Blenderは仕事につながるのか?磨いたスキルを活かすために必要なこと

最終更新日:2024年10月02日

3DCGの作成ソフトでBlenderという名前を耳にしたことがある人も多いでしょう。このBlenderは、オープンソースのフリーウェアであることからユーザー数も多く、高い人気を持つソフトと言えます。

機能面でも、有料のソフトに匹敵するほどの本格派という評価もあります。この、Blenderの技能を磨くことが仕事に結びつくのか、さまざまなアングルから、見ていきましょう。

学生にも使われているBlenderとは?

Blenderは、オランダのトン・ローセンダール(Ton Roosendaal)氏により開発されました。最初のバージョンがリリースされたのは1998年ですから、すでに20年以上の歴史を持つことになります。

現在、Blenderの開発はBlender Foundationの手によって行われています。2021年3月25日時点での最新バージョンは2.92で、開発スケジュールによると2021年8月にバージョン3が、2023年8月にバージョン4がリリースされる予定となっています。

フリーウェアということもあり、Blenderは広く使われています。小規模組織での利用に向いているという特性から、個人での利用も多く、学生の間でも人気の高い3DCGソフトです。

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Blenderができること

無料で使うことができるソフトでは、高額なソフトに比較して、できることが少ないのではないか?と思うかも知れません。しかしBlenderでできることは数多く、3DCGを制作する上で必要となる作業をほぼ網羅しています。

一般的な作業の順に、簡単に説明していきます。モデリング工程で使う三面図を作成することもありますが、これにはBlenderは使用しません。

モデリング

Blenderを使った3DCGで、最初に行うのがモデリングという造形作業です。一般には配置したイラストを下絵として線をつなげていくことでポリゴンを作成し、必要に応じて着色を行います。

Blenderには、スカルプトモデリングという機能があり、これを利用すると彫刻のようなイメージでのモデリングが可能です。スカルプトモデリングを行った場合は、リトポロジーという作業でポリゴンに置き換えることになります。

リギング

モデリングで作成したキャラクターや、動くものには骨を設定する作業をリギングと言います。キャラクターであれば手足や首の動きを加えることで、より本物に近い動きを実現することができます。

キャラクターを作る場合には、目を動かすといった機能を作成することもあります。骨を設定するわけではありませんが、これもリギングに含まれます。

リギングを行うことで、アニメーションを行う準備が完了します。

アニメーション

Blenderでのアニメーションとは、静止した状態の絵に動きをつける作業のことを言います。モデリングしたキャラクターにとどまらず、すべての動くものがアニメーションの対象です。アニメーション作業をサポートする各種機能も充実しています。

風で旗をなびかせる、水を流す、炎を燃やして煙をあげるなど、静物の変化を盛り込むシミュレーションという作業も、Blenderで行うことができます。

このように、Blenderは3DCG作成に関係する、あらゆる場面の作成に対応する機能を持つソフトなのです。

ライティング

CGの空間には本来備わっていない光を入れ込む作業を、ライティングと言います。3DCGの仕上がりを左右する大切な作業が、このライティングです。

Blenderには、多種のライトが備わっています。これらを駆使することで、たとえばおよそ現実には存在しないような、幻想的な世界を作り上げることができます。太陽光をシミュレーションするなどして、現実世界を思わせるような場面に仕上げることも、もちろん可能です。

レンダリング

ここまでで作り上げた3DCGを、静止画として書き出す作業をレンダリングと言います。

CGアニメーションは、レンダリングで出力した静止画を1秒間に30枚連続して映し出すことで動画となります。パラパラまんがをイメージするとわかりやすいでしょう。

レンダリングという処理では、複雑な計算を行ってたくさんの静止画を出力します。そのため、CGの種類によっては、処理に高い負荷がかかることがあります。

ここまでが、3DCG作成に関わる一連の作業で、それらすべてをBlenderで完結することが可能です。有料ソフトに引けをとらないという評価をBlenderが得ているのも、納得できるところではないでしょうか。

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Blenderのアドバンテージ

それでは、Blenderの優れた点とはどのようなものなのでしょうか。導入検討時、機能面、利用時、それぞれについて見てみましょう。

導入検討時

Blenderはフリーソフトです。無料での利用が可能ということは、大きなアドバンテージであると言えるでしょう。メジャーな3DCGソフトには高額なものも多く、ここは非常に魅力的に映るはずです。

多くのプラットフォームに対応していることも、Blenderの特長です。WindowsやmacOS、LinuxについてはMayaも対応していますが、Mayaが未対応であるSolarisおよびIRIXといった、UNIX系OSへの対応も行っています。

無料で使え、他のソフトに比べても多くのプラットフォームに対応しているBlenderは、導入しやすいソフトであると言えるでしょう。

機能面

モデリングからレンダリングに至る3DCG作成工程のすべてを、Blenderのみで行うことができます。これらの機能はすべて無料で利用可能です。

さらに、Blenderは動画編集にも対応しています。無料でありながら、高機能なソフトと言えるでしょう。機能や操作を覚えてしまえば、何でも作ることができるという評価は、決して大げさなものではありません。

利用

Blenderの基本言語は英語なのですが、有志により日本語対応がされています。操作を覚える時はもちろん、不明点が発生した時にも日本語で調べられる部分がそれなりにありますので、英語が苦手な人には、大きなメリットを感じることができそうです。

またBlenderは、サードパーティー製のツールが充実しています。制作に必要な各種の機能へのアクセスも良好であり、自分にあったツールを選択することも可能です。

Blenderは、初心者からプロフェッショナルまでの幅広いユーザーに利用されています。ここまで述べてきたように多機能かつ高機能なソフトが、無料で使えるのですから、多くの支持を集めることは自明でしょう。

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Blenderの利用シーンは?

さて、3DCG業界あるいはアニメーション業界における主流のソフトは、これまでも何度か名前が登場したMaya、あるいは3ds Maxです。それでも、近年におけるBlenderの機能面での強化が評価され、利用を増やしていこうという企業も増えてきました。

2021年3月に公開されたアニメーション映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版:II」の制作では、一部でBlenderが用いられています。制作会社では、Blenderの開発基金に賛同し、開発体制をサポートすることを表明しました。

日本に比べ海外で、Blenderを積極的に利用しようとする動きが顕著であると言えます。たとえば、2018年に公開されたSFアクションアニメーション映画「ネクスト ロボ」の制作では、Blenderが全面的に利用されました。

ファーストパーソン・シューティングゲームで知られるUbisoft Animation Studioでは、2020年から社内の3Dソフトウェアを、全面的にBlenderに移行するとアナウンスしています。3DCGやアニメーション業界において、Blenderの利用シーンは着実に広がっていると言えるでしょう。

近年、CGや映像に関わる仕事は増加傾向にあり、Blenderを利用した3Dモーション、あるいはCGキャラクター制作という、クリエイター向け求人が出ていることもあります。これからのことを考えれば、Blenderで作品を制作できる技術は、仕事に携わるチャンスを広げていく可能性はあると言えるでしょう。

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実際のBlender案件動向

気になるのが、実際に市場では、Blenderの案件が出ているのかどうか、ということです。そこで、フリーランスHubの、Blenderの求人・案件一覧を見てみましょう。

2021年3月28日時点で、該当する案件は8件のみです。該当案件はクリエイターではなくディレクターの求人です。他のエージェントサイトでも、求人数が多いとは言えません。これらを見る限りでは、Blender利用のクリエイターとしての採用は、かなり厳しいと考えるべきなのかも知れません。

とはいえ、フリーランスHubでは、Blenderは独立したスキルとして検索することができます。Blenderを利用したクリエイター求人が今後、出てくる可能性はあると考えてもよさそうですが、現時点ではBlenderの経験が即就職に結びつくことは、限られた範囲でしかないと認識すべきでしょう。

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Mayaとの関係は?

3DCGを制作するソフトとして、主流はやはりAutodeskのMayaであることは、衆目の一致するところでしょう。

Mayaは、世界的なクリエイティブ企業にも採用されています。日本国内でも、多くのクリエイティブ企業がMayaを導入しており、3DCG制作の業界標準ソフトと言えるのではないでしょうか。アニメーションだけでなく、ゲームやスマホアプリなどの身近なコンテンツでも、3DCG制作にはMayaが広く利用されています。

Mayaが誇るのはその圧倒的なシェアの高さで、日本におけるクリエイティブ企業での3DCGソフト利用率トップはMayaです。同じAutodesk社の3ds Maxが少し遅れて2位になっていますが、3位以下には大きな差をつけています。

Mayaは、それのみでモデリングやリギングからレンダリングまでの、3DCGの制作を完結させることができます。多種のツールも搭載されていますし、スクリプトでの機能拡張に強みを持ちます。ある程度のプログラミングスキルが要求されますが、スクリプトを活用することで、より高度な制作への対応も可能になります。

また、広く使われるMayaだからこその大きなメリットが、アニメーション制作やビジュアルエフェクツといった、技術面でのチュートリアル動画の多さです。このことは、迅速な技術習得に大いに役立つと言えるでしょう。

制作中に疑問点が発生した時や、問題が発生した場合に必要となる、解決策へのアクセスのしやすさもMayaならではと言えそうです。通常は、検索することで同様の、あるいは類似の問題を見つけることができます。さらに、得られる情報の多くは日本語です。解決に時間と手間を必要としないことは、クリエイターにとっては非常に大きなメリットとなるでしょう。

一方でBlenderに関しては、機能面ではMayaに大きく劣るということはないと言ってもいいでしょう。ただし、日本でのシェアが決して大きくはないことから、さまざまな情報の蓄積がMayaに比較するとどうしても少なくなってしまいます。

Mayaと比較すれば、チュートリアルなど技術習得用の教材も少ないです。情報が少ない分、問題発生時に解決策を得るスピードは、どうしてもMayaより劣ってしまうことは、やむを得ないところでしょう。

とはいえ、クリエイティブ企業でも、制作過程で外注に出さない会社などを中心にして、Blenderの導入率が徐々に上昇していることは、各種の調査からでも読み取ることができます。無料で使用でき、機能的にもMayaあるいは3ds Maxといった有名なソフトと遜色がないBlenderの魅力は、浸透しつつあると言えそうです。

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Blenderにこだわる人へのアドバイス

3DCGの世界で最初に使ったソフトがBlenderであった、あるいはBlenderで技術をかなり高いレベルまで磨き上げてきたといった理由で、Blenderにこだわりたい人もいるでしょう。残念ながら、現実としては、Blender「だけ」を武器にしても、就職に結びつくことはほとんどない、と考えたほうがよさそうです。

特に日本で顕著ですが、3DCGの制作現場で一番使われているソフトはMayaです。無料で使えて機能も遜色なくなっているBlenderへの乗り換えが進まないのは、Mayaで作り上げた資産の蓄積があります。他のソフトへの乗り換えにはこれら資産の移行に伴う負担が大きく、高額な利用料金が必要であっても、Mayaの継続利用が合理的と判断されるケースが多いことも背景にあります。

しかし、Blenderで磨いてきた技術がまったく無意味かと言うと、決してそのようなことはありません。3DCG作成の工程は、使うソフトがBlenderであろうと、Mayaであろうと同じです。Blenderを使いこなせて高水準の作品を作り上げる人と、Mayaを使いこなせても凡庸な作品しか作り出せない人とでは、採用側にも前者のほうが魅力的に映るものです。

この場合、企業が求めるMayaの操作スキルは、ベーシックなもので足りるでしょう。Mayaの最低限の操作を身につけることで、可能性はぐっと広がります。

さて、Mayaを習得する際に気になるのが、金銭的な負担です。1ライセンスあたり、年額で300,000円近くというのは、気軽に払える金額ではありません。

しかし、Mayaを無料、あるいは低額で利用する方法があります。学生には、教育関係者のライセンスが用意されていますので、これを利用しましょう。費用はかかりません。

現在学生でない人も、あきらめる必要はありません。2020年8月にリリースされたインディーライセンスを利用すると、年額40,700円と正規ライセンスに比較してかなり安価にMayaを使うことができます。

こういったライセンスを利用することで、ベーシックなMayaのスキルを身につけることができます。可能性を広げるためにも、積極的に利用していきましょう。

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使うソフトが何かより、制作への理解が重要

ここまで見てきたように、Blenderは有料のハイエンドソフトに匹敵する機能を持ちながら、無料で利用できる優秀なソフトです。

今後、Blenderを導入する企業は、増加していくことでしょう。とはいえ、過去に蓄積した資産の移行や、外注でMayaあるいは3ds Maxを利用している企業とのやりとりもありますから、急激な導入が進むかと言うと、それは難しいでしょう。

さて、どのソフトが使えるか?が仕事を決める上で重要である、と考える人も多いものです。それは決して間違いではありません。しかし、本当に求められているのは、ソフトを使いこなすことではなく、3DCGの世界であれば、優れた作品を作り上げることなのです。

3DCGのソフトの基本的な考え方は、ほぼ共通しています。表面的な操作ではなく、制作工程での考え方を身につけたいものです。

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