最終更新日:2024年10月04日
この記事のまとめ
人生100年時代と言われる今日、さまざまなライフプランが考えられ、労働に対する考え方や価値観においても多様化が進んでいます。それに伴い、ライフプランやキャリアプランは、個人がしっかりと知識を持って考えなければならない大きな問題となっています。
とくに会社勤めをしてきた方にとっては、退職が大きなターニングポイントとなるでしょう。独立や再就職を見据える方にとっても、賢く退職手続きを進めることが重要になります。退職を具体的に検討し始めた、またはすでに退職することを決定した方には、これから何をどう進めていけば良いのか、わからないという方も少なくないのではないでしょうか。
そこで今回は、「退職したらやること」をテーマに、何から着手すべきか、どんな点に注意して手続きを進めていくことが大切なのか、分かりやすく解説していきます。ただでさえ退職前後はバタバタしてしまいがちなので、あらかじめしっかり流れを確認し、重要な手続きの漏れなく円滑に進められるよう準備しておきましょう。
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希望にあう案件を受け取るまず、退職までの一般的な流れを概要として押さえておきましょう。
退職することを決めたら、まずはその意思を会社側に伝える必要があります。最初は直属の上司などに伝えると良いでしょう。そこから続いて人事部などの窓口に伝えるようにします。一般に退職する2~3カ月前くらいから動くのが適当とされています。法律上は、正社員のように期間の定めのない雇用契約の場合、2週間前までに退職の意思を伝えれば良いと民法で規定されていますが、別途就業規則などでルール化されている場合は、最低でもそれに従うことが前提です。
会社側や周囲としても、空いた穴を埋める後任の手配やスケジュール調整、業務の引き継ぎなど、対応しなければならないことが多くありますから、そうしたことに配慮し、繁忙期などを避けて、余裕をもった日程とし、退職意思を明確に伝えるようにしてください。
退職願や退職届の提出は、退職するにあたって法的に義務付けられているものではありません。逆に、労働者には退職の自由が法律で保障されていますから、たとえ就業規則で提出するように定められていても、退職届を出すことなく辞めることは基本的に可能です。
仮に、就業規則で「退職する30日前までに退職願を提出すること」といった定めがある場合、民法627条1項後段に、退職の意思表示をしてから2週間後に退職の法律効果が生じると規定されているため、これと矛盾することになりますが、この民法規定を強行規定と解するか、任意規定と解するかには議論があり、それによって判断が異なるという事態が生じます。
強行規定とみた場合、当事者間の合意よりも法令規定が優先されるため、就業規則での合意内容は無効となり、提出は不要、意思表示を行えば2週間後に退職の法律効果が生じることとなります。一方、任意規定とみた場合には、当事者間の合意が法令規定に優先するとされ、就業規則の内容が有効とみなされるため、30日前までの退職願の提出をもって退職の法律効果が生じることになります。
就業規則について内容をあらためて確認し、上司にも退職願や退職届の提出が必要かどうか相談するようにしましょう。時期としては規則規定内容によりますが、1~1.5カ月前くらいまでには動いておくことをお勧めします。
注意したいのは、完全な自身の意思で決めた退職ではなく、会社都合による退職の要素がありながら、退職願や退職届の提出を求められた場合です。一般的には提出自体求められないものとなりますが、もし求められた場合には、理由を「一身上の都合」などとはせず、「貴社、退職勧奨に伴い」、「事業所廃止のため」など具体的な要因を理由として文面に挙げておくようにします。
これは完全な自己都合の退職として扱われることで、失業給付の支給が遅くなったり、転職時に不利になったりすることを避けるためのもので、トラブル回避のためにも重要なポイントです。
退職当日となる最後の出社日から逆算し、業務の引き継ぎに関するスケジュールを立てます。会社側から指示があればそれに従い、とくに指示がなければ、こちらから必要な作業がないか判断を仰ぎましょう。
長期案件などで持ち越しとなってしまう場合には、区切りの良いところまで責任を持って担当し、これまでの経緯や今後の予定、見込みスケジュールなどを、後任者が参照できるよう、適宜資料にまとめておきます。すでに後任が決まっていれば、ともに業務を進める中で必要作業など具体的に教えながら引き継ぎますが、この場合も要点をまとめた引き継ぎノートなどを準備してあげるとスムーズです。
最終出社日となる退職当日は、上司や同期などに感謝の意を伝え、挨拶まわりを済ませましょう。社員証・IDカードやPC、モバイル端末、制服など、会社から支給されている諸々の備品の返却や、最終的な書類の受け取りといった手続きと片付けも行います。
健康保険被保険者証は、家族分も合わせ、退職日まで使用可能です。出社最終日当日に返却しましょう。会社側から受け取るべき書類は、「雇用保険被保険者証」と、失業保険受給に必要な「離職票」、国民健康保険への切替時に必要な「健康保険資格喪失証明書」、「源泉徴収票」、「年金手帳」といったものです。
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希望にあう案件を受け取る続いて退職後に行うことについて考えていきましょう。会社員として在職している間は、年金や税金の納付など会社に任せておけば、給与からの天引きで済んでいましたが、退職後はそうはいきません。自ら行っていくための変更手続きなど、やるべきことが多くあります。手続きに期日が設けられているものも多いため、遅延や失念のないよう計画的に処理していくことが大切です。あらかじめ流れと内容を確認し、余裕をもって早めに済ませていきましょう。
健康保険や年金保険の加入条件は、適用事業所に雇用され働いていることですから、会社を退職した場合、これら社会保険の被保険者資格を喪失することとなります。よって、切替の手続きを行わねばなりません。それぞれについて詳しくみていきましょう。
会社や公的機関から退職した場合、そのすぐ翌日から、これまでの健康保険被保険者としてあった資格が喪失してしまいます。無保険で病気やケガをした場合、全額自己負担となってしまいますから、速やかに手続きを行いましょう。
すぐに転職する予定がある方は、退職時に健康保険証を返却して代わりに受け取る健康保険資格喪失証明書を、次の転職先へと提出すればOKです。通常、1週間ほどで新たな健康保険証が発行され、これを受け取って用いることができます。
転職先が決まっていない、または再就職の予定が当面ない方は、公的保険に加入する手続きをとります。この場合、3つの選択肢があります。1つ目は、退職後もこれまでの会社の健康保険を利用できるようにする、任意継続被保険者制度を用いる方法です。最長2年まで可能で、家族を扶養に入れることもできます。この制度を利用して保険の継続を行う場合には、離職日の翌日から20日以内に加入していた健康保険組合へ申請してください。
2つ目は、一般の国民健康保険に加入する方法です。各市区町村が運営するもので、健康保険や各種共済組合などの職域保険に加入していない自営業者などを対象に、被保険者への必要保険給付を行う仕組みとして用意されています。離職日の翌日から14日以内に住民票のある自治体役場で手続きを行います。14日を超えても手続きそのものは可能ですが、保険料は退職日翌日に遡って計算されますから、早めに手続きを済ませるのが賢明です。保険料は市区町村によって異なり、条件次第では保険料の減免や軽減措置を受けられる場合もあります。
3つ目は、生計を共にする家族が健康保険の被保険者で、自身の年収が130万円未満であるなら、被扶養者としてその家族の健康保険に加入できる可能性があり、この方法で保険加入するという方法です。実際に加入できるかどうか、条件など詳細を確認する必要がありますので、まずは家族が加入している健康保険組合、全国健康保険協会などに問い合わせを行いましょう。可能であれば、必要な手続きをとって扶養加入します。
どの方法を選択することになるかは、自身の置かれている条件下によるでしょう。なお複数の選択肢をとることが可能な場合、それぞれ必要になる保険料を比較し、最も金額の低いものを選ぶこともできます。
公的年金には大きく2種類が存在し、20歳以上の国民が全員加入する国民年金、会社員や公務員がこれに加えて加入する厚生年金の2つです。退職した場合、翌日からこの厚生年金保険被保険者たる資格が喪失しますから、それに伴う手続きが必要となります。
すぐに転職するという方は、転職先に年金手帳を提出すれば、あとは新たに所属することとなる会社・団体側に任せておくだけでかまいません。同月内の転職であれば、この提出のみで手続きが終了します。
入社が退職日の翌日以降になり、退職日と入社日の間が1カ月以上空く方や、当面再就職する予定がない方は、国民年金への切替が必要です。退職翌日から14日以内に、住民票のある市区町村役場窓口へ出向き、手続きを行いましょう。その際、年金手帳や離職票などを持参します。ちなみに転職先が決まっており、すぐ入社となるケースでも、社会保険完備とならないなら、やはり国民年金への切替が必要です。
働いていて厚生年金や共済組合に加入していた間は、第2号被保険者という扱いでしたが、退職すると国民年金のみに加入する第1号被保険者に変わります。第1号被保険者は保険料を自ら納付しなければなりません。所得が一定以下である場合や、何らかの事由で納付が困難である場合、保険料納付を免除したり、猶予したりする制度もあります。必要に応じ、確認してみてください。
なお、第2号被保険者の被扶養配偶者は第3号被保険者と呼ばれ、保険料を納めずとも年金受給資格を得られるようになっていますが、第2号被保険者が退職して第1号被保険者になるとともに、この被扶養配偶者も第1号被保険者になりますから、同じく種別変更、切替の手続きを行って保険料の納付を開始しなければなりません。扶養扱いとしている年収130万円未満の配偶者がある方は、この点にも注意しておきましょう。
国の保険制度として、1週間の所定労働時間が20時間以上、31日以上の雇用見込みをもって雇用されていた労働者には、雇用保険(失業保険)が全員に適用されるものとなっており、退職すると失業手当を受け取ることが可能になります。
ただし転職する先が決定している場合には、受給資格がありません。そもそも、失業者が再就職するまでの生活を支え、支援することが目的の保険制度ですから、対象にならないのです。
転職先が決まっていなければ、退職の理由が自己都合であれ、会社都合であれ、受給意思を示せば失業手当を受け取れる可能性があります。速やかに手続きを行いましょう。退職日から10日程度を目途に、会社から離職証明書が発行・送付されてきますから、これを持って居住する自治体のハローワークへ出向きます。個人番号確認書類や本人確認書類、本人名義の通帳、証明写真、印鑑といったものをあらかじめ用意し、あわせて持参するとスムーズです。
失業保険の受給期間は、原則として退職日翌日から1年間となっており、その間に支給を終えることが定められているため、手続きは早めに済ませましょう。1年を過ぎると、手当の支給が途中打ち切りになってしまいます。
給付の条件は、自己都合による退職の場合、離職の日以前2年間に雇用保険の被保険者であった期間が通算12カ月以上を満たすこと、会社都合による退職の場合は、離職の日以前の1年間に雇用保険の被保険者期間が通算6カ月以上あることです。この条件を満たしていれば、ハローワークで求職の申し込みを行い、離職票を提出すると、受給資格決定を受けられます。
この最初の手続きを行ってから7日間は待機期間があり、この間はまだ失業手当を受給することはできません。また、正当な理由がない自己都合退職の場合は、待機期間が終了しても、その後2~3カ月間は給付制限を受けることになります。
求職申し込みを行ってから2~3週間後には、雇用保険受給説明会がありますので参加しましょう。その後は、受給資格決定日から起算し、4週間に1度の間隔で失業認定日が設定され、ハローワークに来所する日時が指定されます。就職に向けて活動しているなどの状況が確認されること、かつきちんとハローワークに来所しているといった基本条件を満たせば、受給資格ありとされ、失業保険認定となります。認定を受けると5~7日後に失業保険(失業手当)が振り込まれるという流れです。
給付条件に違いがみられたように、給付日数においても、退職の理由が自己都合か会社都合かによって違いがあります。給付日数はこの退職事由と勤続年数、本人の年齢といった要素の組み合わせで規定されています。会社都合退職の場合の方が全体に優遇される内容となっており、この点で労働者保護が図られていると考えられるでしょう。
なお出産や病気など、働きたくともすぐには働けない事情がある場合、所定の手続きを行うと、受給資格を最大3年間延長できる仕組みもあります。離職票や受給期間延長申請書という専用の書類、印鑑などとともに、就業できない理由を証明できるものを持参し、ハローワークの窓口へ申し出ましょう。
円満に退職できた場合でも、気づかぬまま会社からの未払いを残してしまっているケースも少なくありません。念のため、請求できるもの、得る権利があるものを残していないか、注意深くチェックしましょう。とくに未払いがある可能性が高いものとしては、残業代にあたる割増賃金分、退職金、解雇予告手当の3つが挙げられます。
残業代は、労働基準法で定められた原則1日8時間週40時間という労働時間を超過して行われた法定時間外労働と、会社がそれぞれ定めた所定労働時間を超え、労働基準法で定められた労働時間内で行われた法内残業、それぞれの計算式によって算定されるもので、会社はそれを割増賃金として労働者に支払う義務があります。
残業代を計算する際には、まず基礎賃金がいくらかをみなければなりません。基礎賃金は、家族手当や通勤手当、子女教育手当、住宅手当、別居手当など各種手当、臨時の支払賃金、1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金などを除いた、定額で払われる給与です。
法定労働時間を超過した時間外労働については、最低でもこの基礎賃金の1.25倍を割増で支払う必要があります。また、午後10時から午前5時までの労働は深夜労働にあたり、やはり時間外労働と同じ基礎賃金の1.25倍を割増賃金として会社が支払わねばなりません。時間外労働と深夜労働が重なった場合には、割増分が1.5倍となります。
労働基準法の定める少なくとも週1日、または4週間を通じて4日以上の法定休日に行われた労働や、会社による就業規則、労働契約によって定められた週休日の所定休日に行われた労働は、いずれも休日労働とみなされます。法定休日の休日労働については、1.35倍以上の割増賃金が、所定休日になされた休日労働については、就業規則の規定による割増分が、残業代として発生します。
法定休日の休日労働と深夜労働が重なった場合には、1.35倍に深夜労働の1.25倍を上乗せした1.6倍以上の割増賃金、会社による就業規則で定められた所定休日の深夜労働で、休日労働の割増分が設定されていない場合は、深夜労働の1.25倍の割増賃金が支払われるべきとなります。
法内残業の場合は就業規則の定めによって割増分が決まり、該当する時間数に規則で定められた時間あたりの単価を乗じて残業代が算出されます。
労働時間数の計算は分単位で行われ、1カ月の労働時間の合計が30分未満であればその端数は切り捨てとなりますが、30分以上ならば1時間として切り上げになります。その都度時間単位でしか算入しなかったり、端数を全て切り捨てたりするのは労働基準法違反です。
こうして正しく残業代を算定し、未払いがあることが判明すれば、退職後であっても該当分を請求することができます。ただし残業代については時効が設けられており、支払日から2年が経過するとその分から権利が消滅していきます。2020年4月1日以降が支払日のものは3年となっていますが、やはり時効があることには変わりありません。請求は早めに行いましょう。
意外に思われるかもしれませんが、退職金も未払いが発生しやすい代表的なものです。賃金については、法律上、会社に定めに沿って支払うことが義務付けられていますが、退職金については支払の義務はありません。
しかし、退職金の支給条件が就業規則や雇用契約書などにきちんと明記されていて、支払うことが労働契約に含まれているならば、退職金が賃金の後払いの性質を帯びるもの、労働の対価として使用者が労働者へ支払うべきものと判断されますから、会社側に支払義務が発生することとなります。
就業規則などできちんとした明文ルール化が行われていない場合でも、その会社において、労使慣行として退職金が支払われ続けているという事実が証明できれば、退職金の支払義務があるとして請求できる可能性があります。ただし、立証ハードルはある程度高いものとなるため、原則は明確な約定があること、契約内容にあることを示せるかが基本となるでしょう。
支給条件や支給の金額基準など明確になっているものがあり、それでも自身の退職金が支払われない、または適正な額に達していない額で済まされてしまったといった場合には、労働基準法違反の可能性があるものとして、労働基準監督署に調査や勧告、指導をしてもらうことができます。
一般的には、そもそも退職金制度がない会社である場合、勤続年数がごく短く支給条件を満たさない場合、懲戒解雇された場合やそれにあたる事由がある場合、継続雇用制度による再雇用で定年時にはすでに退職金支給を行っている場合などで、退職金が支給されないことがあります。
自身のケースがこうした退職金の支払われないケースに該当するのか、それとも受ける権利があるにもかかわらず未払いとなっているケースなのか、あらためて確認しましょう。
基準が曖昧であるなどの場合には、労働基準監督署では対応してもらえないケースが多くなりますが、退職金未払いのトラブルについては、各都道府県の労働局や弁護士などが相談を受け付けていますから、そちらへ相談することを考えましょう。退職金は受給権利がある場合でも、5年間行使しなければ時効成立で無効となってしまいます。行動を起こすべきと判断したら、早めに動くことが大切です。
自己都合によって退職した場合は問題ありませんが、会社都合で解雇となり、やむを得ず退職する場合には、解雇予告手当がもらえる可能性があります。しかし、この制度を理解していないために手当を受給できていないケース、未払いとなっているケースも目立ちます。
会社が何らかの理由によって労働者を解雇する場合、通常解雇日の30日以上前から、そのことを告げておかねばなりません。これは労働基準法第20条に定められているもので、もし30日前までに予告しなかった場合には、30日以上の平均賃金を手当として支払う義務が使用者(会社)に発生するとされています。
ただし、どんな場合でもというわけではありません。地震など天災やその他やむを得ない事由と認められることを理由に事業継続が不可能となって解雇する場合、また労働者の帰責事由、労働基準監督署の認定で解雇する場合は、解雇予告手当を支払うことなく解雇できることになっています。
労働者の帰責事由には、事業場内で刑法犯に該当する行為を行った場合や、賭博などで職場秩序を乱し他の労働者に悪影響を及ぼしている場合、経歴を詐称していた場合、2週間以上正当な理由なく無断欠勤をしている場合、勤怠不良で複数回注意を受けたにもかかわらず改めないといった場合が該当し、このような重大な規律違反や背信行為が労働者側に認められるケースでは、たとえ即日解雇でも解雇予告手当を請求することはできません。
このほか、労働者が試用期間中である場合や、2カ月以内の期間を定めて使用されている労働者の場合も、手当支給の対象外になります。また契約期間満了での退職や、退職勧奨に合意して退職となった場合は、そもそも解雇にあたりませんから、やはり解雇予告手当を得ることはできません。
いずれの場合にも該当せず、会社都合での解雇、退職となる場合で、例えば8月31日に解雇予告がなされたとします。このケースでは、9月1日が解雇予告期間のスタートになり、30日が経過した9月末日24時、10月1日午前0時で契約期間が終了、これ以降の解雇、退職ならば定められた予告期間を満たしているため、手当が発生することはありません。
しかし、もし9月14日終了時点(9月15日午前0時)で解雇するとしたら、9月1日から起算して14日しか予告期間が経過していません。そのため30日に足りない分の解雇予告手当を支払う義務が発生し、17日分の手当は支払うべきとなるのです。
解雇予告手当の1日分というのは、直前3カ月で算出した平均賃金の1日分で、会社はこれを下回らないだけの額を労働者に支払う必要があります。ちなみに、もし日給や時間給、出来高払制で働いていた労働者ならば、直近3カ月に支払われた賃金総額をその期間中に働いた日数で除し、その結果の6割を下回らない額が1日分の手当となります。
未払いとなっている場合、請求できる時効は解雇申し渡しから2年となりますので、速やかに請求手続きをとる必要があります。会社側の不払いが認められた場合には、それに対する罰則や付加金、遅延損害金も発生してきます。
なお、解雇、退職となったこと自体に不服がある、それを認めず、受け入れない方針で会社側と争うのであれば、解雇予告手当の請求は行ってはいけません。会社側から振り込まれたり、一方的に交付されそうになったりしても、受領書への署名押印を拒否する、あくまで解雇日以降の賃金として受け取るのであって解雇予告手当ではないことを明確に伝えておくなどすることが重要です。もし手当を請求したり、渡されて受け取ったりすると、解雇を承諾したものとみなされてしまうからです。
退職してやるべきこととしては、私物の引き取りも大事な手続き作業に挙げられます。円満な退職で、最終出勤日までに片付けもきちんと行われ、デスク周りやロッカー内の私物など、全て引き取って持ち帰る、処分するなどの作業が済んでいれば問題になることはありませんが、退職代行サービスなどを利用して、自身の私物整理を行うことなく辞めていたり、そもそも不当解雇として争っている最中であったり、また会社側から解雇通知や退職勧奨がなされ、自宅待機を命じられたまま辞める流れになった、私物を取りに行くといっても中に入れてもらえないなど、場合によってはやりとりにトラブルが生じることもあります。
使用者側には、後継となる従業員に設備を使わせるなど、施設設備全般を適切に管理し運用していく権限がありますから、退職した社員の私物が残され、デスクやロッカーなどを占拠している事態があれば、それを放置しておくことはできません。
そのためここで使用者によっては、会社施設の所有権や占有権、管理権などが侵害されているとし、私物を勝手に処分しようとする場合があります。しかし、たとえそうした権利の及ぶ社内に残置していたとはいえ、あくまで私物にはその労働者の所有権がありますから、使用者側がこれを同意なく処分したり売却したりすれば、原則として違法になります。よって会社が一方的に私物を片付けてしまおうとしている場合には、すぐに中止するよう伝えねばなりません。
一方、使用者の側がこうした不法行為などにならないよう、私物の引き取りを求めて連絡してきた場合は、きちんと協力しましょう。無視した場合には、身元保証人などとして指定している人物に私物を受け取るよう求めるか、施設側の占有権などが侵害されているとして妨害排除の訴訟提起を行い、判決を受けて強制執行する、執行官が保管する仮処分を実施するといった流れになります。
解雇・退職について争っており、受け取りを拒否するとしても、強制執行は行われる可能性があるほか、退職日以降の保管料を請求される場合もあるため、私物の引き取りだけは行うのが賢明です。しかし何も異議を申し立てることなく、私物引き取りを済ませてしまうと、それをもって退職を受け入れたとされてしまう危険が残りますから、こうした場合には、解雇や退職が無効だと考えていることを内容証明郵便などであらためて通知し、争点を限定するため、この時点での私物引き取りにのみ協力することを明示すると良いでしょう。
私物の引き取りは、その所有者である労働者が出向いて直接受け取るのが基本ですが、この場合にはいつどこで受け渡しを行うのか、いつまでに回収を済ませるのか、事前協議を行うことも必要になり得ます。決定したらその内容に沿って処理し、互いにそれ以上のトラブルを防ぐため、私物を全て引き取った旨の覚書を交わす、受領証のやりとりを行うようにするとベストです。
直接のやりとりを避ける場合には、郵送での受け渡しが検討されるでしょう。この場合、含まれていない私物の発生、滅失・損傷の可能性といった問題があり得ます。また送料負担についても、どちらがもつか問題になる可能性が高いと考えられます。これらの点は、郵送手段しかない事態の発生がどちらの事情によるのかなどを加味し、細かく協議して互いの同意をとりつけ、進めていくほかありません。郵送によるやりとりとなった場合も、これによって私物の引き取り手続きが終了したことを互いに確認する文書を最終的に残すことが、さらなるトラブルの発生防止に有効です。
住民税は1月1日から12月31日までの1年間の所得に対し、市区町村ごとの算定で課された税額分を、翌年の6月から翌々年の5月までに後払いで納める仕組みとなっている税金です。会社員として在職している間は、毎月の給料から天引きされる特別徴収の仕組みで納められているため、意識されていないかもしれませんが、毎月5月頃に住民税決定通知を受け取っているはずです。そこで決定した税額を12分割し、天引きで納めてきていたのです。
退職後はこの特別徴収から外れるため、自ら納税することが必要になります。しかしすぐに転職することが決まっているならば、退職した会社と新たに所属する転職先会社との間で、継続手続きを行ってもらうことにより、この特別徴収を継続してもらう、そのまま給料天引きとしてもらうことができます。ただしどうしても退職する会社へ依頼することが難しい場合には、一時的に普通徴収へ切り替え、その後、転職先で特別徴収に切り替える手続きを行うこととなります。
すぐには転職せず入社まで間が空く場合や、完全に退職する場合は、年に4回、納税者として直接納める普通徴収で住民税を払わねばなりません。手続きの内容は退職するタイミングで下記のように異なってきます。それぞれ確認してください。
1月~5月の場合には、退職した月の給与または退職金から、5月分までの住民税が原則として一括徴収されます。その後、6月以降の住民税については、普通徴収により年4回、6月、8月、10月、1月に自分自身で納付していくこととなります。なお最初の一括徴収において、退職した月の給与と退職金の合計額を、5月分までの住民税が上回る場合には、この時点で普通徴収に切り替えることができます。
6月~12月の場合には、退職した月までの住民税のみ給与から差し引かれ、その翌月以降は自身で納付するかたちになります。とくに手続きを行うことなく、自動で普通徴収へと切り替わりますから、6月、8月、10月、1月の年4回、自治体から納税通知書が送られてくるのに従って金融機関やコンビニエンスストアなどで納付しましょう。ただし、希望すれば退職月から翌年5月までの住民税分を一括で納めることもできます。
通常はこのようなかたちで住民税の納税を行っていきます。特別な事情により、税金を支払うことが困難であると認められた場合には、減額や免除を受けられるケースもあります。認められるかどうか、その基準は自治体によって異なります。自己都合による退職の場合、一般的に言って、免除の対象となることはほぼないと考えられますが、例外もあり得ます。気になる場合には、居住する自治体に問い合わせ、確認してみてください。
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取る所得税は1月1日から12月31日までの1年間に得た所得についてかかる税金です。退職後でも、その年に何らか所得が発生していれば、それに応じた税金を納める必要があります。
退職金についても、やはり所得であるため、所得税の対象となります。しかし、全額が所得税の対象になるわけではありません。退職金は退職所得という名称で分類され、他の所得とは別に税額が計算されるものとなっています。長年勤務したことに対する手当と言える性質のものですから、勤続年数によって異なる退職所得控除という仕組みがある点に特徴があります。
控除金額は、勤続年数20年以下の場合は勤続年数に40万円を乗じた額で、80万円未満の場合は一律80万円、勤続年数20年超の場合、70万円に勤続年数から20を引いた数を乗じ、これに800万円を足した額となります。ただし、障がいを担ったことが直接の原因で退職した場合、控除額がそれぞれ100万円追加となるほか、前年以前に退職金を受け取ったことがある、または同一年中に2箇所以上から退職金を受け取るといった場合に控除額の算定がこれとはことなる場合などがあります。例外として注意しておいてください。
退職所得として課税対象になる額は、源泉徴収される前の収入金額から退職所得控除額を減じた分の半額です。ちなみにここでの収入金額には、退職金のほか、退職によって受ける社会保険制度などからの支給一時金、適格退職年金契約に基づく退職一時金、労働基準法規定によって支払われた解雇予告手当、退職した労働者として弁済を受けて得た未払い賃金なども含まれ、全てを合計したものであることにも注意しましょう。
所得税は、会社に在籍している場合、年間の給与額を予測して毎月の給料から天引きされています。12月には年末調整がありますが、これは金額が確定したのを受け、これまでのその予測分に対する過不足を計算し直し、返還や追加徴収を行うものです。
退職すると、こうした会社側で行ってもらっていた納税手続きを自身で行わねばならなくなるため、確定申告が必要になります。ただし、これも退職時期などによって対応が異なります。以下で確認しましょう。
退職した年と同じ年に、すぐ他の会社へと転職、再就職した場合には、新たな勤務先となった会社で源泉徴収票を提出すれば、退職した会社のものも含めて年末調整を受けられ、それだけでこれまでと同様の対応により、納税が完了します。源泉徴収票のほか、生命保険や医療費などの各種控除証明書も忘れずに提出しておいてください。
ただし11月下旬以降など、年末が差し迫ったタイミングでの入社になる場合、年内に手続きが終わらず、年末調整に間に合わないこともありますから、新しい勤務先で手続きとして間に合うかどうか確認しておきましょう。もし間に合わない場合には、自分で確定申告を行う必要があります。また、そもそも年収が2,000万円を超える場合、副業の所得が年20万円を超える場合など、一般会社員でも確定申告が求められる条件に該当するなら、やはり確定申告が必要です。
退職した年には他の会社へ再就職しない、または完全に退職したといった場合、自分で確定申告をする必要があります。年間の給与額を想定し、月割りで天引き、源泉徴収されている以上、退職後に1カ月以上の給与を得ていない期間があれば、所得税は余分に納めているはずですから、確定申告をすると、その納め過ぎている所得税の還付が受けられるでしょう。
退職翌年の確定申告時期、基本的に2月の第2週から3月の第2週で時期が設定されるはずですから、この間に居住地を管轄する税務署で確定申告を行います。期限までに申告を済ませないと、無申告加算税や延滞税などが課されますから、期限には十分注意し、正しく手続きを行いましょう。詳細な方法については、国税庁のホームページなどで確認できます。
確定申告時には、以前は確定申告書とともに源泉徴収票の添付が必要でしたが、2019年4月1日以後は不要となっています。とはいえ確定申告書には、源泉徴収票に書かれている内容も記載しなければなりませんから、会社から交付された源泉徴収票を大切に保管しておくべきであることに変わりはありません。
なお、退職年に再就職しない場合でも、退職する会社において年末調整が終了した後に退職となり、その後年内は無収入のままであったならば、その年の確定申告は必要ありません。
初めて確定申告を行うという場合、一から自分の手で進めていると、かなり手間取る可能性があります。現在は確定申告をサポートする専用ソフトやクラウドサービス、アプリなどが充実してきており、これらを用いると比較的簡単に済ませられるようになっていますから、確定申告が必要になると分かった方は、こうしたツールについても利用を検討し、余裕をもって準備作業へ取りかかっておくことをお勧めします。
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希望にあう案件を受け取るいかがでしたか。退職までの大まかな流れに始まり、退職したらやるべきこと、確認すべき点などを順にみてきました。退職という節目には、思う以上にさまざまな手続きや作業が必要となります。いざとなって慌てないよう、よく確認し、円満でスムーズな理想的退職を叶えましょう。
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