人の暮らしを豊かにするため、日々さまざまなものやアプリ、サービスの開発が日進月歩で行われています。利用者にとってはどんどん便利になるため嬉しい限りなのですが、開発を行う側であるエンジニアの作業は、より複雑で難しい作業や技術を求められるようになります。
そんな開発環境を改善すべく作られるのが“新しいプログラミング言語”です。今や言語は世界中に数百から数千ほどもあると言われていますが、それらが増え続ける背景には、今よりもっとよい開発環境にしたい、もっと便利なものを作りたいと願うエンジニアたちの思いがあります。
今回ご紹介するのは、そんな“新しい言語”のひとつであるSwiftです。そしてSwiftを使ってフリーランスを目指すために知っておきたい、案件獲得の方法や今後の需要、身に付けておきたいスキルなども併せてご紹介します。
Swift(スイフト)は2014年にApple社によって発表された、Apple製品のアプリ開発向けプログラミング言語です。
現在、Apple製品のアプリ開発はほとんどがSwiftで行われており、Swiftを身に付ければiPhoneやiPad、Apple WatchやMacなどで利用できるアプリを自由に開発することができます。
Swiftが誕生する以前、Apple社ではC言語を基にしたObjective-C(オブジェクティブ・シー)を利用していました。Objective-Cはその名の通りC言語にオブジェクト指向を取り入れたものですが、記述が独特で習得しにくい・理解が難しいというデメリットがありました。
Swiftは「Everyone Can Code」(すべての人に、コードを学び、書き、教える力を。)をコンセプトに、オープンソースで子どもから大人まですべての人が学びやすいよう配慮されています。海外では学校教育に取り入れているところも多く、今後も多く利用され続けられる言語だと考えてよいでしょう。
Swiftを使ったApple製品のアプリ開発には、Xcode(エックスコード)という統合開発環境(IDE)を利用します。
現在、Swiftを使った開発にはほとんどXcodeが使われています。Xcodeには、コンパイルからテスト・デバッグまで開発に必要な一連の流れをサポートする機能が入っており、Swiftでの開発をより効率的に行うことができます。
制作したアプリはApp Storeで配信することもできるため、アプリ制作から販売までの実践的なスキルを積みやすいのも大きなメリットです。
また、2020年9月にはWindowsでもSwiftでのアプリ開発ができるツールチェーンの発表が行われ、Visual studioなど必要なツールをそろえればWindowsアプリの開発も可能になりました。これにより現在は、SwiftでApple・Linux・Windowsのアプリ制作ができる環境になっています。
Swiftが発表されて以降、新しく開発されるアプリの多くはObjective-CからSwiftへと置き換わっています。
Objective-CがC言語から派生した複雑なプログラムである反面、Swiftはシンプルでモダンな記述になっており、誰でも学びやすく読みやすい印象となっています。
Objective-Cは、自由度の高いC言語と、やや制限のあるオブジェクト要素を一緒にしたものだと考えてよいかもしれません。そのため記述が複雑で理解が難しい面がありますが、一度理解してしまえば非常に使い勝手のよい言語だとも言われています。
Swiftが発表されてから新規に開発されるアプリはほとんどがObjective-CからSwiftに変わっていますが、Swiftの人気が非常に高くなっているかと言えばそうでもないのが現状です。その理由としては、Swiftが2014年に発表されたばかりのまだ新しい言語であり、アップデートを続けている途中だからです。
そのためまだObjective-Cを利用しているエンジニアも多く、SwiftとObjective-Cの間はもちろんC言語やC++との互換性があるため、今後も必要な部分を補いながら共存していく状態が続きそうです。
SwiftはObjective-Cの記述方法をもっとシンプルに、いわゆる“モダン”と呼ばれる記述の形に変えたものです。無駄を省いて時間も労力も短縮し、現在の開発に合った形だと言えるでしょう。
とはいえ、なぜそんなに人気があるのか分からないという人も多いでしょう。ここではSwiftが持つ特徴を解説していきます。
アプリ開発を得意とするSwiftですが、そもそもはC言語を基にして開発された言語のため、比較的汎用性が高いのも特徴的です。まだ誕生して間もないものの、2020年にはWindowsへの対応も可能になり、その進化は目を見張る早さがあります。
Swiftで行える主な開発は、モバイルアプリやゲーム開発です。しかし近年はWebアプリやシステム開発、サーバーサイドの開発も可能になってきているため、今後はさらにできることが増えていくとみられています。
Appleデバイスのアプリであれば、他の言語スキルがなくてもSwiftとXcodeの利用だけで開発することができます。
スキルと知識が豊富でなくても、コストをかけず気軽にアプリ開発に挑戦しやすいため、初心者が最初に選ぶプログラミング言語としておすすめです。
公式サイトにもあるように検索アルゴリズムのスピーディーさはObjective-Cの最大2.6倍、Python(パイソン)2.7の最大8.4倍となっています。作業の速さは、Swiftを使う上での大きな魅力であると言えるでしょう。
記述がシンプルだからこそ、誰でも記述しやすく、誰が見ても分かりやすいプログラムを作成することができます。
複雑な記述だとエラーを見逃してしまいがちですが、Swiftは記述が短くてシンプルなのでミスしにくく、エラーが起こった場合の修正も労力が少なくて済みます。
結果的に長期的な作業量や工程を減らすことができるため、Swiftならランニングコストを抑えることができます。クライアントにとって手間の削減になると同時に、エンジニアにとっても難しい修正が不要になるため、お互いにメリットを感じられます。
Swiftエンジニアが最も必要とされるのは、やはりApple製品においてのアプリ開発です。ただし関わる業界は幅広く、金融や医療、飲食や自動車業界など、さまざまな分野において需要があるでしょう。
特にSwiftは教育関係に力を入れており、世界における学校教育の場では、子ども向けプログラミング学習ツール「Swift Playgrounds(スイフトプレイグラウンズ)」(https://www.apple.com/jp/swift/playgrounds/)が活用されているところもあります。
子ども向けから大人向けまでさまざまな開発を担うSwiftですが、これからはもっと活躍の場が増えていくとみられています。発想次第では、どんな場所にも活躍の場が隠れているかもしれません。
フリーランスITエンジニアのための求人・案件情報サイトフリーランスハブでSwift案件を見ると、条件として“Swiftを用いた開発経験”を2年、もしくは3年以上求められるものが多くなっています(2021年8月25日時点)。
これはエンジニアの数自体は多い反面、熟練した技術を持つ人はあまり多くないITエンジニア業界の現状を表しているようです。また、フリーランスとして仕事を受注するならクライアントに信頼してもらうことが重要になるため、やはり数年の実務経験は必須条件であるとも言えるでしょう。
案件のトレンドとしては、自動車業界に関連するアプリ開発案件が目立ちます。また、今後はSwiftでの組み込み系開発も増えるとみられており、こちらもトレンドとして注視しておくとよいでしょう。
Swiftフリーランスエンジニアの単価相場・年収は、ITエンジニアの中でも比較的高い水準にあります。レバテックフリーランスを参考にご紹介していきます。
レバテックフリーランスでSwift求人・案件の月額単価相場を見ると、平均単価は79万円となっています。単純に12ヶ月で計算すると948万円になりますが、フリーランスは継続的な案件受注が確約されているわけではないことを理解しておきましょう。
Swiftの実務経験が1年~2年の場合、フリーランスエンジニアの単価はSwift案件の中でも低価格帯である40万円~50万円あたりになると予想されます。年収は480万円~600万円あたりだと考えてよいでしょう。
Swiftの実務経験が3年以上ある場合は、上流工程などの責任ある立場やマネジメントの経験を持つエンジニアも現れてきます。そのため経験によっては単価や年収が大きく分かれることになるでしょう。
平均的には単価60万円~80万円あたりが相場になりますが、責任ある立場を担えるエンジニアは単価90万円を超える場合もあります。年収は720万円ほどになりますが、その他の言語やスキル、知識や経験がある場合は1,000万円を超えることもあります。
ITエンジニアは実務経験を積むほど単価と年収が上がる傾向にありますが、ただ経験年数を重ねるだけでなく、さまざまなスキルを併せて身に付けていくことが必須です。
Swiftフリーランスエンジニアは、必ずしも企業に常駐して業務を行うばかりではありません。アプリ開発を得意とするSwiftなので、スキルと経験、そして信頼と実績さえあれば、リモートで業務を行える案件も多く見つけることができます。
ただし高単価案件を受注するなら、上流工程やマネジメントなどを経験する必要があります。
それらはフリーランスとして受注するばかりではなかなか経験できることではないので、やはり会社員として働く、もしくは常駐エンジニアとしてひとつの企業で長く働くなどの、同じところに長く通う経験が必要であると言えるでしょう。
Swiftエンジニアは、まずアプリ開発を始めるところがスタートであると言えるでしょう。キャリアアップを考えるなら、たくさんのアプリを開発しながら他のプログラミング言語も学び、自身が目指したいエンジニアとしての方向性を定めましょう。
iOSやMacの他にAndroidのアプリ開発も担いたいのであればKotlin(コトリン)などを学ぶとよいでしょう。
また、Swiftと互換性があり、幅広い開発に対応できるC言語やC++、Unityを使ったゲーム開発に強いC#などを学び、業務の幅を広げるのもおすすめです。
また、プロジェクトの企画やマネジメントを行いたいのであれば、上流工程を担えるようにコミュニケーションスキルや提案力などを磨くのもよいでしょう。自身のエンジニアタイプに合わせて、目指したい働き方をイメージし、目的に合わせて着実に実績を上げていきましょう。
オープンソースであるSwiftは環境構築が容易で、公開されているコードを見ながら学ぶことができます。
そのため学び始めるハードルは低いですが、高単価案件を受注できるSwiftエンジニアになるためにはやはり多くの努力をし、高いハードルを越えていかなければなりません。
ここではSwiftフリーランスエンジニアとして、身に付けておきたいスキルをレベル別にご紹介します。ぜひひとつの目安として参考にしてみてください。
シンプルな構文で分かりやすく、初心者でも身に付けやすいと言われるSwiftですが、独学でスキルアップしていくのは少し難しいかもしれません。なぜならSwiftはまだまだ新しい言語で、日本語による情報やサポートもさほど多くはありません。
そのため初級レベルから中級レベルになるまでが少し大変かもしれませんが、スキルアップのためにはとにかくSwiftでコードを書き、実行してみることが大切です。Xcodeも利用して、アプリ開発を経験してみましょう。
実際にアプリ開発を経験したら、次は回数をこなします。トライアンドエラーを繰り返し、思い通りのものに近付けられるよう工夫を重ねながら、記述の仕方や開発環境に慣れていきましょう。
ある程度のスキルが身に付いたら、会社員として企業で働くか、経験が少なくても参画できるSwiftフリーランス常駐案件を探して実務経験を積むのがおすすめです。やはり先を見据えると、フリーランスとして本格的に活動する前に、企業に常駐する形で働いて先輩エンジニアのやり方を見ておくことが非常に大切です。
実際に企業で働いてみて、高単価案件を受注するために必要な言語スキルや経験などをしっかりと体感して学び、必要なものを身に付けていけるようにしましょう。
上級フリーランスエンジニアに求められるのは、豊富な経験を基にした、クライアントに最適な案件・企画の提案やマネジメント力などです。
もちろんSwiftでの記述スキルも重要ですが、大切なのはクライアントの思いをくんだアプリ開発ができるかどうかです。
上級になると、大きなプロジェクトを丸ごと任されることもあるかもしれません。そのような状態になれば、高単価案件を受注できるスキルが整い、チャンスが来ていると捉えてもよいでしょう。
上級エンジニアともなれば、常に業界の最新情報や最新スキルに関心を寄せておくことが大切です。どんな案件でも二つ返事で受注できるよう、日頃からたくさんのアンテナを張っておくのがおすすめです。
SwiftはApple社が開発したApple社の製品のためのプログラミング言語です。
しかし近年はWindowsでも開発ができるようになり、今後はサーバーサイドの開発や、ソフトからハードまでさまざまな部分をSwiftが担えるようになると期待されています。
Swiftは人気の言語であるために、学びたいと考えている人も多いことでしょう。人数が増えればその分競争率も上がり、案件が減るかもしれないと心配になる人もいるかもしれません。
しかしSwiftは、iOSやMac、Apple WatchなどのApple製品の需要が続く限りはずっと人気が続いていくとみられています。それ以外にも、環境の進化と共に今よりもできることが広がっていくことが期待されます。
だからこそSwiftは需要がなくなりにくく、フリーランスへの転向がおすすめの言語なのです。とはいえ常にスキルアップを目指していなければ、流れの速い世の中に付いて行けなくなってしまいます。
Swiftフリーランスエンジニアの需要が尽きることはまだまだないとみられています。しかし他のSwiftエンジニアに差をつけるためにも、さまざまなことを学び、責任ある立場を目指せるよう努力することが大切です。
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