最終更新日:2025年09月29日
「個人事業主が支払う税金の種類や想定額を知りたい」と考えている方もいるでしょう。個人事業主が納めるべき税金の知識を深めることは、正確な納税や節税につながるため重要です。 本記事では、個人事業主が支払う税金の種類や計算方法・シミュレーションを紹介します。また、税金対策や個人事業主にも関わりが深いインボイス制度についても解説しているので、ぜひご覧ください。
360,000件の中から 希望に合う案件を探せる
個人事業主が納めるべき主な税金は所得税・住民税・消費税・個人事業税の4つで、状況によっては固定資産税や不動産取得税、自動車税、印紙税などが発生します。
ここでは、個人事業主が納める主な税金である所得税・住民税・消費税・個人事業税について解説します。
個人事業主が納税する税金の一つは、所得税です。
所得税は、毎年1月1日から12月31日の期間に得た収入から経費を差し引いた所得に課税される税金です。所得は、事業所得のほかに不動産所得や譲渡所得、雑所得などが該当します。所得の合計から基本控除や扶養控除などの所得控除額を差し引いたものが課税所得です。
所得税の税率には「超過累進課税」が採用されており、課税される所得金額によって5%~45%の税率が適用されます。
また、2013年分から2037年分の所得税には、東日本大震災の復興支援の財源として、復興特別所得税が課せられています。復興特別所得税の金額は基準所得税額の2.1%です。
出典:
国税庁 「所得税のしくみ」
国税庁 「個人の方に係る復興特別所得税のあらまし」
個人事業主が納める税金には、住民税(個人住民税)が挙げられます。
住民税は、都道府県および市区町村に納める税金です。確定申告の内容を基に税額が決定され、6月ごろに市区町村から住民税課税決定通知書が送られてきます。
個人事業主の住民税の納付方法は、基本的に普通徴収です。住民税は一括もしくは分割払いが可能です。一括で支払う場合は6月にまとめて納付します。分割払いの場合は、6月・8月・10月・1月の4回に分けて支払います。
出典:
総務省 「個人住民税」
個人事業主が納める税金の一つは、消費税です。
消費税は、商品やサービスの消費に対して支払われる税金です。個人事業主の場合、課税売上にかかる消費税分から仕入れなどにかかる消費税分を差し引いた金額を納税します。
消費税の課税事業者となるのは、基準期間(個人事業主の場合、原則として前々年)の課税売上高が1,000万円を超えた場合です。また、免税事業者に該当する場合も消費税課税事業者選択届出手続を行うことで課税事業者になることが可能です。
個人事業主の消費税について詳しく知りたい方は、「個人事業主が消費税を払う条件は?申告・計算方法や免除されるケースを解説」もご覧ください。
出典:
国税庁 「D1-7 消費税課税事業者届出手続(基準期間用)」
国税庁 「D1-8 消費税課税事業者届出手続(特定期間用)」
国税庁 「D1-4 消費税課税事業者選択届出手続」
個人事業税は、個人が営む事業のうち、地方税法で定められた法定業種(事業)に対して課税される税金です。法定業種には第1種事業(37業種)、第2種事業(3業種)、第3種事業(30業種)があります。業種に応じて、3~5%の税率がかかります(税率は都道府県によって若干の違いがある可能性があります)。
個人事業税には、繰越控除と290万円の事業主控除があります。
原則8月に都税事務所・支庁から個人事業税の納税通知書が送付され、8月と11月の年2回の各納期限までに納税します。
出典:
東京都主税局 「個人事業税」
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取る個人事業主の税金は計算方法が決まっているため、事前にシミュレーションが可能です。個人事業主が納める税金について事前にシミュレーションしておくことで、納付時期に焦ることなくスムーズに納税できます。
ここでは、個人事業主が納める税金である所得税・住民税・消費税・個人事業税の計算方法とシミュレーションを紹介します。
所得税の納税額は下記の計算式で求められます。
所得金額=収入金額-必要経費等
課税所得額=所得金額-所得控除額
所得税の金額=課税所得額×税率
所得税の税率には、一定の金額を超えた額に対して異なる税率を適用する「超過累進課税」が採用されています。所得税の税率は以下のとおりです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円 から 329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
330万円 から 694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
695万円 から 899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
900万円 から 1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円 から 3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円 以上 | 45% | 479万6,000円 |
たとえば、課税所得額が400万円の個人事業主の場合、納める所得税の金額は以下の計算で算出できます。
所得税の金額=4,000,000円×0.2-427,500円=372,500円
出典:
国税庁 「所得税のしくみ」
国税庁 「No.2260 所得税の税率」
住民税(個人住民税)は道府県民税と市町村民税で構成されています。住民税には所得割と均等割があり、2つを合計した金額が納税する住民税の金額となります。
住民税の所得割の税率は基本的に10%(道府県民税が4%、市町村民税が6%)で、前年の1月1日から12月31日までの所得が対象です。
住民税の均等割の税額は基本的に4,000円(道府県民税が1,000円、市町村民税が3,000円)です。また、2024年度から均等割に加えて森林環境税の1,000円が徴収されます。
住民税の所得割額の計算方法は下記のとおりです。
所得金額=収入金額-必要経費等
課税所得額=所得金額-所得控除額
所得割額=課税所得額×税率-税額控除額
住民税の金額は、以下のように求めた所得割額と均等割額・森林環境税を合計して計算します。
住民税の金額=所得割額+均等割額+森林環境税
たとえば、課税所得額が350万円、寄附金税額控除が2万円、調整控除が2,500円であるケースにおいて、個人事業主が納める住民税は下記の計算で求められます。
所得割額=3,500,000円×0.1-22,250円=327,750円
住民税の金額=327,750円+4,000円+1,000円=332,750円
出典:
総務省 「個人住民税」
消費税は複数税率であり、税率はそれぞれ標準税率の10%と軽減税率の8%です。消費税を計算する際は、税率ごとに区分して計算します。
消費税の主な計算方法は、「原則課税方式(一般課税方式)」と「簡易課税制度」です。また、インボイス制度の導入にあたって、条件を満たした人を対象に「2割特例」が用意されています。
税負担が少なくなる計算方法は、個人事業主としての事業内容や規模、経理負担の許容度、実際の仕入れ税額などによって変動するため、状況に応じた計算方法を選びましょう。
原則課税方式の計算方法は下記のとおりです。課税仕入れ等にかかる消費税額を控除するためには、インボイス(適格請求書)が必要です。
消費税額=課税売上にかかる消費税額-課税仕入等にかかる消費税額
たとえば課税売上高が1,000万円、課税仕入額が600万円で、ともに標準税率が適用される場合に個人事業主が納める消費税額は以下の計算で求められます。
消費税額=1,000,000円-600,000円=400,000円
簡易課税制度の計算方法は以下のとおりです。インボイスがなくても採用できる計算方法で、事業区分で定められたみなし仕入率を使って計算します。
消費税額=課税売上にかかる消費税額-(課税売上にかかる消費税額×みなし仕入率)
事業の区分 | みなし仕入率 | 事業の種類 |
---|---|---|
第1種事業 | 90% | 卸売業 |
第2種事業 | 80% | 小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業に限る) |
第3種事業 | 70% | 農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業および水道業 |
第4種事業 | 60% | 第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業 |
第5種事業 | 50% | 運輸通信業、金融業および保険業、サービス業(飲食店業に該当するものを除く) |
第6種事業 | 40% | 不動産業 |
事業区分が第4種事業にあたる事業を1つのみ行っていると仮定したケースにおいて、計算例を示します。
たとえば課税売上高の合計が500万円で、そのうち標準税率10%が適用される課税売上高が300万円、軽減税率8%が適用される課税売上高が200万円だった場合、課税売上にかかる消費税額は「30万円+16万円」で合計46万円です。第4種事業のみなし仕入率60%を適用し、以下のように個人事業主が納める消費税を算出します。
消費税額=460,000円-(460,000円×0.6)=184,000円
2割特例とは、免税事業者から課税事業者(インボイス発行事業者)となる小規模事業者向けに敷設されている、消費税に関する負担軽減措置です。2023年10月1日から2026年9月30日までの各課税期間に、事前の届出なしに適用できます。
2割特例の計算方法は下記のとおりです。
消費税額=課税売上にかかる消費税額-(課税売上にかかる消費税額×80%)
たとえば、課税売上高が300万円で標準税率10%が適用される場合、個人事業主が納税する消費税は下記の計算で求められます。
消費税額=300,000円-(300,000円×80%)=60,000円
課税売上高に関する詳細や注意点について知りたい場合は、「課税売上高とは?算出方法や納税の判断基準、必要な手続きなどを解説」の記事をご覧ください。
出典:
国税庁 「消費税のしくみ」
国税庁 「No.6505 簡易課税制度」
国税庁 「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」
個人事業税の納税額は、下記の計算式で求められます。
事業所得の金額=事業による総収入金額-必要経費等
課税所得額=事業所得の金額+青色申告特別控除額-各種控除の金額
個人事業税の金額=課税所得額×税率
個人事業税の法定業種と税率は下記のとおりです。
事業の区分 | 適用税率 | 事業の種類 |
---|---|---|
第1種事業 | 5% | 物品販売業、運送取扱業、料理店業、遊覧所業、保険業、船舶定係場業、飲食店業、商品取引業、金銭貸付業、倉庫業、周旋業、不動産売買業、物品貸付業、駐車場業、代理業、広告業、不動産貸付業、請負業、仲立業、興信所業、製造業、印刷業、問屋業、案内業、電気供給業、出版業、両替業、冠婚葬祭業、土石採取業、写真業、公衆浴場業(むし風呂等)、電気通信事業、席貸業、演劇興行業、運送業、旅館業、遊技場業 |
第2種事業 | 4% | 畜産業、水産業、薪炭製造業 |
第3種事業 | 5% | 医業、公証人業、設計監督者業、公衆浴場業(銭湯)、歯科医業、弁理士業、不動産鑑定業、歯科衛生士業、薬剤師業、税理士業、デザイン業、歯科技工士業、獣医業、公認会計士業、諸芸師匠業、測量士業、弁護士業、計理士業、理容業、土地家屋調査士業、司法書士業、社会保険労務士業、美容業、海事代理士業、行政書士業、コンサルタント業、クリーニング業、印刷製版業 |
第3種事業 | 3% | あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復 その他の医業に類する事業、装蹄師業 |
個人事業税額の計算シミュレーションを、第1種事業にあたる飲食店業を個人事業主として1年間以上営んでいるケースを想定して示します。
たとえば事業所得が600万円で、青色申告特別控除額が最大の65万円、事業主控除が290万円の場合、課税所得額は375万円です。第1種事業の税率5%を適用し、以下のように個人事業税の納税額が計算できます。
個人事業税の金額=3,750,000円×0.05=187,500円
出典:
東京都主税局 「個人事業税」
国税庁 「No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)」
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取る個人事業主が節税する方法は、計上できる経費を増やしたり控除を活用したりすることです。
ここでは、個人事業主に向けて税金対策を紹介します。
個人事業主が経費面で節税をするために、まず経費にできる支出を確認しましょう。
経費とは、「事業にまつわる支出」です。経費として認めてもらうには、事業のための支出であることを主張できる正当性が必要です。交通費や接待交際費なども、領収書にいつどのような目的で利用したのか、事業のどこに関連するのかを証明できる但書をつけましょう。経費にできる支出を明確にすることで、正確かつ効果的に所得税を節税できます。
個人事業主の支出は事業とプライベートの境界が曖昧になりやすく、経費の判断に迷いやすい傾向にあります。個人事業主が経費にできるものを知り、漏れなく計上できるようにしましょう。
個人事業主が経費にできるものを知りたい方は、「個人事業主の勘定科目一覧!経費に計上できる費用や仕訳方法も解説」を参考にしてください。
個人事業主の税金対策の方法に、家事按分を経費に計上することが挙げられます。
個人事業主が自宅を事務所としている場合、家事按分として必要経費に計上できます。家事按分とは、生活費と事業費が混在する規定に従って費用を事業分のみを算出して経費計上することです。
家事按分できるものには、家賃や水道光熱費、通信費、自動車関連費用などが挙げられます。
家事按分の内容や方法に関する詳細は、「確定申告で経費計上できるものは何?会社員でも使える節税方法を紹介」を参考にしてください。
出典:
国税庁 〔家事関連費(第1号関係)〕
個人事業主が節税する際に大切なことは、経費計上が可能な税金・保険料を把握することです。
事業に関連がある税金・保険であれば、経費にできます。たとえば、個人事業税や印紙税などは必要経費として算入可能です。また、事業に関係する建物や自動車に掛けられた保険料なども経費になります。
個人事業主ができる経費面の節税対策は上記のとおりです。そのほか、個人事業主が法人化することによって活用可能な節税対策もあります。個人事業主が法人化することで得られる節税効果については、「個人事業主が法人化するメリットとは?デメリットや手続きの流れも解説」の記事を参考にしてください。
個人事業主が活用できる節税対策として、青色申告が挙げられます。
青色申告には、以下のメリットがあります。
青色申告を行うには手続きが必要です。
青色申告者になることを検討している個人事業主は、「個人事業主に青色申告は必要?メリットや手続き、書類の提出方法を解説」の記事をご覧ください。
出典:
国税庁 「No.2070 青色申告制度」
国税庁 「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
所得控除を受けるのも、個人事業主におすすめの税金対策です。所得控除とは、一定の条件を満たすことによって所得額から差し引かれる控除の制度を指します。
所得控除の例は、医療費控除や配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除などです。また、小規模企業共済やiDeCo、企業型確定拠出年金などの制度は小規模企業共済等掛金控除の対象になります。そのほか、ふるさと納税をはじめとする寄付によって寄附金控除を受けられます。
ふるさと納税による控除を受けようと考えている個人事業主は、「ふるさと納税を個人事業主が行うメリット・デメリットや手続きのやり方は?」の記事も参考にしてください。
出典:
国税庁 「No.1100 所得控除のあらまし」
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取るインボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、適格請求書を発行・保存することによって事業者が正確な消費税額を納めるための制度です。複数税率に対応した仕入税額控除を適用できます。売り手側がインボイスを交付するには、前もってインボイス発行事業者の登録を行うことが必要です。
インボイスを入手・保存することで、買い手側は仕入税額控除を適用することができます。
また、売り手側はインボイス発行事業者になることで、買い手から取引相手として選ばれやすくなる可能性があります。
節税や取引機会の増加を目指す個人事業主は、インボイス発行事業者になることを検討しましょう。
インボイス制度について詳しく知りたい方は、「インボイス制度とは?個人事業主に必要な対応をわかりやすく解説」をご覧ください。
出典:
国税庁 「インボイス制度について」
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取る個人事業主が納める必要がある主な税金の種類は、所得税・住民税・消費税・個人事業税です。各種税金にはそれぞれ税率や計算方法が定められています。ルールに沿ってシミュレーションを行い、個人事業主が支払う税額をあらかじめ把握しましょう。
個人事業主の税金対策には、経費を漏れなく計上することや控除を活用すること、青色申告を利用することなどが挙げられます。可能なかぎりの節税対策を行い、個人事業主の税負担を減らしましょう。
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取る 次の案件探しの
情報収集ができる!
掲載数は360,000件!
あなたにピッタリの
フリーランス案件が見つかる
136万件以上のフリーランス案件から一括検索
360,598件※の案件を保有しており、エンジニアやクリエイター向けを中心にたくさんの案件を一括検索可能です。
※ 10月4日(Sat)更新2あなたの経験やスキルに適した案件をメールでお知らせ
マイページに入力して頂いた経験や希望条件に合わせて、ご希望にマッチした案件をメールでお送りするので効率的な案件探しが可能です。