
最終更新日:2025年11月07日

「個人事業主は開業届を出す必要がある?」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。 個人事業主は開業届を出していない場合も罰則を科されることはありませんが、提出することによって税金面や信用面でのメリットを享受できます。 本記事では、個人事業主の開業届の項目や書き方、提出方法、注意点などを紹介します。開業を検討している方はぜひ参考にしてください。
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開業届は、正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、個人事業主が事業を開始する際に税務署へ提出する書類です。事業所得・不動産所得・山林所得を得る個人事業主が対象です。
また、開業時のほか、事務所の新設や移転、廃業などの際にも「個人事業の開業・廃業等届出書」が使用されます。
開業届は税務署の窓口でもらうか、国税庁のWebサイトからダウンロードして作成できます。
開業届の提出先は、納税地を管轄する税務署です。納税地は、自宅や事業所の所在地を基準に決定されます。なお管轄の税務署の所在地は、国税庁のサイトで確認できます。
開業届は、税務署へ直接持参するほか、郵送やオンラインでの提出も可能です。
開業届は、事業を開始した日から1ヶ月以内に提出する必要があります。開業を検討するときは、開業届の提出もスケジュールに含めて計画を立てましょう。
開業届を提出しなかった場合の法律上の罰則は規定されていません。ただし、開業届を出さないことで受けられなくなる税制上のメリットがあります。また、利用できる公的支援や融資、税務署からの信頼度に影響が出るおそれがあります。
個人事業主になることによる優遇を受けたい場合は、期限を守って開業届を提出することが望ましいでしょう。
開業届を出さなかったときのことを知りたい方は、「フリーランスは開業届を出さない場合も罰則はない? 提出のメリットも解説」の記事を参考にしてください。
出典:
国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
国税庁「個人事業の開業・廃業等届出書」
国税庁「税務署の所在地などを知りたい方」
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取るここでは、開業届に記載する各項目とその書き方について詳しく説明します。開業する個人事業主は参考にしてください。
まず、左上部分に提出先となる所轄の税務署名を記します。
そして提出日も記載します。開業届は、事業開始等の事実があった日から1ヶ月以内に提出してください。
納税地は主に税務署と連絡を取る住所で、事業の形態や規模により決まります。自宅兼事業所の場合は自宅住所を納税地とします。
以下の基準をふまえて、適切な住所を記入してください。
| パターン | 納税地 | 上記以外の住所地・事業所等 |
|---|---|---|
| 自宅で開業 | 自宅の住所 | 不要 |
| 事業所を設置して納税地は自宅 | 自宅の住所 | 事業所の住所 |
| 納税地は事業所 | 事業所の住所 | 自宅の住所 |
事業主となる本人の氏名・フリガナや生年月日などの情報を記入してください。
個人番号の欄には、マイナンバーカードや通知カードなどに記されている12桁の数字を記入します。
職業欄には、具体的な職業名を記入します。
開業届の職業欄の記載内容は個人事業税の徴収にも関わってくるため、正確に記載しましょう。
屋号は、事業の名称やブランド名にあたります。屋号に設定する店舗名や事務所名、芸名やペンネームなどを記入します。
屋号なしにする場合は、空欄で問題ありません。
届出の区分を記載します。新規開業する個人事業主が開業届を提出する場合、「開業」にチェックを入れるのみで記入完了です。
事業を引き継いで開始する場合は、前事業者の住所と氏名を記入してください。
所得の種類は「事業所得(農業所得)」「不動産所得」「山林所得」です。
個人事業主として営む事業の所得に該当するものにチェックを入れましょう。
開業を報告する事業の開業日を記入します。開業日は、実際に事業活動を開始した日を記入するのが望ましいですが、明確な規定はありません。
開業届は、事業開始等の事実があった日から1ヶ月以内に提出する必要があります。
個人事業主が新規開業する場合、この欄は記入不要です。
すでに開業しており、事務所等を増設・移転・廃止したときには所在地や電話番号を記入します。
個人事業主が新規開業するケースにおいては、この欄は記入する必要はありません。
個人事業を廃業するうえ、法人を設立する場合にこの欄の必要項目を埋めます。
開業届の提出とともに提出する書類がある場合に記入する欄です。
開業届と同時に提出する書類には以下のものがあります。
提出書類がある場合は、該当する箇所に「有」にチェックを入れましょう。
青色申告を利用しようとする個人事業主は、青色申告承認申請書を提出する必要があります。「青色申告承認申請書とは?書き方や届出の方法、提出期限などを解説」の記事では申請方法について詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
職業欄に記した内容について、より具体的に記載し、手がける事業が具体的に分かるように記します。
どのような事業を行うのかを簡潔に記し、対象とするサービス内容や商品について記載しましょう。
個人事業主が従業員を雇う場合、この欄を記入します。従業員を雇わない場合、この欄は空欄にします。
「専従者」は生計を一にする家族従業員、「使用人」は一般の従業員を指します。雇用人数を記入し、給与の支払い方法を明記してください。
「税額の有無」は、源泉徴収の義務の有無を記入します。給与支払いがある場合は原則として源泉徴収が必要ですが、例外もあります。
源泉所得税の納期の特例は、常時10人未満の従業員を雇用する事業者が申請できます。
従業員が常時10人未満の場合、申請手続きを行うと源泉所得税を年2回にまとめて納付できます。この制度を利用する場合、「有」にチェックを入れます。
従業員を雇っている個人事業主は、記入が必要です。
「給与支払開始年月日」には、従業員へ給与を支払い始める日を記入します。すでに支払っている場合は実際の日付を、これから支払う予定であれば支払い開始予定日を記入してください。
開業届の「その他参考事項」欄には、届出内容に関して補足や特記事項があれば自由に記載します。
たとえば、事業の特徴や特別な事情、提出にあたっての注意事項などを簡潔に記入します。ふさわしい補足があれば、誤解を避ける意味で書いておくと申告手続きがスムーズになります。
特に記載が不要な場合は空欄のままにしてください。
個人事業主の開業届関連の手続きを税理士に依頼している場合は、こちらの欄を記入します。依頼先の税理士の氏名・事務所名・所在地・連絡先の情報を記載しましょう。
税理士に依頼せずに自力で手続きを行っている場合は、こちらの項目は空欄のままにしてください。
出典:
国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
国税庁「個人事業の開業・廃業等届出書」
国税庁「個人事業の開業・廃業等届出書 記載例」
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取る開業届の提出は、個人事業主にとって重要なステップです。
開業届を提出する方法は、主に「e-Taxで提出する」「税務署に直接提出する」「時間外収受箱に投函する」「郵送する」の4つです。それぞれの特徴を理解して、自分に合った方法でスムーズに手続きを進めましょう。
「e-Tax」を利用すれば、オンラインで開業届を提出できます。
e-Taxで提出するためには、e-Taxにアクセスできる端末やインターネット環境などが必要です。また、マイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォンを持っていない場合は、公的個人認証サービスに対応したICカードリーダライタも用意しましょう。
e-Taxはメンテナンス時間を除いて24時間利用が可能で、本人確認書類の提出も不要です。e-Taxを利用すればオンライン上で開業届の作成と提出を円滑に終えられます。
個人事業主が開業届を提出する方法の一つは、管轄の税務署に提出しに行くことです。
開業届を作成したら、税務署の開庁時間である平日の8時30分から17時までに窓口へ行きましょう。
開業届を税務署に直接提出する際には、本人確認書類を提示します。本人確認がとれる書類を忘れずに持参してください。
個人事業主が開庁時間外に税務署で提出する場合は、24時間投函が可能な時間外収受箱を利用します。
開業届が作成できたら、管轄の税務署の時間外収受箱に投函してください。時間外収受箱を活用する際は、本人確認書類の写しを添付して提出しましょう。
個人事業主は、郵送によって開業届を提出できます。管轄の税務署宛に開業届を郵送しましょう。
開業届を記入して書類を完成させて、本人確認書類の写しも用意してください。必要書類が用意できたら、重さに応じた料金の切手を貼って郵送します。
出典:
国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取るここでは、個人事業主が開業届を提出することで得られるメリットを紹介します。
個人事業主が開業届を提出して屋号を設定した場合、屋号が入った銀行口座を開設できるようになります。
屋号が入った銀行口座があれば、個人名の銀行口座を使用するときと比べて信頼性が上がるでしょう。また、事業用の銀行口座を開設することでプライベートの資金と分けて管理しやすくなります。
開業の際に屋号を設定しようと考えている方は、「個人事業主に屋号は必要? 名称の例や変更手続きについて解説」の記事もご覧ください。
個人事業主が開業届を提出するメリットの一つは、審査を通過しやすくなることです。
事業融資を申請する際、金融機関から開業届の控えの提出を求められるケースが存在します。開業届が未提出だと、融資審査が通らない可能性もあるでしょう。また、オフィス賃貸契約や事業者向けサービスの利用時にも、開業届の控えが必要になることがあります。
開業届を提出しておけば、これらの融資やサービス契約の審査をスムーズに通過できるでしょう。
小規模企業共済は、個人事業主向けの積み立てによる退職金制度です。
小規模企業共済に加入するには、確定申告書の控えの提出が求められます。しかし確定申告書の控えの代わりに開業届の控えを提出することによっても加入が認められます。
初年度から小規模企業共済への加入を希望している方は、開業届を提出しておきましょう。
個人事業主向けの他の制度について知りたい場合は、「個人事業主の保険|加入を検討した方がいいおすすめの制度を紹介」の記事を参考にしてください。
出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構「小規模企業共済とは」
個人事業主が開業届を提出するメリットの一つに、ビジネス用のクレジットカードを作れることが挙げられます。
個人事業主がビジネス用のクレジットカードを持つことで、事業用とプライベート用のカードを使い分けることが可能になります。事業用資金の流れが視覚化されるでしょう。
個人事業主におすすめのカードの選び方について詳しく知りたい方は、「個人事業主向けのクレジットカードのおすすめは?メリットや注意点も紹介」の記事で解説しているのであわせて参考にしてください。
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取るここでは、個人事業主が開業届を提出する前に確認すべき注意点を3つ紹介します。
退職後に個人事業主への転向を考えている方は、失業手当の受給資格を確認してください。開業届を提出すると、ハローワークに登録した求職者として認められなくなる可能性が高く、失業手当の給付対象外になるおそれがあります。
失業手当は、積極的に就職活動を行う人を対象とした制度です。開業届を提出した時点で求職者ではなくなるため、支給対象外となるでしょう。
失業手当の詳細については、「退職したらやることにはどんなことがある?手続きや注意点をしっかり理解しよう!」を参考にしてください。
配偶者の健康保険の被扶養者である場合、個人事業主として一定の所得(おおむね年間130万円以上)を得ると、扶養から外れる可能性があります。健康保険組合ごとに扶養の基準が異なるため、開業前に確認することが重要です。
扶養から外れると、健康保険料の負担が発生し、社会保険料の支払いが必要になることがあります。
開業届を提出する前に、事業の収入見込みを把握し、扶養の適用条件と照らし合わせて判断しましょう。
個人事業主の扶養条件について詳しく知りたい場合は、「フリーランスは扶養に入れる?制度を利用する条件や年収・収入の壁も解説」を参考にしてください。
個人事業主が一定以上の所得を得ると、確定申告の義務が発生します。2023年度の税制改正以降、基礎控除の適用後の所得が48万円以上の場合は確定申告が必要です。副業の場合は所得20万円を超えると申告義務が生じます。
確定申告の期限は、翌年の2月16日〜3月15日です。期限を過ぎると延滞税や無申告加算税の対象となるため、申告漏れがないように準備しましょう。
確定申告の詳細や手続き方法については、「確定申告は個人事業主の場合年収いくらから? ケース別の要不要や手順」をご参照ください。
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取る開業届の提出以外にも、個人事業主として必要な手続きがあります。以下の点を確認し、必要に応じて対応してください。
青色申告を希望する場合は、開業届とあわせて「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出してください。また、個人事業税の申告に必要な「事業開始等申告書」は、開業後に都道府県税事務所に提出が求められます。
許認可が必要な職種(飲食業・建設業など)は、開業前に必要な手続きを確認し、適切な許可を取得してください。親族を従業員として雇う場合は、「青色事業専従者給与に関する届出」を提出すれば給与を経費として計上できます。
個人事業主として必要な手続きの詳細は、「個人事業主になるには?開業届の項目や必要な手続き・届出などを解説」で解説しています。
出典:
国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
国税庁「A1-11 青色事業専従者給与に関する届出手続」
東京都主税局「事業を始めたとき・廃止したとき」
案件獲得を効率化するなら
希望にあう案件を受け取る開業届は、個人事業主としての活動を正式に始めるための重要な書類です。提出することで、や事業用口座の開設や融資審査の円滑化といった多くの利点を得られます。
個人事業主で開業届を出していない場合も罰則はありませんが、開業届を出さないと税制優遇や信用面で不利になる可能性があるため、早めの提出が推奨されます。
個人事業主としてのスタートをスムーズにするためにも、しっかりと準備して開業届を提出しましょう。
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