業務委託契約の税金|所得税・住民税の概要や確定申告の方法とは

最終更新日:2024年10月04日


この記事のまとめ

  • 業務委託で働くフリーランスや個人事業主は、確定申告で所得税や住民税などを納付する必要がある
  • 業務委託契約の種類のうち、請負契約は成果物、委任契約は業務の遂行自体に対して報酬が支払われる
  • 税金を滞納すると、延滞税や無申告加算税、重加算税などのペナルティが発生する

業務委託契約を結んで生計を立てるフリーランスや個人事業主は、確定申告を自分で行う必要があります。しかし、独立したての人の中には、確定申告や税金について難しく感じる方も多いでしょう。

そこで本記事では、業務委託で働く人にかかる所得税・住民税の概要や計算方法、確定申告の注意点について解説します。正しい税金の知識を持ち、ペナルティを受けないようにしましょう。

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業務委託契約とは?

「業務委託契約」は、クライアントに雇用されずに仕事を受ける契約形態を指します。雇用関係はないので、自分とクライアントが対等の立場になるのが特徴です。多くのフリーランスや個人事業主が業務委託契約で仕事をしています。

業務委託契約は大きく「請負契約」「委任契約(準委任契約)」の2種類に分けられます。それぞれの概要は以下で見ていきましょう。

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業務委託契約の種類について

業務委託における「請負契約」「委任契約(準委任契約)」の違いは、何に対して報酬が出るのかです。ここでは、各契約形態の特徴を解説します。

請負契約

「請負契約」とは、主に成果物の納品により報酬を受け取るタイプの契約形態です。

請負契約で働きやすい職種としては、ライターやWebデザイナー、イラストレーター、エンジニアなどが挙げられます。業務委託には企業から企業への依頼も含まれるため、製造業などの企業が大きな案件を受注する際も請負契約と呼ばれます。

注意すべきポイントは、成果物を制作するまでに時間がかかっても報酬には反映されないこと。請負契約で受注する際は、成果物完成までにどれだけの時間や労力が必要かを計算し、事前に交渉するのが大切です。

委任契約(準委任契約)

「委任契約(準委任契約)」は成果物の納品ではなく、業務の遂行自体に報酬が支払われる契約形態です。専門的なスキルや資格を持つ人が一定の時間内に業務を行うことが多く、成果物を完成させる義務はありません。

担当する仕事を事前に細かく確認する必要があり、契約時に聞いていなかった作業が後から追加されないよう注意しないといけません。もしそのようなことがあれば、契約内容と報酬について再交渉しましょう。

委任契約と準委任契約の違いは業務内容です。委任契約は法律行為、準委任契約は法律以外の業務全般に適用されます。

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業務委託の確定申告について

業務委託で一定の収入を得た場合、確定申告が必要です。確定申告の必要性は、所得の種類・金額で決まります。所得金額によっては確定申告が必要ないケースもあります。

確定申告が必要なケース

業務委託において確定申告の対象かどうかは、所得金額(売上から経費などを差し引いた金額)で決まります。所得の種類は、業務委託を個人事業主・フリーランスとして行っているか、給与所得者が副業として行っているかで変わります。

個人事業主やフリーランスの場合、業務委託で得る所得は「事業所得」です。事業所得の場合、所得金額が48万円以上のときに確定申告をする必要があります。

給与所得者の副業である場合は「雑所得」です。雑所得では、所得金額20万円以上で確定申告が必要になります。

確定申告が不要なケース

上記を満たさない場合、確定申告は必要ありません。ただし、確定申告をすると税の還付を受けられる可能性があります。

業務委託で受け取った報酬が源泉徴収されているかどうか確認しましょう。差し引かれている所得税額が多ければ、確定申告で還付されます。

また、確定申告の対象でなくても、住民税の申告が必要な場合もあります。確定申告をしていれば別途で計算・申告する必要はありません。

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業務委託で働く人にかかる税金の種類

業務委託契約で働くフリーランスや個人事業主は、所得を自身で計算し、税金を支払う必要があります。しっかりと理解して正しく納税しないといけません。ここでは、業務委託で働く人にかかる税金の種類を紹介します。

所得税

所得税とは、個人の所得に応じてかかる税金です。業務委託で受け取る報酬は事業所得や雑所得であり、所得税が課されます。

確定申告の際は、所得税額を計算して申告しないといけません。1年間の所得合計から所得控除を差し引いた「課税所得」に、所得税率を掛けて所得税額を出します。計算方法や必要経費の範囲は事業所得か雑所得かで変わるため、詳細を確認しておきましょう。

住民税

住民税は住んでいる自治体に納める税金であり、道府県民税と市町村民税を指します。前年の所得で決まる所得割と、定額でかかる均等割を合わせた金額が課されます。

確定申告をもとに決定されるため、別途の申告は必要はありません。6月頃に届く納付書を参照し、期限までに納めましょう。

その他の税金

業務委託では、他にも個人事業税や消費税がかかります。

個人事業税は個人事業主が都道府県に支払う税金です。税率は事業内容によって異なり、3〜5%に定められています。確定申告をしていれば自分で計算する必要はありません。個人事業税がかかる条件は以下の通りです。

  • 前年度の所得が290万円以上
  • 法律で定められた業種に当てはまる

また、消費税がかかるケースは以下の通りです。

  • 2年前の売上が1,000万円を超えたとき
  • 前年の1/1〜6/30の所得が1,000万円を超えたとき

業務委託の売上には消費税がかかるものの、多くの場合免税になると考えられます。

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業務委託で働く人の税金の計算方法

多くのフリーランスや個人事業主にとって必要な所得税の計算方法を紹介します。

所得税の計算方法は、まず1年間の所得を計算するところから始めます。所得とは、収入(売上など)から必要経費を差し引いたものです。そこから基礎控除や青色申告特別控除、医療費控除などを引いていきましょう。最終的な金額が所得金額となります。

その所得金額に国税庁で決められている税率を掛け、さらに税額控除と呼ばれる特定の控除を差し引いて出た金額が所得税額となります。

所得控除や税額控除の内容・金額は個人差があります。確定申告の際は税務署や税理士、青色申告会や商工会などに早めに相談し、サポートしてもらうのがおすすめです。

住民税は、所得に住民税率を掛けた金額から控除を差し引いた「所得割額」と、一律で決まっている「均等割額」を足して出します。自分で計算する必要はありませんが、知識として知っておくと良いでしょう。

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源泉徴収と確定申告について

税金が先に徴収される源泉徴収を受けている場合は、確定申告すれば徴収されすぎた分が還付されることもあります。可能なら確定申告するのがおすすめです。

源泉徴収は雇用契約で働く人なら必ず行われますが、業務委託契約の場合は決められた種類の報酬にのみ行われます。個人なら原稿料や講演料、弁護士や司法書士など特定の資格を持つ人に支払う報酬、映画やテレビに出演する際の報酬がこれに当たります。

赤字の場合は確定申告する必要はありません。ただ、確定申告をすれば翌年の黒字額と相殺可能なので、確定申告するメリットは大きいといえます。

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税金の納付方法

前述した税金はすべて、対象となる人であれば支払う義務があります。住民税と個人事業税は市区町村から納付書が届くため、期間内に支払いましょう。所得税と消費税は、翌年の確定申告で納付してください。

期間内に税務署で直接納付するのが一般的な確定申告のやり方です。ただ、税理士に任せている、または確定申告用紙の記載方法や内容チェックをあらかじめ商工会でサポートしてもらっている場合は、必要書類のみを税務署に郵送すれば手続きが済みます。

なお、e-Taxという電子申請なら、自宅から好きな時間に書類を提出することが可能です。

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確定申告の注意点

業務委託契約の仕事である程度の収入を得ているなら、税金は納付しないといけません。確定申告は毎年ある手続きなので、苦手意識があるなら税理士にお願いするのも手です。ここでは、確定申告時の注意点を見ていきましょう。

控えを用意する

初めての確定申告で忘れないよう注意したいのは、控えを準備すること。税務署で直接提出する場合にも郵送する場合にも、控え(郵送の場合は返信用封筒も)を一緒に提出すれば受付印を押して戻してもらえます。

控えは確定申告を行ったことを示す大切な書類となるため、忘れずに提出してください。

確定申告が終わったらすぐに次年度の準備を

確定申告をスムーズに進めるためには、毎月もしくは数ヶ月に一度など、定期的に帳簿の管理をするのがおすすめです。忙しさに追われ、帳簿管理を忘れてしまうフリーランスや個人事業主は多くいます。

確定申告の期間は、基本的に2月16日から3月15日までの1ヶ月間だけです。まだ時間があると思っているとすぐに期限が来て、焦って書類を作成する人も少なくありません。今は便利な会計ソフトも低コストで利用できるので、日頃からコツコツと帳簿管理をしましょう。

青色申告はあらかじめ申請しないと利用できない

青色申告を利用する際は、あらかじめ「青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出しておく必要があります。そして、青色申告承認申請書を受け付けてもらうには、開業届が提出されていることが前提となります。

開業届と同時に申請書を提出するのも可能です。これからフリーランスおよび個人事業主として独立する場合は、両方提出しておくことをおすすめします。

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税金を納付しなかったらどうなる?

納めるべき税金を期限内に納付しなかった場合、ペナルティとして新たな税金が加算されます。課される可能性があるのは「延滞税」「無申告加算税・過少申告加算税」「重加算税」です。

最後に、税金を納付しなかった場合に起こることについて解説します。税金の正しい知識を持ち、必ず納めるようにしましょう。

延滞税が発生する

延滞税は、定められた割合が日数に応じて加算されます。延滞税が課されるケースは、期限を過ぎても税金を完納していないとき、申告や処分があった場合に修めるべき税額があるときです。

法定納期限の翌日から納付が終了する日までの延滞税を支払わないといけません。延滞税の年間の割合は次の通りです。

  • 納期限の翌日~2ヶ月を経過するまで:7.3%
  • 納期限の翌日~2ヶ月を経過した日以後:14.3%

法定納期限は基本的に申告した日を指します。払い忘れに気づいたら、できるだけ早く申告しましょう。

無申告加算税・過少申告加算税が発生する

申告期限を過ぎても無申告だったときは、無申告加算税が課されます。また、納めた税金が少なかったとき、還付された税金が多かったときは、過少申告加算税を払う必要があります。

無申告加算税は納税額の15〜30%です。法定申告期限が2024年1月1日以後の場合、納付すべき税額に対する無申告加算税の割合は次の通りです。

  • 50万円までの部分:15%
  • 50~300万円の部分:20%
  • 300万円を超える部分:30%

ただし、期限内に申告をする意思が認められる条件をすべて満たすときは、無申告加算税がかかりません。

過少申告加算税は、新たに納める必要がある税金の10%が基本です。税務署の調査を受ける前に自分で修正申告を行った場合は、過少申告加算税は発生しません。

重加算税が発生する

重加算税とは、確定申告の未遂行や所得の隠蔽などを故意に行い、脱税があった際に課される税金です。

重加算税の税率は本来納入すべき税額の35〜40%であり、重い罰金だといえます。5年以内に重加算税が課される行為を繰り返すと通常の重加算税に10%が加算され、税率は45〜50%になります。

重加算税は支払猶予がなく、課されたらすぐに納付しなければなりません。期限を過ぎても重加算税を納めなかったときは差し押さえになることもあります。

また、重加算税が発生した場合、社会的信用を失います。取引先に不利益を与え、税務署のブラックリストに入るでしょう。故意でなくても、客観的な状況から重加算税を課されるケースもあります。重加算税を防ぐために、正確で潔白な申告が重要です。

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