NEW 業務委託を初めて受ける人が契約書作成時に注意すること・成功のコツを解説

業務委託が初めての人向けの基礎知識

業務委託とは、企業や個人が作業の一部を外部に委託することを指します。初めて契約する際に知っておきたい業務委託の特徴は、以下の3点です。

• 委託者と受託者が対等な立場で契約を結ぶ
• 仕事の進め方や時間管理は受託者に任される
• 成果物の納品や役務の提供に対して報酬が支払われる

参照：e-Gov「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」

雇用契約とは異なり、業務委託では作業する時間・場所の指定がなく、自由度の高い働き方が可能となります。ただし、その分受託者が負う責任も大きくなります。

「業務委託とは？契約形態や正社員・アルバイト・派遣との違いを簡単に解説」では契約形態や他の働き方との違い、メリット・デメリットなどにも言及しているので、あわせて参考にしてください。

初めて業務委託を受ける前に知るべきこと

初めて業務委託を受ける人に向けて、契約を結ぶ際の流れと、契約書以外に必要となる書類を紹介します。

契約までの流れ

業務委託が初めての方は、契約までの大まかな流れを把握してから着手しましょう。業務委託を始める際の一般的な流れは、以下のとおりです。

契約までの流れ	具体的な取り組み
1.受託者の選定	委託者が複数の候補の中から受託者を選ぶ。
2.条件交渉	委託者と受託者が報酬や納期、権利などの条件を話し合う。
3.契約書作成	合意した内容をもとに契約書を作成する。
4.契約締結	双方が契約書に署名し、正式に契約を結ぶ。

上記を把握していれば、業務委託をスムーズに始められるでしょう。

契約書以外に必要な主な書類

業務委託で働く際は、契約書以外にも書類が必要な場合があります。契約書とは別に必要となる主な書類と用途は以下のとおりです。

必要書類	用途
見積書	受託者が提供するものを、契約締結前に委託者に提示する際に使用する。商品・サービスの内容や数量、金額などを記載。
請求書	報酬の請求時に使用する。金額や取引内容、年月日などを記載。
確定申告書	所得金額や所得税を申告する際に使用する。提出先は税務署。

参照：国税庁「所得税等の確定申告とは」

初めての取引をトラブルなく進めるために、契約書以外の書類も活用しましょう。
業務委託に必要となる書類は、前もってテンプレートを用意しておくことがおすすめです。

業務委託の所得を申告する際のやり方を知りたい方は、「業務委託の報酬に確定申告は必要？基準となる所得金額や手続き方法を紹介」を参考にしてください。

初めて業務委託契約書を作る際の注意点

業務委託契約書を作成する際は、報酬や知的財産権などいくつか注意すべき点があります。以下で主な注意点を見ていきましょう。

重要な項目を精査する

契約書の中でも特に重要な項目を精査すれば、初めての方でもトラブルを回避しやすくなります。
業務委託契約書の内容を精査する際は、主として以下に着目してください。

重要な項目	精査のポイント
業務の明確さ	業務の内容や範囲に曖昧な点がないか確認する。
納期と検収基準	いつまでに、どのような状態で納品するかを明確にする。
報酬の計算方法	固定報酬か成果報酬かを明確にする。報酬の算出方法も確認。
契約期間	いつからいつまでの契約か、自動更新条項があるかを確認する。
責任の所在	トラブル発生時の責任範囲を明確にする。

契約内容に不明な点があれば、必ず締結前に確認しましょう。

「業務委託契約書の作成は必要？記載内容や注意点を解説」では、契約書に盛り込む内容について詳しく解説しているので、あわせて参照するのがおすすめです。

金銭面の条件を確認する

金銭面の条件は、初めて業務委託の仕事をする人にとって特に気になる点といえるでしょう。以下にお金に関わる主な条件の項目と確認内容をまとめました。

項目	確認内容
報酬	金額が明確に記載されているか確認する。
支払い時期	毎月、業務完了時、分割払いなど、支払いのタイミングを確認する。
支払い方法	銀行振込、現金、その他の方法のどれなのかを確認する。
源泉徴収	源泉徴収されるかどうかを確認する。
追加費用	交通費や材料費などの追加費用を、誰がどれくらい負担するかを確認する。

上記を明確にすれば、報酬関連のトラブルを未然に防げます。
自分の適正な報酬がどれくらいなのか分からない方は、「フリーランスの単価の決め方は？交渉のコツや報酬を上げる方法も解説」を参考にしてください。

損害賠償条項を確認する

損害賠償条項は、業務遂行中に発生した損害の責任と補償について定める項目です。業務委託が初めての方は、以下を重点的に確認しましょう。

項目	確認内容
賠償の範囲	どのようなケースで賠償責任が生じるかを確認する。
賠償額の上限	賠償金額に上限が設定されているかを確認する。
免責事項	不可抗力による損害など、賠償責任が免除される条件を確認する。

上記を十分に理解し、必要に応じて交渉すれば、適切なリスク管理が可能となります。

なお、リスク回避のために損害保険に入るのも手です。「個人事業主の損害保険の月額は？生じるリスクや加入するべき制度を紹介」では保険の種類を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

知的財産権の扱いを確認する

成果物の知的財産権の扱いを決めるのは、トラブルを未然に防ぐために重要です。以下の項目を忘れずに確認しましょう。

項目	確認内容
著作権の帰属	成果物の著作権が委託者に譲渡されるのか、受託者に残るのかを確認する。
特許権の扱い	発明が生まれた場合の特許権の帰属を確認する。
使用権の範囲	委託者がどの範囲で成果物を使用できるかを確認する。

上記を明確にすることで、将来的な権利関係のトラブルが防げます。
業務委託が初めての方は、知的財産権に関する正しい知識を身に付けておきましょう。

秘密保持条項を確認する

秘密保持条項は、業務委託の仕事で知り得た機密情報の扱いを定める項目です。以下の項目を確認しましょう。

項目	確認内容
秘密保持の対象	どの情報が機密情報に該当するかを確認する。
秘密保持の期間	どれくらいの期間、秘密保持の義務が続くかを確認する。
第三者への開示	どのような場合に第三者への開示が許可されるかを確認する。

上記を十分に理解すれば情報漏洩のリスクが低くなり、初めて取引する委託者から信頼を得やすくなります。

契約の解除方法を確認する

念のため、業務委託の契約解除条件も確認しておくのが得策です。以下の項目に着目してください。

項目	確認内容
解除の条件	どのような場合に契約解除が可能かを確認する。
解除の手続き	解除の意思表示の方法や期限を確認する。
解除時の精算	解除時の報酬の精算方法や成果物の扱いを確認する。
違約金	契約解除に伴う違約金の有無や金額を確認する。
解除後の義務	守秘義務など、解除後も続く義務があるかを確認する。

上記を事前に把握しておけば、業務委託が初めての方も万が一の際に慌てずに対応できます。

初めてでも業務委託を成功させるためのポイント

最後に、初めての業務委託を成功させるための6つのポイントを紹介します。

向き・不向きを確認してから始める

業務委託は誰にでも向いているとは限りません。初めて業務委託に挑戦する方は、自己分析して自分に合っているか確認しましょう。

以下は業務委託に向いている人の特徴です。

• 自己管理ができる
• コミュニケーションが得意
• 専門性や技術力がある
• 変化や不確実性に強い
• 自己啓発の意欲が高い

一方、業務委託に不向きな人の特徴は以下のとおりです。

• 指示がないと行動できない人
• リスクを極端に嫌う人
• 人間関係の構築を億劫だと思う人
• 計画的に行動するのが苦手な人
• 専門性や技術力に自信がない人

上記の特徴を踏まえ、自分の性格やスキルと照らし合わせて適性を判断しましょう。

業務委託の大変な面について詳しく説明している「業務委託はやめたほうがいい？仕事のメリットや契約の注意点を解説」を読むのも、適性の判断に役立ちます。あわせてご覧ください。

事前準備を万全にする

初めて取り組む人が業務委託を成功させるためには、事前の準備が重要になります。やることリストと具体的な取り組みを以下にまとめました。

やることリスト	具体的な取り組み
自己分析	自分の強みや弱みを客観的に分析する。
スキルの棚卸し	培ってきたスキルやこれまでの経験を整理する。
ポートフォリオの作成	過去の実績をまとめ、アピールポイントを明確にする。
資格の取得	必要なスキルの習得や業務に役立つ資格があれば取得する。
ネットワークの構築	同業者や潜在的な顧客とのつながりを作る。
財務計画の策定	収支のシミュレーションを行い、資金計画を立てる。

受託前に十分に準備することで、業務委託が初めての方もスムーズなスタートが切れます。

ポートフォリオの作成のコツを知りたい方は、「ポートフォリオとは？作る意味やビジネスでの必要性、構成例などを解説」を参考にしてください。

トラブル発生時の対処法を知って備える

業務委託では報酬の未払いや一方的な契約解除など、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。いざというときに慌てないよう、以下のような対処法があることを知っておきましょう。

対処法	具体的な取り組み
冷静な状況分析	感情的にならず、問題の本質を冷静に分析する。
早期の報告・相談	問題が大きくなる前に、早めに委託者に報告・相談する。
解決策の提示	具体的な解決策を提示し、建設的な話し合いをする。
記録の保管	メールやチャットの履歴など、取引の記録を保管する。
専門家への相談	必要に応じて弁護士などの専門家へ相談する。

上記の対処法を覚えておけば、初めてトラブルに直面したときも冷静に対応できます。「業務委託のトラブル事例｜仕事内容や報酬の問題解決・回避に必要な方法とは」を読み、どのようなことが起こりうるかを把握しておくのも効果的です。

良好なコミュニケーションを心がける

委託者との良好なコミュニケーションが業務委託の成功の鍵となります。業務委託が初めての方は、委託者とのコミュニケーションにおいて以下を意識するとよいでしょう。

意識すること	具体的な取り組み
定期的な報告	進捗状況を定期的に報告し、透明性を保つ。
質問や確認	不明点があれば躊躇せずに質問し、認識のズレを防ぐ。
提案の姿勢	改善点や新しいアイデアを積極的に提案する。
迅速な返答	連絡には速やかに返答し、相手に安心感を与える。
対面でのやりとり	可能なかぎり対面でのミーティングの機会を設ける。
明確の文章表現	メールやチャットでのやりとりにおいて、誤解が生まれない表現を使用する。

上記を心がければ、委託者・受託者の双方が信頼し合って取引ができるでしょう。

信頼関係の構築に注力する

初めての業務委託で委託者との信頼関係の構築に力を入れれば、継続的に仕事を依頼してもらえる可能性があります。相手とのつながりを強固にするために、以下を意識してみてください。

意識すること	具体的な取り組み
相手の立場への理解	委託者のニーズや課題を理解し、共感する姿勢を持つ。
質の高い仕事	相手の期待を上回るパフォーマンスで信頼を勝ち取る。
長期的視点	短期的な利益だけでなく、長期的な関係構築を目指す。
感謝の気持ち	相手を尊敬し、感謝の気持ちを言葉で伝える。

上記を意識することで、「またこの人に仕事をお願いしたい」と思ってもらえるでしょう。

心配な場合はエージェントを利用する

業務委託の手続きが初めてで不備やトラブルが生じないか不安を感じる方は、エージェントの利用を検討しましょう。エージェントは、以下のようなサポートを提供しています。

• 希望条件に合った案件の紹介
• 交渉の代行
• 契約書の作成支援
• トラブル発生時の対応
• 各種手続きの代行

エージェントを利用すれば、初めての方も安心して業務委託に取り組めるでしょう。
「フリーランスエージェント徹底比較　【2025年最新】」では29種類のエージェントのほか、選び方も紹介しているので、気になる方はぜひご覧ください。

まとめ

業務委託は、自由度の高い働き方を実現する魅力的な選択肢だといえます。ただし、初めて業務委託に臨む人が成功するには、契約内容に対する深い理解や入念な事前準備などが必要です。本記事で紹介したポイントを参考に、初めての業務委託をスムーズに進めましょう。