有無
  • 成果物の帰属先
  • 履行状況に報告義務の有無
  • 秘密保持義務に関する事項
  • 重要事項の変更に関する通知義務

ただし、記載項目の種類は委託する業務の種類によって異なります。

収入印紙の有無

業務委託契約書の作成時、収入印紙が必要となるものがあります。

請負契約書の場合、成果物の報酬に応じて必要な収入印紙の金額が変わります。報酬が1万円以下のときは非課税で、収入印紙の貼り付けは不要です。

契約期間が3ヶ月以上で、継続的な取引の際に用いられる契約書は第7号文書と呼ばれます。これに貼り付ける収入印紙の金額は一律4000円です。

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まとめ

業務委託と請負は活用次第で自社業務を上手く分担でき、事業全体を効率化するのに適した契約形態です。ただ、委託先は第三者なので、契約形態の選択を誤ると大きなトラブルにつながりかねません。メリットとデメリットを把握したうえで契約形態を選びましょう。

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