個人事業主が払う税金は?経費と控除を押さえた節税対策10選を紹介

最終更新日:2024年10月30日

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この記事のまとめ

  • 個人事業主は所得税、住民税、消費税、事業税の4つの税金を納める必要がある
  • 個人事業主の税金は収入や経費、控除などによって計算され、青色申告、各種控除の活用、小規模企業共済やiDeCoへの加入など節税対策も重要となる
  • 2023年10月からはインボイス制度が開始され、課税事業者と免税事業者それぞれにメリットとデメリットが生じるため、適切な対応が必要となる

個人事業主は、毎年確定申告をして税金を納めなければなりません。しかし、「どの種類の税金をどのくらい納めるのかよく分からない…」という人も多いでしょう。

この記事では、個人事業主が納める4種類の税金と計算方法について説明します。多様な控除を上手に活用していくことで、節税につながるでしょう。また、税金が非課税となるケースや、2023年に導入されるインボイス制度についても解説します。

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個人事業主が納めるべき4つの税金

個人事業主が納める税金は、「所得税、復興特別所得税」「住民税」「 消費税」「個人事業税」の4つです。それぞれの税金の仕組みや計算方法、非課税となる要件について説明します。

所得税

所得税は、毎年1月1日から12月31日の期間に得た収入から、経費を差し引いた所得に課税される税金です。所得には、事業所得のほかに不動産所得、譲渡所得、雑所得などがあります。所得の合計から基本控除や扶養控除などの所得控除額を差し引いたものが課税所得です。

課税所得に対して税率をかけた値から税額控除を差し引くと、基準所得税額が求められます。ここから源泉徴収分などを差し引いた金額が実際の納付額です。所得税には累進課税制度が採用されており、課税所得の金額に応じて5%から45%の税率が定められています。

また、2013年分から2037年分の所得税には、東日本大震災の復興支援の財源として、復興特別所得税が課せられています。金額は基準所得税額の2.1%です。

住民税

住民税は、都道府県、および市区町村に納める税金です。確定申告の内容を基に税額が決定され、市区町村から住民税課税決定通知書が送られてきます。一括もしくは年4回に分けて納税します。

住民税の内訳は、所得に応じて納税額を定める「所得割」と、所得に関わらず定額で定められた「均等割」の2つです。所得割は、課税所得に対して市区町村税の6%と、都道府県税の4%を合わせた10%を乗じて計算されます。

課税所得が200万円なら、所得割は20万円。均等割は、通常5,000円(都道府県税が1500円、市区町村税が3500円)です。2014年から2023年まで、それぞれに特別復興税500円が加算されています。

消費税

消費税は、商品やサービスの消費に対して支払われる税金です。個人事業主の場合、売上時に受け取った消費税分から、仕入れ等に支払った消費税分を差し引いた金額を納税します。

消費税の課税事業者となるのは、2年前の売上が1000万円を超えた時点です。これを基準期間といいます。ある年の売上が1000万円を超えたら、税務署に消費税課税事業者届出書を提出し、その2年先の年度から消費税の納税が始まります。

ある年の売上高が前期(1月から6月)で1000万円を超えた場合は、同様に消費税課税事業者届出書を提出し、次年度より消費税を納税します。

事業税

個人事業税は、地方税法等で定められた事業・法定業種にかかる税金です。対象となる事業は都道府県別に定められており、東京都では70の業種が指定されています。業種に応じて、3~5%の税率がかかるのが特徴です。

該当業種は幅広く、対象外となるのは一部の文筆業(作家や漫画家)やプログラマー、Webライターなどごく限られた業種です。個人事業税も確定申告の内容を基に計算され、申告後税務署から通知書と納付書が送られます。

なお、個人事業税には一律290万円の事業主控除があり、年間の事業所得がこの金額を下回る場合は納税の必要はありません。また、事業税は租税公課として必要経費の対象となります。支払った場合は確定申告時に経費として計上可能です。

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個人事業主の税金はいくらになる?【計算方法】

ここでは、個人事業主の所得税について実際の計算方法をご説明します。課税所得の計算方法、経費や各種控除の種類、累進税率、税額控除についても見ていきましょう。

収入額を計算する

所得税は、その年の1月1日から12月31日までの間に得た収入から必要経費を引いた所得に基づいて計算します。ただし、その年に収入として受け取っていない売掛金や未回収金も、期間内に商品を渡すなど業務の提供が行われていれば、収入に計上する必要があります。

なお、前々年度の事業所得、不動産所得の合計が300万円以下の小規模事業者については、例外的に現金主義による収入計算が認められています。その場合は、事前に青色申告承認申請と現金主義の所得計算による旨の届出が必要です。

必要経費や各種控除を差し引く

収入総額から必要経費や各種控除を差し引くと、課税所得が求められます。個人事業主の場合は、事業に必要なPCや原材料の購入費、事業所の家賃、租税公課は必要経費として認められやすいでしょう。

一方で、交通費や出張の宿泊料、接待交際費は、領収書などに但し書きを記載する必要があります。事業のための支出である旨を明確にする必要があるためです。各種控除には以下のものがあります。

  • 基礎控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 社会保険料控除
  • 生命保険料控除
  • 医療費控除
  • 寄付金控除

これらを駆使すれば節税効果が得られます。自分がどの控除を受けられるか、事前に確認しておきましょう。

所得税を計算する

課税所得に対して、税率を乗じることで所得税が計算されます。

日本では、超過累進課税制度が採用されています。一定の範囲毎に税率が定まっている累進課税制度です。実際の計算では、所得金額×税率ー控除分として低い税率部分を差し引く所得税の速算表が用いられます。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 194万9,000円まで 5% 0円
195万円 から 329万9,000円まで 10% 9万7,500円
330万円 から 694万9,000円まで 20% 42万7,500円
695万円 から 899万9,000円まで 23% 63万6,000円
900万円 から 1,799万9,000円まで 33% 153万6,000円
1,800万円 から 3,999万9,000円まで 40% 279万6,000円
4,000万円 以上 45% 479万6,000円

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個人事業主がやっておきたい節税対策【経費】

個人事業主は自分で確定申告を行い、所得税などを納めます。税に関する知識や計算方法を正しく把握することで、適正な税申告ができるでしょう。ここでは、主に経費について節税につながるポイントをご紹介します。

経費にできる支出を確認

個人事業主の支出は事業とプライベートの境界が曖昧になりやすく、経費の判断に迷う場合があります。たとえば、従業員のための健康診断費用は経費ですが、事業主本人の健康診断費用は個人に関わる出費と判断され、経費にはできません。

経費とは、「事業にまつわる支出」です。したがって、経費として認めてもらうには、事業のための支出であることを主張できる正当性が必要です。

交通費や接待交際費なども、「領収書にいつ、どのような目的で利用したのか」「事業のどこに関連するのか」を証明できる但書をつけましょう。事業にかかわる支出であることを証明できるようにするためです。

事業規模に対して常識的に過大な支出は、指摘を受けた場合経費として認められない可能性があります。たとえば、100万円の収益が見込まれる事業の支出として数十万円の接待交際費を計上するなどです。常識の範囲を逸脱した経費計上は避けましょう。

家事按分を必要経費に計上

個人事業主が自宅を事務所としている場合、自宅に関する家賃や光熱費等を家事按分として必要経費に計上できます。通信費や自動車関連の費用も同様です。

自宅のうち事務所として使用している面積が全体の40%程度なら、自宅の家賃や水道光熱費、通信費などのうち、40%を必要経費として計上できます。

家事按分も当然ながら常識の範囲内で行い、税務署から指摘を受けた際にその正当性を主張できなければいけません。家事按分の割合を70%や80%で計算するなど、常識から逸脱した計上の仕方をしないことが大切です。

中小企業倒産防止共済に加入

中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)は取引先の倒産などに伴い、自分の事業が連鎖的な経営難に陥ることを防ぐために設けられている制度です。掛金は5000円から20万円の間で設定でき、その全額が経費として計上できます。

取引先の倒産によって売掛金の回収ができなくなった場合、納付した掛金の10倍あるいは回収不能となった売掛金債権額の少額の金額まで、無担保・保証人なしで借入が可能になります。経営リスクに備えながら経費計上が可能なため、有効な節税手段だといえるでしょう。

短期前払費用の特例を活用

短期前払費用とは、継続的なサービス利用に支払った費用のうち、事業年度内でその提供を受けていない分を指します。たとえば、不動産の賃料や保険料、電子書籍の定期購読料などです。

通常、前払費用はいったん資産として計上して、サービスの提供を受けたのちに経費として計上されます。しかし、一定の条件を満たした前払費用については、その事業年度内に経費計上が可能です。

要件は、「費用の支払日から1年以内にサービスの提供を受けること」「事業年度内に支払いが完了していること」「継続してサービスの提供を受けること」などが挙げられます。

保険料を毎年7月に一括に支払っている場合、通常は7月から12月分までが経費計上できる範囲です。毎年一括支払いをして1年以内に提供を受けることが定まっているなら、年度内に支払った保険料を全額経費に計上できます。

固定資産税を一括償却

通常、10万円以上の物品を購入すると、固定資産として年間の経費にはその減価償却分が計上されます。しかし、少額減価償却資産の特例を活用すれば、購入した固定資産の費用を一括で年度内に計上可能です。

対象は青色申告をしている中小企業や個人事業主で、事業年度ごとの上限は300万円です。確定申告時に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付するか、青色決算申告書にその旨を記載することが条件となります。

なお、少額滅却資産の特例は令和4年度改正の際に2024年3月31日まで延長されています。

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個人事業主がやっておきたい節税対策【控除】

個人事業主を対象とした節税対策として、以下の4つが挙げられます。

青色申告をする

個人事業主は、白色申告と青色申告のどちらかを選択可能です。青色申告は書類や帳簿の作成難易度が高い分、有利な控除が受けられます。便利なソフトウエアが増えて書類作成の難易度が下がっていることを考えると、青色申告を活用するのが望ましいでしょう。

青色申告には、以下のメリットがあります。

  • 最大65万円の特別控除を受けられる
  • 親族専従者の給与を経費として計上できる
  • 10万円以上30万円未満の事業に必要な物品購入について一括で経費計上できる
  • 赤字を3年繰り越せる

青色申告を行うには、所轄税務署に開業届を提出し、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。

所得控除を受ける

一定の条件を満たすことで、課税所得から差し引かれる控除があります。控除の種類と適用要件を正しく把握しておきましょう。課税所得の控除は、所得税だけでなく住民税にも適用されます。

医療費控除は、年間医療費が10万円を超える場合に適用されます。健康維持のための取り組みの経費を控除対象とする「セルフメディケーション税制」を活用すると、医療費控除の代わりに申告可能です。

小規模企業共済に加入する

小規模企業共済とは、国の機関である中小機構が運営する、小規模事業の経営者や個人事業主のための積み立てによる退職金制度です。掛金が全額所得控除の対象となるため、高い節税効果があります。

月々の掛金は千円から7万円の間で設定できるため、退職、廃業時の備えとして貯蓄しながら所得控除を受けられるのがメリットです。一括の支払いであれば、退職金として退職所得控除の対象となります。分割の場合でも、年金などと同様に公的年金等控除の対象となるため、受取時にも税制上の優遇措置があります。

ただし、個人事業主と会社員を兼業している場合は、小規模企業共済への加入ができないため注意しましょう。

iDeCoで年金積み立てをする

iDeCoは私的年金制度の一つで、公的年金とは別に給付を受けられます。公的年金との違いは、加入が任意であることです。申込や掛金の運用を自身で行い、掛金と運用益の合計を元に給付を受け取る点も異なっています。

加入するためには、iDeCoを取り扱う金融機関などの運営管理機関で手続きします。運用のための商品や手数料は管理運営機関ごとに異なります。注意すべき点は、自身で金融商品に掛金を投資するため、元本割れの可能性があることです。また、原則60歳まで引き出せないなど、通常の金融商品と異なる点もあります。

個人事業主は厚生年金に加入できないため、国民年金に上乗せできるiDeCoを活用することは、節税に加えて将来の安定につながるでしょう。また、掛金全額が所得税控除の対象であり、運用益が非課税となるのも魅力です。

ふるさと納税をする

ふるさと納税は、自分の選んだ自治体に寄付を行い、その際自己負担分の2000円を除いた寄付金分が所得税と住民税から控除される仕組みです。厳密な意味での節税ではありませんが、上手に活用すると負担分2000円で返礼品を受け取れます。

ふるさと納税は、所得税と住民税に適用される控除の限度額が決まっており、個人事業主の場合、単純に年収からではなく実際の課税所得や受けている所得控除によって金額が異なります。また、ワンストップ制度は利用できないため、ふるさと納税の控除は確定申告時に申請が必要です。

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個人事業主が免税になるケースは?

経営状態が苦しい場合や、経費がかさんでいる場合には、税金が非課税になるケースがあります。ここでは、3つのケースについて解説します。

所得税・住民税が免税になるケース

所得税、および所得税額が免税になるのは、課税所得に対して各種控除を適用して、それがマイナス収支になってしまうケースです。知っておきたいのは、収益が低下して赤字が発生した場合、青色申告ならばその赤字分を3年間繰り越せるという点です。

たとえば、事業開始当初に赤字が続いたものの、数年後に収益化に成功した場合には、この赤字の繰り越しを行うことで税金の負担を抑えることができます。

ただし、不動産所得、譲渡所得については、赤字の繰り越しに一定の条件がつきます。また、利子所得や退職所得のように、赤字が想定されていない所得は繰り越しできません。

事業税が免税になるケース

事業税は、事業主控除として290万円が差し引かれるため、事業所得が290万円未満の場合は免税になります。営業期間が1年に満たない場合は、この290万円の控除が月割で適用されるのがポイントです。また、青色申告者の過去3年間の赤字や被災事業用資産の損失、譲渡損失については繰り越して控除の対象となります。

消費税が免税になるケース

消費税が免税となるのは、年間の課税売上が1000万円を超えない場合です。この場合、免税事業者となり消費税の納入は免除されます。

さらに、売り上げの消費税額より仕入れなどの経費の消費税額が上回った場合も、消費税の納税は免除されます。先述のとおり、免税事業者であることは有利に思えますが、インボイス制度の影響で課税事業者から敬遠される可能性もあるでしょう。 また、株などの不課税取引による所得は課税売上には含まれません。

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2023年(令和4年度)確定申告での3つの変更点

確定申告では、毎年いくつかの変更点が提示されます。ここからは、2023年(令和4年度)の確定申告における変更点についてまとめます。

まず、確定申告書Aが廃止され、従来の申告書Bの形式に統一されました。もともと、確定申告書Aは給与所得の方が医療費控除や年金との兼ね合いで申告する際に使われていましたが、書式として一本化されます。

また、申告書第一表に修正申告欄が追加され、従来の修正申告で必要とされていた修正申告書(第5表)が廃止されました。

さらに、収支内訳書が雑所得(業務)の申告に対応します。白色申告の場合、副業などの継続的な雑所得で前々年度の売上が1000万を超えていると、収支内訳書の提出が必要です。

2023年10月から開始!インボイス制度の影響は?

2023年10月より「適格請求書保存方式」、いわゆるインボイス制度が始まります。これは、「適格請求書」を発行・保存することで正しく消費税額を計算し、適正な控除を受けるための仕組みです。個人事業主にも影響があります。

課税事業者である場合のメリット・デメリット

課税事業者となることの最大のメリットは、適格請求書を交付できる点です。適格請求書を使用した取引では、取引先が仕入れ税額控除を行えます。取引先との間で信頼関係を築くのに有効だといえるでしょう。

一方で、課税事業者となった場合には消費税を納付する必要があります。課税事業者同士の取引の場合には、仕入れ税額控除が適用できますが、消費税が適用される場合には申告が必要です。大変だと感じる方も多いでしょう。

免税事業者のままでいるメリット・デメリット

免税事業者のままでいるメリットは、消費税納付をしなくて済む点です。この点を重視して、事業規模を1000万円以下に抑えたい個人事業主も多いでしょう。

しかし、インボイス制度によって免税事業者には新たなデメリットが生じます。適格請求書発行事業者となれるのは課税事業者のみです。つまり、免税事業者のままでいると取引先は消費税分についての控除が受けられません。これにより、取引を停止されたり、該当消費税分の割引を求められたりといったリスクが想定されます。

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まとめ

本記事では、個人事業主の税金について解説しました。 税についての知識は、節税だけでなく事業の規模や将来の展開にも大きく関わります。

個人事業主は多くを自分でやらなければならず、負担が大きくなりがち。帳簿作成や税申告などの事務処理を適切に行うためにも、税について正しい知識を身につけることが大切です。

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