ふるさと納税を個人事業主が行うメリット・デメリットや手続きのやり方は?

最終更新日:2024年10月17日

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この記事のまとめ

  • 個人事業主にとってふるさと納税は、所得税・住民税の控除を受けられるなどのメリットがあるが、ワンストップ特例制度が使えないなどのデメリットもある
  • ふるさと納税の控除上限額は、住民税所得割額の約2割が目安となり、所得に応じて変動するため注意が必要である
  • 個人事業主がふるさと納税を行う場合は、確定申告時に寄付金控除の申請を行い、その際に事業主貸として仕訳する必要がある

ふるさと納税は所得税の還付・住民税の控除がされるだけでなく、返礼品も貰える制度です。ふるさと納税の利用を考えている人も多いでしょう。会社員はもちろん、自営業や個人事業主もふるさと納税を利用できます。

そこで本記事では、個人事業主がふるさと納税するにあたってのメリット・デメリット、手続き方法を解説します。

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ふるさと納税とは?

ふるさと納税は、全国の都道府県・市区町村に一定額を寄付すると控除が受けられる制度で、個人事業主も利用可能です。記事の初めに、ふるさと納税の概要と、個人事業主の控除上限額について解説します。

ふるさと納税制度の概要

ふるさと納税は、税金ではなく寄付という扱いです。生まれた街や応援したい自治体をサポートでき、寄付金額は翌年の住民税から減額されます。会社員や個人事業主など誰でも利用可能です。

寄付金額や用途は自治体ごとに異なります。返礼品を受け取る場合は、自治体が設定した金額より多くの寄付が必要です。

個人事業主の控除上限額の目安

ふるさと納税すると、寄付金額から2,000円を除いた分が控除されます。ただし、上限額があるため超過しないよう要注意です。ふるさと納税の上限額は所得金額・家族構成で異なり、主に寄付した年の収入額をもとに計算します。

年によって所得金額が変動しやすい個人事業主は、控除上限額の計算が簡単ではありません。計算の際は、前年度の住民税所得割額を参考にすると良いでしょう。これは住民税のうち所得に応じて課税される金額です。

ふるさと納税で支払える額は、住民税所得割額の2割程度が上限と考えてください。住民税所得割額の金額は、住民税決定通知書で確認可能です。

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ふるさと納税を個人事業主が行うメリット

ふるさと納税には返礼品がもらえるなどの魅力があります。個人事業主がふるさと納税すると、どのようなメリットがあるか見ていきましょう。

返礼品がもらえる

ふるさと納税で、最初にあげられるメリットは「返礼品がもらえること」です。

自分で選んだ都道府県・市区町村に寄付すると、地域の特産物をはじめとした返礼品が届きます。返礼品は地域によって異なり、肉・野菜・海産物・お酒などがあげられます。ふるさと納税のポータルサイトや自治体サイトで返礼品を確認してみましょう。

手続きが難しくない

ふるさと納税は、申請にそれほど手間がかからない点も魅力です。

ふるさと納税で税金の控除を受けるには、申告が必要です。ただし、自分で所得税を納める個人事業主は、確定申告時にふるさと納税申告を加えるだけで済みます。手続きが簡単なので、気軽に申し込めるでしょう。

ただし、税理士に申告を依頼する個人事業主は、ふるさと納税の利用があると報酬が上乗せされる可能性があります。

所得税・住民税からの控除が受けられる

ふるさと納税をすると、2,000円を超えた部分の金額が所得税・住民税から引かれる控除が受けられます。寄付金額の30%までの返礼品が受け取れることと合わせれば、普通に買い物をした上で税金を納めるより少しだけお得に商品を受け取れるのです。

ただし、ふるさと納税の控除上限額は所得次第で変動します。ふるさと納税をする前に、いくらまでなら控除を100%受けられるのか必ず確認しておきましょう。

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ふるさと納税を個人事業主が行うデメリット

ふるさと納税を上手に活用するべく、デメリットにも目を向けましょう。ここからは4つのデメリットについて解説します。

会社員と違いワンストップ制度を利用できない

ワンストップ制度は、確定申告を行わず自治体に申請書を送付するだけで控除が受けられる制度です。

会社員の場合、会社で年末調整を行うため確定申告は必要ありません。ふるさと納税を利用した際、ワンストップ制度の申請書をだすだけで手続きが済みます。一方、個人事業主はワンストップ制度は使えません。

とはいえ、そもそも個人事業主には確定申告が必要です。ふるさと納税の利用時は寄付金控除欄に記入するだけで良いので、ワンストップ制度を利用できなくてもそこまで手間は生じないでしょう。

控除額の上限を把握しにくい

ふるさと納税は、年間の所得に応じて控除額の上限が決まります。年間の所得額が分かるまでは、いくらまでふるさと納税を利用できるかがわかりません。

個人事業主は所得の変動が大きい傾向にあるので、控除額の上限値を見誤ると寄付金額が控除の範囲額を超える恐れもあります。

11〜12月頃には年間所得のおおよその金額が分かります。上限額の超過を不安に感じるときは、11〜12月にふるさと納税するのがおすすめです。

控除がすぐに受けられるわけではない

ふるさと納税の控除はすぐには受けられません。ふるさと納税は、1~12月の寄付金額が控除の対象になります。ただし、ふるさと納税した際の金額は、翌年の確定申告後に所得税や住民税から控除されます。

2023年にふるさと納税した場合、所得税控除は2024年の3月以降で住民税控除は2024年6月ごろになります。控除を受けられるまでタイムラグが生じて先払いになるので注意しましょう。

控除を受けるには本人名義での決済が必要

ふるさと納税の納付はクレジットカードが利用可能です。ただし、控除を受ける本人名義のカードで決済をしなければなりません。

寄付金を支払う人とカード名義が異なると控除を受けられないので要注意です。たとえ家族名義のカードであっても控除対象になりません。

手元の資金は減る

個人事業主がふるさと納税をしても手元の資金が増えません。ふるさと納税は、寄付金額2,000円を除いた分を税金から控除する制度です。場合によっては手元の資金がショートするリスクもあります。

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ふるさと納税するときの上限額の計算方法

ふるさと納税の控除には上限額があり、超えた分の控除は受けられません。上限金額の目安を求める計算方法は「住民税所得割額×0.2」です。住民税所得割額は、毎年5~6月に自治体から送られてくる「住民税決定通知書」に記載されています。

ふるさと納税の控除上限額を求める場合は、下記の計算式を使います。住民税所得割額を自分で求める場合は「課税所得×10%」で算出可能です。

住民税所得割額×課税所得金額に応じた変数+2,000円=寄付可能上限額

各ふるさと納税のサイトには、控除上限額が分かるシミュレーションも用意されているため、活用してみましょう。

ふるさと納税の上限金額早見表

ふるさと納税の控除上限額を求める際の「課税所得に応じた変数」は所得額により変動します。以下の表をもとに、上限金額を求めましょう。

課税所得金額 課税所得に応じた変数
195万円以下 23.559%
195万円超~330万円以下 25.066%
330万円超~695万円以下 28.744%
695万円超~900万円以下 30.068%
900万円超~1,800万円以下 35.520%
1,800万円超~4,000万円以下 40.683%
4,000万円超 45.398%

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ふるさと納税の具体的な手続きの仕方

ふるさと納税の手続きの流れは以下のとおりです。

  • 控除上限額を調べる
  • 寄付する自治体を決めて申込む
  • 寄付金を支払う
  • 返礼品と寄付金受領証明書を受け取る
  • 寄付金控除の手続きをする

ここからは手続きの流れについて解説していきます。

控除上限目安額を調べる

最初に、ふるさと納税の控除上限額を把握しておくことが大切です。上限額を超えた金額の寄付辞退は可能ですが、超過分は控除に反映されません。

上限額は住民税所得割額の2割が目安です。大まかな上限額を事前に計算して、上手にふるさと納税を活用しましょう。

寄附をする自治体を決めて申込む

ふるさと納税で控除される上限額を調べたら、寄付したい自治体を決めます。

自分とゆかりがある街や応援したい地域など自由に選択可能です。返礼品の内容で自治体を決めても良いでしょう。寄付の受付目的に共感できる自治体を選ぶ人もいます。

自治体を決めたら、ふるさと納税の申込みに進みましょう。

寄附金の支払い

申込みが終わったら、指定された納付方法で寄付金を支払います。

支払い方法は、自治体によってさまざまです。クレジットカード決済をはじめ、各種キャッシュレス決済が利用できる自治体も多くあります。自治体サイトから納付方法を確認してください。

返礼品と寄附金受領証明書を受け取る

寄付金の支払いが完了したら、自治体で決められた返礼品が送付されます。返礼品の受け取り時期は、自治体や品物によって異なるようです。

季節物の特産物などの場合、ふるさと納税を申込んだ時期によっては届くまで日数がかかります。発送時期を確認したうえで申し込みましょう。

寄付をした自治体からは「寄付金受領証明書」が送られます。寄付金受領証明書は確定申告の際に必要になる書類なので、大切に保管してください。

寄附金控除の手続きを行う

ふるさと納税を利用したら、寄付金控除を受けるための手続きをします。個人事業主がふるさと納税した場合は、確定申告での申請が必要です。確定申告しないと控除が受けられないため、ふるさと納税した翌年の期限内に税務署に申告しましょう。

確定申告に必要となる書類などを準備

確定申告の前に必要な書類を準備します。必要な書類は下記の4つです。

  • 寄附金受領証明書
  • 源泉徴収票
  • 還付金受取用口座番号
  • マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類

マイナンバーカードを持っていない人は、通知カードや住民票などの番号が確認できる書類を1点、運転免許証や保険証などの身分確認書類を1点用意しましょう。

確定申告書の作成

必要な書類の準備ができたら、確定申告書を作成します。ふるさと納税した場合のポイントは以下のとおりです。

  • 寄附先から受領した寄附金受領証明書の内容を入力
  • 寄附年月日や寄附金額を入力
  • 返礼品が届いたときの経理処理は基本的に不要

確定申告の際はすべての寄付金受領証明書を揃え、申告書の寄付金控除欄に記入します。
申告書には「所得金額×40%」または「寄付金額-2,000円」のうち、少ない方の金額を記入しましょう。ふるさと納税以外に寄付がある場合は合算して記載します。

基本的に返礼品が届いた際の経理処理はしなくても大丈夫です。ただし、返礼品の合計が50万円を超えると、一時所得として課税の対象となり申告が必要となります。

確定申告書の提出

確定申告書の作成を終えたら、税務署に提出をしましょう。

紙の書類で申告をする場合は、郵送または税務署に直接持参しましょう。確定申告を行える時期は2〜3月ですが、期限近くになると窓口が混むため、早めに手続きすると良いでしょう。

窓口の混雑を避けるため、最近では郵送や電子媒体ベースの提出が推奨されています。確定申告のソフト・国税庁の「確定申告作成コーナー」を活用し、e-Taxで申告をすると、自宅で手軽に提出ができます。

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ふるさと納税は経費として扱える?

ふるさと納税は確定申告書の寄付金控除欄に記入しますが、仕訳の際はどのような勘定科目を使うのか迷う人もいるでしょう。ここでは、ふるさと納税の仕訳について解説します。

経費や寄付金としては扱われない

ふるさと納税の寄付金は、経費ではありません。

ふるさと納税は、任意で選んだ自治体に寄付して個人の所得税の還付や住民税の控除がされる仕組みです。返礼品はあくまで自治体からのお礼になります。お金を寄付して物を受け取る制度ではないため、寄付金としての仕訳はしないでください。

事業主貸として仕訳する

個人事業主がふるさと納税を使用した場合は、一時的に事業のお金を家計に貸したとして仕訳を行います。

ふるさと納税を利用した際の勘定科目は「事業主貸」です。「事業主貸」は、事業用資金を家計に使った際に区別するために使う勘定科目になります。事業主貸は会計年度中の清算が前提です。

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2023年10月からのふるさと納税の改定内容

2023年10月にふるさと納税制度が一部改正されました。改正内容を確認しましょう。

必要経費のルール厳格化

今回の改正で、必要経費にできる項目が増えました。発送費用・ワンストップ特例事務費用・仲介サイト事業者への手数料すべて・その他付随費用の項目が加わっています。

自治体は追加された項目分を含め、費用を寄付金額の50%以下にしなければなりません。そのため、返礼品の価格調整をする必要が出てきます。

地場産品の基準の厳格化

返礼品となる地場産品の基準も厳格化されます。追加された条件は下記のとおりです。

  • 熟成肉や精米の返礼品は原材料が同じ都道府県産であること
  • 他地域産の品をセットにする際、地元産が全体価格の70%であること

他の自治体や外国の肉を購入して熟成させたものや、地域産の米を精米して返礼品とすることができなくなりました。

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まとめ

個人事業主がふるさと納税する場合はワンストップ制度が利用できない・控除上限額の把握が難しいなどのデメリットがあります。しかし2,000円で返礼品をもらえるのは魅力です。

ワンストップ制度がなくてももともと個人事業主は確定申告が必要なので、手続きの負担は感じにくいでしょう。デメリットも理解した上で、ぜひふるさと納税を上手に活用してみてください。

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