副業も個人事業主として届け出たほうがいいの?手続きの方法とは

最終更新日:2024年10月04日


この記事のまとめ

  • 会社員でも、副業で得た所得が年間20万円を超える場合は、個人事業主として開業届を提出する必要がある
  • 個人事業主は、開業届を提出することで青色申告特別控除などの節税メリットを受けられる
  • 副業にはWeb系やブログ・アフィリエイトなどがあり、本業とのバランスを考慮して選ぶことが重要である

働き方改革の1つとして、多様な働き方や副業・複業・兼業が推進され、環境が整えられてきたこともあり現在では正社員やパート、アルバイト、フリーランスなど様々な形態で副業する人が増えてきました。

副業などが軌道に乗ってきた人の中には、本業を続けながら個人事業主として開業を検討している人もいるのではないでしょうか。

この記事では、会社員が副業で個人事業主となるための要件や注意点、また確定申告の手続き方法など開業のための具体的な方法を紹介するとともに、副業としておすすめの業種や仕事などについても紹介していきます。

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個人事業主となる要件とは?

まず、個人事業主とはどのように定義されているのでしょうか。法人を設立せずに個人で事業を営んでいる人のことを指します。例えば、投資用不動産から賃貸料が入ってくる人、本業とは別にECサイトを運営している人、会社の仕事が終わった後にWebデザイナーをしている人、週末にオンライン講師をしている人なども個人事業主に当たります。

フリーランスも、会社に所属せず個人で事業を展開しているという点では個人事業主の一種と言えます。

開業届の提出を行うことで個人事業主に

個人事業主となるためには、税務署に対して、事業を開業したことを知らせる開業届を提出する必要があります。

副業の定期的な収入がある場合は、会社員であっても個人事業主として「開業届」を申請したほうがよいと言われています。

開業届を出すことは義務ではなく、提出しなかったからと言って罰則を受けることはありません。しかしながら、本業以外の所得が年間で20万円を超える場合は確定申告が必要になり、そこで青色申告をする人は開業届を提出することが求められます。

もちろん、開業届を出して個人事業主になったからと言って、会社を辞めなければいけないということはではありません。開業届を出すとそこから得られる収入は「事業所得」となり、会社とは別に申告する必要があるのです。

一方で、職場以外の場所でアルバイトをしている、宝くじやフリマアプリなど一時的に利益を得たなどの場合は個人事業とはみなされないので注意しましょう。

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開業するメリット・デメリットとは?

義務ではないのにもかかわらず、なぜ個人事業主として「開業」としたほうがよいのでしょうか。今度は、開業するメリット・デメリットについてみていきましょう。

開業するメリット

まず、開業することで得られるメリットについて解説していきます。

メリット・青色申告特別控除

副業で20万円以上の年収がある場合、確定申告を行う必要がありますが、確定申告には大きく「青色申告」「白色申告」の2種類に分類されます。そこで青色申告を行えば、「青色申告特別控除」が受けられます。

青色申告特別控除とは不動産所得または山林所得、事業所得に対して適用されるもので、最高で55万円分(電子申告の場合は65万円分)、または10万円を所得から控除できる制度のことです。申告する控除金額によってそれぞれ条件が異なりますが、複式簿記による損益計算書を確定申告書に添付して提出します。

青色申告特別控除によって、本来支払うべき所得税額からさらに控除されるため、白色申告で行うよりも節税効果が高くなります。具体的に数字を示してみましょう。

例えば収入が500万円で経費が150万円かかるとします。すると実際の所得金額は350万円で、これが課税の対象となります。青色申告特別控除は、所得額からさらに控除された金額で税額が算出されます。

国税庁の所得税の税率によると、所得が195万円から329万9,000円までの場合、税率は10%で所得控除額は97,500円となっています。その条件で所得税額を計算すると以下のようになります。

白色申告(控除なし)の場合 青色申告(55万円控除)の場合
所得金額 500万円-150万円=350万円 500万円-150万円-55万円=295万円
350万円×10%-97,500円 295万円×10%-97,500円
所得税額 25万2,500円 19万7,500円

ここでは、青色申告特別控除によって55,000円節税できることになりました。税率や所得控除は所得額によって異なり、実際にはそのほかにもいろいろな控除があるためどれくらいになるかは人それぞれですが、1つの対策になると言えるでしょう。

メリット・家族の給与を経費として計上できる

個人事業主は、通常であれば家族などへの給与は経費にすることはできませんが、開業届を出し青色申告をすると、申告者と生計を一にする15歳以上の家族や親族、配偶者などに支払った給料を「青色事業専従者給与」として経費に計上することができるようになります。

事業の開業日から2か月以内、または青色事業専従者給与を申請する予定年の3月15日までに届出書を提出する必要があります。

副業で個人事業主の場合、1人で行うものが多く申告の際の条件には青色事業専従者給与に当てはまる可能性は少ないのですが、将来的に独立や起業をした場合のために覚えておくとよいでしょう。

本業との損益通算ができる

損益通算とは、不動産所得または山林所得、事業所得に対して赤字となった場合、損失分は本業を含めた総所得金額から控除できるという制度のことです。

つまり、開業して副業を事業所得にしておくことで、そこから出た赤字を本業の所得から差し引くことができるため、節税につながります。

赤字の繰り越しができる

青色申告をしている場合は、事業所得の赤字を3年間繰り越すことができます。翌年以降に出た黒字から、赤字分を差し引いて所得を申告できるようになっています。

例えば、1年目に300万円の赤字、2年目に100万円の赤字、3年目に100万円の黒字になったとします。1年目、2年目は赤字なので所得税はゼロ、3年目の黒字100万円は、1年目の赤字から100万円分相殺されるためゼロ、4年目も150万円の黒字になったとしても、1年目の赤字から150万円分相殺されこれもゼロとなります。

そして5年目に300万円の利益が出た場合、今度は2年目に発生した赤字100万円分が差し引かれ、残り200万円分の所得税を支払うことになります。このように、青色申告によって赤字を相殺できることで、大幅な節税につながります。

開業することのデメリット

会社員などをしながら開業することは大きな節税につながりますが、デメリットもあります。副業で個人事業主として申請する上で大切なことなので、把握しておきましょう。

失業手当がもらえない

デメリットの1つに、失業手当がもらえないことがあげられます。

通常、雇用保険に加入していると離職の日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が12か月以上あれば失業手当を受けることができます。条件によって手当は異なりますが、一般的な自己都合による退職の場合「仕事をする意思があるにも関わらず就職することができない」失業状態の人の生活を支えるための支援です。

そのため開業していると、会社を辞めても個人事業主とみなされてしまい失業手当を受けることができません。たとえそのときに副業の収入が少ない、または赤字であっても支援の対象にならないというのがデメリットです。

独立・起業を視野に入れている人は、準備をしタイミングなども考慮して行動しましょう。

青色申告には手間や時間がかかる

青色申告は、様々な控除があることで節税につながっていますが、その分手続きが煩雑で手間や時間がかかります。複式簿記等による詳細な会計処理が求められるからです。経理にあまり時間をかけられない人や、収入がそれほど多くないという人は、手続きが比較的簡易な白色申告をしたほうがよいと言えるでしょう。

ただし白色申告は、以前は300万円以下であれば記帳や帳簿書類の保存は必要ないというメリットがありましたが、現在では記帳や帳簿書類の保存が義務づけられているため、手間や時間に大きな違いがなくなっています。

同じ手間であれば青色申告をしたほうがよいですが、どのくらいの節税につながるか考慮して選びましょう。

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個人事業主になる目安

個人事業主として白色申告する、または開業届を出して青色申告をするか、どれを選べばよいか分からない人も多いでしょう。開業届を検討するべき目安は、所得に対し税金がどれほど節約できるかということです。

もし副業の収入が数百万円になれば、開業して青色申告を行うタイミングと考えられます。

国税庁に記載されている所得税の税率では、1,000円から194万9,000円までの所得は、税率は5%で所得税控除額は0円、195万円から329万9,000円の税率は10%で控除額は9万7,500円、330万円から694万9,000円までの税率は20%で控除額が42万7,500円となっています。

収入が多くなるほど税金控除額も大きくなっていくため、数百万円の収入がある場合は、時間と手間をかけても手続きをしたほうがよいでしょう。

また節税効果だけでなく、開業届によって屋号を持つことができるため、社会的な信用を得えられる効果も期待できます。仕事内容によっては案件を受注しやすくなる可能性もあり、特に副業で将来独立または起業を視野に入れている人は開業届を出しておくのもよいでしょう。

年収や自分自身の目標に照らし合わせながら、開業するべきかどうか決めていくことをおすすめします。

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開業の注意点とは?

実際には、会社員の場合本業で忙しく副業をしても収入が数百万円以上になるケースは多いとは言えないため、開業届を出すことはあまりないのが現状です。しかしながら、副業をする、または開業届を出す際には、本業の会社に事前確認しておくことも大切です。

厚生労働省では、働き方改革の1つとして副業・兼業の促進を図っており、副業・兼業を行う上での働く環境や健康管理についてのガイドライン、モデル規則などを設けています。

会社によっては規則で副業を認めていないところもありますが、基本的に会社が副業を禁止することは法的にすべて有効とは認められていないため、自分の意思で副業することができます。

とはいえ、副業をすることで本業に支障が出る、本業の競合他社のために副業をしている、取引先で鉢合わせるなどの信用問題に関わる問題に発展する可能性もあります。会社との良好な関係を継続しながらも、後々トラブルを起こさないよう事前に相談、確認を取った上で副業や開業を行うべきでしょう。

近年では、社員が事前に報告・手続きを行うことで副業を認めている企業もあり、働く環境は変化しています。副業を始める前に確認しておきましょう。

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確定申告は必要?

会社員で副業をしているすべての人が確定申告を行う必要があるかと言うとそうではなく、例えば会社員で年収2,000万円以下の人のうち、副業収入が年間20万円以下の場合、または赤字の場合は確定申告の必要はありません。

一方で会社員が副業で年間所得20万円以上の人は、たとえ独立や起業の意思がなくても確定申告を行わなければなりません。年間所得は1月1日から12月31日までの1年間、売上から経費を差し引いた金額が20万円を超えている場合です。

例えば、副業の収入が25万円で経費が6万円なら所得は19万円となるため確定申告は必要ありませんが、副業の収入が25万円で経費が2万円であれば、所得は23万円となり確定申告が必要になります。

また医療費控除やふるさと納税(寄付金控除)などがある場合は、20万円以下の所得でも確定申告を行う必要があります。

開業届と青色申告の手続き

青色申告で確定申告をする場合は、「開業届」が必要になります。開業届は正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」と言い、「青色申告承認申請書」とともに開業を始めてから1か月以内に行うことが推奨されています。

開業届は最寄りの税務署から入手するか、国税庁のホームページからもダウンロードできます。自宅で副業を行う場合は、納税地に自宅の住所や電話番号などを記入します。

確定申告に必要な書類は申告内容に応じて、給与所得や公的年金などの源泉徴収票、医療費の領収書などを用意します。申告書の作成は、国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用し、案内に沿って記入していくと税額などが自動計算されます。

2021年1月からは、スマートフォンのマイナポータルAPインストールのみでマイナンバーカード方式によるe-Tax送信で申告できるようになっています。

社会保険・税金はどうする?

通常、会社員であれば会社の健康保険・厚生年金保険に加入し、個人事業主は国民健康保険に加入します。社会保険制度はどちらか一方しか加入できないので、副業で個人事業主となる場合、会社員であればこれまで通り健康保険・厚生年金保険に加入しておきます。

税金に関しても理解しておきましょう。税金には所得税と住民税の2種類がありますが、どちらも総所得金額から税率を算出しているため、副業の収入が黒字になると所得税・住民税ともに割高になることがあり、反対に副業が赤字になると会社員の給料から天引きされた金額が戻ってくることもあります。

住民税に関しては、確定申告の際に「普通徴収」を選ぶと会社からの給与分の住民税は会社に、副業分は自宅に納付書が届くようになります。

やむを得ない事情があって会社に副業を報告できない場合は、「普通徴収」を選びましょう。副業によって住民税額が増えても、増えた分の請求は自宅に送られます。また会社にも確定申告にもマイナンバーを提示しますが、そこから調べることはできない仕組みになっているので、確定申告が原因で会社に知られることはありません。

ですが前述した通り、副業をするときは会社に確認を取っておくことをおすすめします。副業を認めている会社が増えていると言っても、現実には副業することが難しい職場もあり規則に準ずることが求められます。

何よりも副業をすることで本業に身が入らない、疲労で仕事にしわ寄せが来る、職場での人間関係が悪化するなどのトラブルに発展する可能性も考えられます。副業がすぐに軌道に乗るケースばかりではありませんし、会社を辞める予定がない場合は特に、職場を優先し常識の範囲内で副業を行いましょう。

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副業としておすすめの業種とは

それでは、会社員が行う副業にはどのようなものがあるでしょうか。本業に支障をきたさない仕事を選ぶこと、持っているスキルを活用できること、好きなことを仕事にすることが副業を選ぶポイントです。将来的に独立してフリーランスになったり、起業したりする可能性がある人は、まず副業で実績を積んでいきましょう。

Web系副業

副業できる仕事として注目されているのが、Web系の副業です。PCがあれば自宅でもどこでも、時間や場所を選ぶことができ、スキルが身について将来的な独立などに役立てることができることなどが人気の理由としてあげられています。

クラウドソーシングサービスやフリーランスエージェントなどの求人案件でも、約9割がWeb関連の仕事とも言われ、リモート案件も揃っていることから需要の高さが分かります。

Web系の仕事には、「Webエンジニア」「Webデザイナー」「Webライター」「動画クリエイター」「Webマーケター」などがあります。

「Webエンジニア」「Webデザイナー」は近年ではリモート案件も増えていますが、フリーランスでも基本的に常駐型がメインの専門職です。エージェントサービスではより専門的なスキルを求められる傾向にあるため、スクールに通い、勤め先の会社で1年以上エンジニアやデザイナーとしての経験などが問われることが多いでしょう。

レバテックフリーランスでITエンジニアの求人・案件を見ると、85,653件(2024年9月4日時点)、その中でリモート案件は38,799件あります。

一方でリモート案件が多いのは「Webライター」「Webマーケター」「動画クリエイター」などです。

Webマーケターは「Webディレクター」「リスティング/ディスプレイ広告対策」「SNS広告対策」「SEO対策」など様々な役割や肩書きを持っていることが多く、案件によってはその境界線も曖昧です。予算内で効果検証や施策を行うため実績が求められるでしょう。

動画クリエイターはYouTubeやInstagramなどで動画編集のニーズが高まっており、常に人手不足の状態とも言われています。スクールなどでスキルを身につける必要がありますが、実績が少なくても参画しやすいと言われています。

ブログ・アフィリエイト

ブログやアフィリエイト記事を書いて収入を得る仕事で、Webライターをしながらアフィリエイト記事などを書いている人も多くいます。サラリーマンをしながら転職や投資などのブログなどを立ち上げている人もいます。

収入にはそれぞれ格差がありますが、手軽に始められることや仕事のない週末などにできる仕事であることなどから、取り組みやすいのも特徴です。

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まとめ

現在は、副業をしていることが珍しいことではなくなりました。いきなり事業を始めるよりも会社員をしながら個人事業主という形で本業かを目指す人も多くなっています。

とはいえ、副業をしやすい環境が完全に整えられているわけではなく、また会社員が副業で個人事業者となるか、開業するかどうかは仕事内容や収入、本業との両立を考えながら行う必要があります。

副業を始めるときは、同時に確定申告や税金などについても自分なりに調べて検討することをおすすめします。副業をしながら税金や確定申告などの知識を身につけていくことで、事業化してもスムーズに運営できるでしょう。

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